キーワードは「図太さやユーモアのセンス、芝居っ気」東海大副学長・山田清志×毎日新聞「教育と新聞」推進本部長・小島明日奈

 情報通信技術の進展や交通手段の発達で、ヒト・モノ・カネ・情報が国境を超えて高速で流通する「グローバル化」時代。東海大学の創立者・松前重義が、東西冷戦の時代から築いてきた各国との交流はすでに半世紀に及ぶ。加速するグローバル化社会の中で、主体的に考え、予想外の事態を乗り越えられる人材の育成について、山田清志副学長と小島明日奈毎日新聞「教育と新聞」推進本部長が語り合った。【まとめ・毎日新聞社デジタルメディア局 垂水友里香】

小島本部長(以下、小島) グローバル化に対し、どの大学も今、さまざまな試みをしていますが、東海大学の場合は世の中が注目し始める前の創立者の時代から取り組まれていますね。東西冷戦の時代から築いてきた各国との交流について教えてください。

山田副学長

山田副学長(以下、山田) 創立者・松前重義は1934年、逓信省の技術者として訪欧した際にデンマークにも足を延ばしました。それは師と仰ぐ内村鑑三から「デンマークは19世紀プロイセンとの戦争に敗れたが、農民を国民高等学校で教育して武力によらずに国力を回復した」ということを聞いていたからです。その後松前は、太平洋戦争に敗れた日本を再興するには、世界平和に貢献し科学技術立国を担える人材の育成が重要と考えました。東海大学の教育機関としての大きなミッションは「世界平和に貢献できる人間」「科学技術立国を担える人間」の育成です。世界平和といっても大げさなことではなく、学生同士の交流の中から小さな争いを防止していくということで、東西冷戦の中、旧社会主義国との交流を進めましたが、その一つがモスクワ国立大学との交流です。2013年に交流40周年を迎え、9月にはモスクワで記念式典を行いました。旧ソビエトとの関係は依然として難しい問題もありますが、この間、相互合わせて約1000人の学生が留学し、両国間の懸け橋になってくれています。こうした松前の思想が、東海大学の国際交流の底辺にあります。

小島 タイやハワイにも種をまいていらっしゃいますね。

山田 タイとの交流は、戦後補償で工学系の人材を育成するコロンボ・プラン(アジア・太平洋諸国の経済・技術協力機関)が始まりで、2011年に50周年になりました。今でも優秀な人材育成のため、タイとの教育研究交流を行っています。特にその中でモンクット王ラカバン工科大学への支援は、日本のODAの代表的な人材育成の成功例と言われています。今でこそ多くの大学がバンコクにオフィスを開設するなど東南アジアとの連携に心血を注いでいますが、半世紀前には手を挙げる大学などなく、松前の強い指導力がここでも活かされました。今日その種が見事に開花したと思っています。

 実はこの経験を現在中東との連携に活かそうとしています。中東は将来に備え石油に依存せず人材育成によって国を維持していこうという目標を定め、日本にその人材育成の期待を寄せているからです。特にサウジアラビア王国からの留学生が多く、500人余りの中で東海大学では約2割にあたる100人ほどの留学生が工学系を中心に学んでいます。このことは、タイにおける教育・研究支援と同じ文脈であると考えています。

 さて、ハワイは「これからは太平洋の時代」ということで、その拠点として1990年にホノルルのワイキキから近いところにパシフィックセンターを作りました。2年後、アメリカの大学基準認定を有するハワイ東海インターナショナルカレッジ(HTIC)という短大を併設しました。東海大学は勿論のこと、ハワイ州立大学や米国本土の大学の3年生に編入もできるゲートウェイ(入り口)カレッジとしての役割を果たしています。2015年にはHTICを、ハワイ州立大学の新キャンパス内に移転します。図書館や実験室など同大学のキャンパス施設を利用できるほか、教育プログラムや留学プログラムの相互乗り入れも行い、HTICを卒業後にそのままハワイ州立大学へ編入できる特別編入学制度も設ける予定です。これは米国における初の試みですが、完成時にはHTICに東海大学全学生の少なくとも1割を体験留学させたいと思っています。

小島本部長

小島 2009年度から始まった大学の中期目標は2013年度が最終年度です。その目標の一つが「教育に強い東海大学」というブランドの確立でした。今までどのような成果を出し、残りの課題はどのようなものでしょうか。

山田 今回の中期目標では建学の理念のもと「教育・研究・国際貢献・社会貢献」の四つの柱を設けました。まず教育における成果としては、大規模な学生のプロジェクト活動などに対して、教員やプロジェクトコーディネーターなどを配置し支援する「チャレンジセンター」の活動があります。チャレンジセンターは、座学では学べないアクティブラーニング(能動的学習)やサービスラーニング(大学教育と社会貢献の融合)を実施していますが、これが今年の文部科学省「地(知)の拠点整備事業」採択に繋がっています。研究に関しては、圧倒的な資金力と設備を持つ国立大に、すべての分野ではなかなか対抗出来ませんので、研究の峰を形成し私学としての独自性を確立しつつあります。その一つに医工連携がありますが、文部科学省の科学技術人材育成費補助事業に選ばれるなど、成果を上げつつあります。

 国際貢献・社会貢献は、大学から一方向の貢献という点では一定の成果を達成できたものとは思いますが、共生、協同という双方向の観点からは、きちんとした成果が得られたかは疑問だということが反省点です。2014年度からの第Ⅱ期中期目標では、教育と研究はそのまま残しますが、国際的・社会的に単に貢献するだけではなく、次への展開を目指して「国際連携」・「社会連携」と表現を変えました。これらの活動を通じて、社会で活躍できるグローバル人材を育成しよういうのがその趣旨です。

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