介護・医療の融合を図り 過疎地にも充実したサービスを 健康科学部社会福祉学科 東奈美 准教授

  「超高齢社会」が目前に迫る日本。福祉サービスの充実が求められる一方で、地域間格差も生じている。よりよい福祉社会を構築するには何が必要だろうか。高齢者福祉の課題と展望を健康科学部社会福祉学科の東奈美准教授に聞いた。【毎日新聞社デジタルメディア局・江刺弘子】

 ―2000年に介護保険が導入されましたが、現状を教えてください。

 いよいよ本格的な高齢社会に向けて、何とか持続可能なものに作りかえるための正念場を迎えていると思います。

 介護保険法は創設時から変わってきていますが、2011年には医療と介護の融合を図ることを前提に改正され、「24時間地域巡回型訪問サービス」も創設されました。高齢者の介護の問題は、医療と切っても切り離せないと、はっきりと制度に盛り込まれたのです。

 医療と介護の融合の代表的な取り組みは、24時間の居宅支援です。自宅にいながら、医療も介護も将来的にはできるだけ病院に近いような形で受けられる体制を作る検討が始まりました。もともと介護保険の考え方には、福祉と医療をドッキングするというコンセプトがありましたが、現場ではそれぞれの分野の伝統があり、融合するところまでは到達していないように思います。それがいよいよ両方の分野が一緒に回るような仕組みを根本的に考えていこうという段階に来たのです。

 ―介護と医療の融合は簡単に進みますか。

 何十年も前から医療と福祉は連携をとらないといけないと言われていました。東海大の健康科学部も看護学科と社会福祉学科で構成され、医学部のある伊勢原キャンパスにあります。しかし介護・福祉と医療は何が共通項で、連携できることは何なのかが、なかなか明確ではありません。

 医療とは、福祉とは、と問われたら私が思うには、医療は自然科学の分野にあたり、病気を治すための水準をあげていくという、先端科学の顔があります。

 一方、福祉は自然科学ではありません。5年前、30年前の日本を振り返ってみても、社会の状態は変化しています。社会が変化した時には、必ず生活者にひずみがきます。そのひずみを埋めるような制度や支援体制を作ることが、福祉の大きな分野だと考えています。

 ―人材育成に関してはどうでしょうか。

 介護の現場は人材確保が難しいのが現実です。職場環境や給与の面など総合的な雇用体制に国が踏み込んでバックアップすることが求められます。

 職場環境に関しては、1カ所で問題が表に出ると、すべての現場でそのような状況だと捉えられてしまいます。実際には関係者がよりよい職場環境作りに努力していて、東海大の卒業生もたくさん活躍の場を与えてもらっています。多くの卒業生が介護・福祉現場に従事しており、卒業生同士の連携も生まれつつあると聞きます。

 ―主な研究の一つに「地域」を上げていらっしゃいます。地方の介護の現状はどうでしょうか。

 人が少ないところは医療体制が整っていなかったり、病院そのものがなかったりする場所もあります。このように医療体制の不備に苦しんでいるところは、介護の体制として求められる施設、特に特別養護老人ホーム(特養)もない地域は少なくありません。

 特養入所者は介護保険が適用されるサービスを受けますので、それを建てる、建てないは住民が支払う保険料の額に大きく影響します。自治体が特養を建てる際に迷うところです。東海大学伊勢原キャンパスのある伊勢原市は人口が約10万人で、特養が4カ所、介護老人保健施設(老健)が2カ所あります。長野県のように複数の自治体で広域連合を作り、そこで施設を運用しているケースもありますが、単独運営で施設をもたないという自治体もあります。特養や老健がないというのは、とても大きな問題なのです。

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