人に有用な新しい作物を作り出す 命をサポートする学びの場に

 植物の品種改良を扱う「植物育種学」。人類が太古から野生植物から食料として優れたものを選び出し、品種を改良することによってより有用な作物を作り出してきた。品種改良は収量の増加、病虫害に対する耐性などに加え、人の健康に役立つ作物の改良まで広がりを見せる。新しい地域特産品として注目されるヤーコンやサツマイモ、シバなどの新品種改良に情熱を注ぐ農学部応用植物科学科の村田達郎教授(学部長)と松田靖准教授に話を聞いた。【毎日新聞社デジタルメディア局 仲村隆】

--お二人のご専門の「植物育種学」について、わかりやすくご説明いただけますか。

村田達郎教授(左)と松田靖准教授

村田 平たく言えば品種改良です。昔から農家の人たちが経験的に行ってきました。山里などに生育するブラシのような毛の長い穂を出す雑草「エノコログサ」をご存じの方は多いかと思いますが、実は穀物のアワは、このエノコログサが原種です。人間が穂の大きい優れた種を選別して栽培してきた結果、穀物として優れたアワが作られました。このように人間にとって使いやすく有用な植物を作り出すための品種改良の方法が植物育種学なのです。

 キャベツは、ヨーロッパで栽培化されたアブラナの仲間のケールという野菜がルーツです。ケールは、青汁の原料として知られますが、品種改良されてカリフラワーやブロッコリー、芽キャベツなどの野菜とともにキャベツに姿を変えてきました。日本では、大根がいい例ですね。青首大根もあれば、大きくて丸い桜島大根など数多くの大根が品種改良で作られています。

 19世紀にメンデルが遺伝の法則を発見してから科学的な交配で改良を行うようになり、究極的には遺伝子組み換えで自然界になかった全く新しい品種を作るまでになっています。人間が使いやすいよう人為的に変異を起こさせて新しい植物を作る道筋を学ぶ学問です。

--どのようなものが品種改良で作られていますか。

村田 人間が求めるものに応じていろいろなものが作られています。花粉症が問題になれば、症状の緩和に役立つと言われるメチルカテキンを多く含むお茶が作られたり、あまり花粉を出さない杉も作り出されたりしています。また、渋皮がむきやすいクリなど、人間の要望に応じたいろいろな植物が作り出されています。

--バイオテクノロジーや遺伝子組み換えの技術が話題になっていますが。

村田達郎教授

村田 1980年前後から細胞融合を応用した技術が出てきて、ドイツでは自然界の交配では不可能なジャガイモとトマトを融合した「ポマト」が開発されました。日本でもオレンジとカラタチを融合した「オレタチ」が開発されています。その後、遺伝子組み換え技術の開発が行われましたが、生態系に悪影響を及ぼすなどの懸念から、日本では実際には栽培されていません。

 日本では、その代わり、ゲノム解析が進み、病気に強い遺伝子が染色体のどこにあるかを示すような有用な性質の存在を示すマーカーの開発が進んでいます。このようなマーカーを用いて、交配した多くの集団から、利用価値の高い個体を効率よく選抜する研究も盛んになっています。

農学部のヤーコン畑に立つ村田達郎教授(右)と松田靖准教授

--東海大学農学部で取り組む品種改良は。

村田 品種改良のテーマとしては、サツマイモ、シバ、ヤーコンなどを扱っています。この中でも、ヤーコンは15年ぐらい前から、中山間地に適した作物を探索してみたいということで、阿蘇地方に合った品種改良に取り組んでいます。ヤーコンは、キク科の植物で見た目はサツマイモそっくりですが、食べてみると梨のような味です。ペルーのアンデス山地が原産で、栽培は日中と夜間との温度差の大きい標高500メートルほどの中山間地が適し、山地が続く阿蘇地域が適地です。九州には中山間地が多いことから、普及すれば新しい地域特産品になるのではないかと考えました。

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