人工衛星から地球を観測するリモートセンシング 防災や温暖化監視、技術幅広く 情報理工学部情報科学科 長幸平教授

 人工衛星などから地球を観測するリモートセンシング技術は1970年代以降、さまざまな分野で研究に活用されてきた。10月には気象衛星ひまわり8号が打ち上げられ、気象観測の精度向上が期待される。防災にも役立つと言われる技術「リモートセンシング」を使って地球温暖化や東日本大震災後の環境変化などの研究に長年携わっている情報理工学部情報科学科の長(ちょう)幸平教授に、研究の成果や今後の展望を聞いた。【毎日新聞社デジタルメディア局 銅崎順子】

--専門のリモートセンシングについて、教えてください。

 航空機や人工衛星に搭載されたセンサーで地球を観測する技術をリモートセンシングと言います。身近な例としては気象衛星ひまわりによる気象観測があげられます。上空から観測することで、地上ではわからない広範囲の環境変動や災害の状況を的確に把握することができます。

 1972年に米航空宇宙局(NASA)が人工衛星のランドサット1号を打ち上げたのがきっかけでリモートセンシングという用語が知られるようになりました。地上の植生分布や海面水温などいろいろな地上の様子を広域に把握できるため、世界的に利用が広まりました。私たちの目は可視光しか見えませんが、リモートセンシングでは可視光以外にも、紫外線、赤外線、マイクロ波といったさまざまな波長の電磁波を使って地球を観測しています。私たちが普段、天気予報で見ている気象衛星ひまわりの画像は熱赤外の画像で、温度が低いほど白く、温度が高いほど黒くなる画像になっています。このため、昼でも夜でも温度の低い雲は白く、温度の高い海や陸は黒くなります。これもリモートセンシングの技術を使って観測されたものです。

気象衛星ひまわりが捉えた台風19号の目(2014年9月10日)

--天気予報など、身近なところで技術が使われているのですね。

 そうなんです。しかも、この技術は日進月歩しており、10月7日に打ち上げられた気象衛星ひまわり8号では、カラー画像が取得できるようになり、観測頻度、分解能も向上するため、気象予報、環境変動把握の精度向上が期待されます。

 東日本大震災の際には、震災直後、世界中の地球観測衛星が被災地の観測を行い、5000シーンもの衛星画像が日本に無償提供され、被災状況の把握に活用されました。

 近年、さまざまな環境変動が発生していますが、その全容把握にはリモートセンシング技術が欠かせません。北極海の海氷分布変動観測も30年以上にわたって続けられており、北極海の海氷域の顕著な減少傾向を示す観測結果は、地球温暖化を断定する根拠の一つとなっています。最近もアラル海の砂漠化の最新状況がNASAから発表され、大きな話題を呼びました。私たちは、地上にいながらにして地球規模の環境破壊がわかります。

--災害監視にも役立ちますか。噴火予知などにも活用できるのでしょうか。

 噴火予知は簡単ではありません。継続的な衛星観測により山の膨張を計測し、噴火予知に役立てようとするような研究は行われています。しかし、災害を対象としたリモートセンシングは広範囲の災害状況を即座に把握し、その後の防災対策等に役立てるのが主眼と言えます。

 災害直後に雲がなく晴れていれば光学センサーで高分解能な画像が撮影できます。また、曇天のときは、雲を透過するマイクロ波センサーが有効です。さまざまな手法で現状を迅速に広域にとらえられるのがリモートセンシングの大きな特徴です。災害前後の画像を比較することで、被害状況を的確に把握することができます。今後はタブレットなどの端末に衛星画像を即時配信して、防災等に役立てたいと思っています。
地球観測衛星ALOSが捉えた東日本大震災前後の北上川流域(画像提供:JAXA)

--環境教育にも活用していると伺いました。

 震災後の東北地方の環境が再生していく様子を、衛星画像と現地調査でモニタリングしていく環境教育プロジェクトに取り組んでいます。これは、本学の学生や現地の高校生と、半年に1回、現地調査を行い、衛星画像と現地調査から、震災で環境がどのように破壊され、またその後再生していくのかを追跡していく5年プロジェクトです。土地利用の変遷も分かります。水田は増えてきています。沿岸部に高台を造成するため山間地で土砂が切り出されていることも分かりました。プロジェクトに参加した学生たちや高校生は、津波による被害の大きさ、震災復興の問題点、環境再生のたくましさを実感しています。

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