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--長先生の主な研究テーマは、海氷観測ということですがリモートセンシングをどのように使っているのですか。

 温暖化によってオホーツク海や北極海の海氷の分布がどのように変動しているかを調べています。最近は、マイクロ波センサを使って海氷の薄い領域を抽出する手法の開発をしています。衛星観測を長く続けることで温暖化の進捗(しんちょく)状態などが把握できます。冬場には学生を連れてオホーツク海沿岸で現地調査をしています。

サロマ湖での現地調査の様子
これが1982年と2012年の北極海の夏の海氷分布の違い

 海氷観測の分野でも、アメリカのNASAの研究は圧倒的です。若い時に、何か対抗できることはないかと考え、オホーツク海のデータを詳細に分析しました。すると、NASAの解析手法の問題点が見つかり、それを低減するフィルターを開発して国際学会で発表しました。これを著名なNASAの研究者が見ていて評価してくれました。それ以来、その研究者と交流するようになり、今ではNASAに行くと自宅に泊めてもらう間柄です。

 研究はこのようにフェアです。アイデアさえあれば、NASAの研究者とも競えるし、議論も共同研究もできます。大変ですが、おもしろいです。

--リモートセンシング技術を使ってさまざまな研究ができるのですね。

 はい。農業、林業、都市開発、防災、気象などなど、裾野が広い分野です。好奇心を持つといろいろなことに使えますが、研究者としてはしっかりした専門性を持つことが大切です。ベースは画像処理の技術になりますが、それを見て最後に判断するのは人間です。正確に事象を見る目が大切です。

--研究室に来る学生は何に関心があるのですか。

 研究室に来る学生の多くは、地球環境の変動に関心があってリモートセンシングの研究を志望して来ます。

--研究室のモットーは「研究は楽しく、厳しく。」とのことです。

 まず、自分が研究テーマに興味を持ち、「調べたい、解明したい」と考えることが大切です。関心を持つと研究は楽しくなります。学生にはその楽しさを知ってほしいと思っています。でも楽しいだけではいい研究はできません。自分に厳しく、しっかり取り組む姿勢が大切です。
研究室の学生たちと

--東海大学情報理工学部情報科学科の特色についてお聞かせください。

 情報理工学部は、情報科学科とコンピュータ応用工学科の2学科で構成され、「情報と機械と人間」をコンピューターとの結びつきで捉えたユニークな教育・研究を実践しています。情報科学科は、情報を人間、脳科学、数理情報、画像処理などと結びつけ、多角的に研究しており、コンピュータ応用工学科は、コンピューターを中心にロボット、乗り物、知能情報システムの3分野で「ものづくり」を志向しています。両学科は、言わば理学と工学の二つの側面から情報技術の研究と教育に取り組んでいます。

--卒業後の就職先の業種・職種はどのようなものでしょう。大手メーカーや研究所の他に、警視庁科学捜査研究所もありますね。

 研究のベースには画像処理があります。画像処理は、リモートセンシング以外にも、さまざまな応用分野が広がり、就職先は多様です。その一つが防犯です。最近の犯罪捜査では監視カメラの重要性が増しており、画像処理は犯罪捜査に欠かせない技術となっています。私が研究員をつとめる東海大学情報技術センター(東京都渋谷区)では、毎年、警視庁や各県警から研修生を受けいれています。こうした中で、私たちの学科やセンターで画像処理を学んだ学生が、画像処理の専門家として科学捜査研究所等に就職するケースも出てきています。

--ご自身の学生時代についてお聞かせください。

 学部では応用物理を専攻していましたが、2、3年次は映画研究部で映画の製作に明け暮れていました。映画が好きだったこともあり、画像関係に関心がありました。物理を勉強していくことに行き詰まりを感じていた時、たまたま衛星画像を扱うリモートセンシングに出合い、これだと思いました。専門の大学院に進学してからは、研究に没頭するようになりました。

--今後取り組んでいきたいテーマは、どんなことでしょうか。

 現在は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2012年に打ち上げた水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W1)に搭載されたマイクロ波放射計2(AMSR2)で北極域などの海氷分布変動を調べることを大きなテーマにしています。独自の薄氷域抽出手法を開発中です。また、東日本大震災に関連して、欧州の研究者と即時監視に関する国際共同プロジェクトに取り組んでいます。このプロジェクトを発展させるつもりです。

--学生、若者へのメッセージをお願いします。

 さまざまなことに関心を持って、いろいろ経験し、知識を深めてほしいと思います。悩むことや挫折することも若者の特権です。失敗を恐れず、自分の道を切り開いてください。私たち教員は、そういうあなたを応援します。


東海大学 情報理工学部 情報科学科
長 幸平(ちょう こうへい)
1955年生まれ。79年東京理科大学理学部応用物理学科卒業、81年千葉大学大学院修士課程修了。工学博士。82年より(財)リモート・センシング技術センター研究員。92年東海大学開発技術研究所講師。現在,同大学情報理工学部長、教授、総合情報センター所長、情報教育センター所長、情報技術センター所長代理。アジアリモートセンシング協会(AARS)事務総長。日本写真測量学会副会長。衛星による即時監視、海氷観測、デジタル教材開発等の研究に従事。著書「新編 画像解析ハンドブック」(共編著)、「基礎からわかるリモートセンシング」(共著)、「合成開口レーダ画像ハンドブック」(共編著)等。  2009年Boon Indramabarya Medal受賞。12年Samuel Gamble Award受賞。

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