火山列島で考える噴火
地球規模で貢献できる人材育成を

理学部化学科
大場武教授

 鹿児島県屋久島町・口永良部(くちのえらぶ)島の新岳が5月29日、噴火し住民が全島避難をした。また、神奈川県箱根町の大涌谷(おおわくだに)周辺では6月30日、小規模な噴火が発生し、噴火警戒レベルが入山規制の「3」に引き上げられるなど、日本各地で火山の活発な動きが伝えられている。火山噴火とはどういうものか、地震との関連性はどうなのか。東海大学理学部化学科の大場武教授に話を聞いた。【毎日新聞社デジタルメディア局 米田堅持】

--昨年は9月の御嶽山噴火に続き、阿蘇山も噴火しました。今年も5月に入ってからは箱根山の噴火警戒レベルが引き上げられたり、口永良部島でも噴火があり、日本全体で火山の活動が活発化しているように感じますが、実際はどうなのでしょうか。

 火山には周期的に平穏な時期と活発な時期があります。長期トレンドで見ると、桜島は私が学生だった時代、山頂まで登って火口を見に行けるのではないかなどと話すほど穏やかでしたが、今は活発な時期に入っているので無理です。口永良部島も周期的に噴火していて、周期が重なった可能性があります。プレートの応力がすべてを支配しているならば、近隣のすべての火山島の活動が活発になるはずですが、特に異変はなく個別に動いている可能性が高いです。ただ、地殻の変動が補助的な要因として関係しているかもしれませんが、証明するのは困難です。

 現在、たまたまいくつかの火山の活発な時期が重なってしまっているため、連動しているように感じてしまいがちですが、日本中の火山が活発化しているとまでは言えません。昨年の御嶽山の噴火後は、世論がより安全を意識する状況となったこともあると思います。箱根は2001年にも今夏と同じような状況になっていますが、立ち入り規制は実施されませんでした。

--「噴火」とは、どのような現象で、どのような種類があるのでしょうか。

 噴火はマグマが溶岩として流れ出る噴火だけでなく、爆発を繰り返す噴火もあります。

 本格的な噴火が、マグマが溶岩として流れ出る「マグマ噴火」と呼ばれる噴火で、最近はあまり起きていません。溶岩が流れ出るにはガスが抜けていないといけません。この前には「水蒸気爆発噴火」のような爆発的噴火が起きて、マグマの通り道ができます。地震が起きて火山灰が出て、最後に溶岩がだらだらと流れ出るというのが典型的なパターンです。富士山や伊豆大島、三宅島などで想定されている噴火はこのタイプですが、それほど多くはありません。ハワイのキラウエア火山は高温の特殊なマグマが流れ出ていて観光名所にもなっています。

 「水蒸気爆発噴火」は「水蒸気噴火」とも呼ばれています。マグマは上がってきません。温泉などの熱水だまりが地下1キロより浅い部分で、圧力が上がって地殻が耐えきれずに発生する噴火です。マグマの熱と水が反応して起きます。御嶽山や箱根、草津白根はこのタイプです。マグマが動かないので前兆となる地震が起きることはほとんどなく、予測することは困難です。御嶽山が1979年に噴火したときは「死火山」が噴火したと言われて大きな話題になりました。火山で蒸気の上がっているところ、噴気のある場所であれば、どこでも起きる可能性があります。このような噴火の予測は火山学の重大な課題の一つです。

 「マグマ水蒸気噴火」は、マグマが上がってきて熱水や地下水に接触し、冷たい水が瞬間的に水蒸気になることで圧力が急上昇して地下が高圧になって爆発するもので、一番爆発力が強く、噴出物も遠くまで飛ぶ危険な噴火です。海底火山で多いタイプの噴火で、ある深さより浅いと起きます。過去には、明神礁で海上保安庁の測量船が巻き込まれて殉職者も出ています。口永良部島の噴火はマグマ片が見られたので、このタイプに近い噴火と見られます。

--東日本大震災のような巨大地震と噴火には関連性があるのでしょうか。

 東日本大震災以降、岩手山をはじめ、東北にはたくさんの火山がありますが噴火はしていません。あれだけ揺れた地震で、火山性の地震が増えるなど微妙な影響は与えたかもしれませんが、地震が直接影響して噴火に至ったケースはありません。

 地震と噴火の年表を作ってみても科学的には証明できるレベルではありません。過去には、東南海地震の後に富士山が噴火したことはありますが、メカニズムが解明できていないのが実情です。プレートが押した時に噴火するのか、押した力が弱まるから噴火するのか、そういう面も含めて統一見解はありません。

 近年、新しい観測技術が次々に開発され、10年前では無理だったデータがたくさん得られるようになりました。大涌谷が30センチメートル隆起していることは、01年当時にもあったと思いますがわかりませんでした。新技術でデータが得られたからといって噴火の予知ができるわけではありませんし、新たなデータが得られたことで、新しい謎を生んで悩んでしまうこともあります。まだまだわからないことが多いのです。

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