国内大学初のパイロット養成コース
操縦技術と教養 バランス取れた人材を育成

工学部航空宇宙学科航空操縦学専攻
柴田啓二教授

 格安航空会社(LCC)の本格参入と世界的な航空需要の高まりに加え、団塊世代の大量退職期のため航空業界はパイロット不足に悩んでいる。パイロット養成に必要なこと、「空の安全」などについて、日本の大学初のパイロット養成コースがある東海大学工学部航空宇宙学科航空操縦学専攻の柴田啓二教授に聞いた。【毎日新聞社デジタルメディア局 米田堅持】

--航空操縦学専攻が設置された経緯を教えてください。

 もともとは工学部の中に航空宇宙学科があって、技術や科学の視点での専門教育を行っていました。航空操縦学は今年で10年目となります。2006年4月に航空操縦学専攻が設立されたときに2専攻体制となり、従来の航空宇宙学科が航空宇宙学専攻になりました。

 従来のパイロットの供給ソースは大きく分けて航空大学校と大きな航空会社での自社養成という二つです。自社養成は航空操縦について未修得の大学卒業者や大学院卒業者を採用して最初から教えるという形です。2004年ごろに全日本空輸(ANA)から別のパイロット供給ソースとして4年制大学でのパイロット養成コース設立の打診があり、その中で東海大学は社会の要請等を勘案してANAと連携してプロのパイロットを養成するコースの設立を決めたわけです。航空大国の米国では、操縦コースを設置している大学は100以上あるそうですが、日本では初めてのコースとなります。

--ほかのパイロット供給ソースとの違いについて教えてください。

 自社養成は、最初から社員として採用され、入社後辞令が出て訓練に入るため、学生とは大きく異なります。航空大学校は、大学2年修了、短大卒業、高専修了後に入学資格が得られ、パイロット養成に特化した2年間の課程ですが、多くの学生は4年制の大学を修了してから入るようです。

 大学である本学であれば、高校卒業で入学できます。ほぼ最初の3年間はパイロットの訓練ですが、大学としての教養科目も学びます。飛行訓練は米国のノースダコタ大学で行いますが、訓練空域の確保に苦労する国内とは違って、大学が使える訓練空域は関東平野がすっぽり入ってしまう広さです。日本にいる1年次に英語教育ならびにパイロットとしての基礎知識に重点を置いて学び、2年次になると二つのグループに分かれて米国へ留学します。正式留学ですから語学のハードルはありますが、米国で取得した単位は日本で取得した単位と同じように認定されます。航空機のライセンスは日米両方を取得します。4年次で帰国すると卒業研究に取り組みます。

--操縦技能以外も重視して育成しているということでしょうか。

 操縦技能だけでなく、バランスの取れた人材になってほしいと思って教えています。操縦に特化した各種学校もありますが、本学は大学としての教育課程がありますから、教養や広い視野を身につけた人間を形成するということを意識しています。自家用、事業用双方のライセンスを日米とも取得するので、将来は海外のエアラインに進む学生もいるかもしれません。

--先生のご専門である「航空工学」と「運航安全」について教えてください。

 「運航安全」はお客さまの命を預かりますので、第一優先事項です。これなくして公共交通機関として成り立ちません。お客さまのニーズに合わせつつ、安全に運航しなければなりません。過去の事故例に基づき、運航の中の危険要素や人間の陥り易いエラーといった観点から安全を考えます。「航空工学」は、何故飛行機は飛ぶのかから始まり、飛行機の翼、舵、エンジンパワーなどが相互に関連する飛行機の特性や性能などを取り扱います。エンジニアになるわけではありませんが、安全に操縦するためには飛行機の特性を理解しなければなりません。飛行機の特性を頭の中で整理して理解できるように学ぶことになっています。航空法といった法律も含めて、パイロットが学ぶことの大半は安全のためでもあります。

--パイロット養成コースですが、他にどのような進路があるのでしょうか。

 入学者はすべて、プロパイロットの志望者です。残念ながら、あきらめざるを得ない学生もいますが、その場合は自分で進路を探し出しています。航空会社の整備士や運航管理者だけでなく、消防士や大手ゲーム機器メーカー、商社に就職した者もいます。

オピニオンの一覧