目指すは「針と糸いらずのばんそうこう」
小さな世界の大きな挑戦

工学部機械工学科
木村啓志准教授
工学部精密工学科
槌谷和義教授

 2015年1月に開設した「東海大学マイクロ・ナノ研究開発センター(MNTC)」。マイクロやナノといった極小単位の世界に挑み、医療への応用を目指す研究に日々取り組んでいる。「針と糸いらずのばんそうこう」や「血栓クリーナー」などを実現するための「高分子超薄膜」が研究テーマだ。最前線に立つ東海大学工学部精密工学科の槌谷和義教授と、機械工学科の木村啓志准教授に聞いた。【毎日新聞社デジタルメディア局 浜名晋一】

 ――センターは、どのような施設ですか。

 木村准教授 文部科学省の「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」に、本学の研究プロジェクト「高分子超薄膜から創成する次世代医用技術」が採択され、その研究拠点として開設された施設です。医学部、理学部、工学部から学部や専門の垣根を越えた8人の研究者が集い、高分子超薄膜という新しい技術を医療分野に応用する研究をしています。

 もともと、高分子超薄膜の研究は本学工学部応用化学科の岡村陽介准教授が専門として実施しておりましたが、1つの分野の研究だけでは限界があります。医学部や理学部、工学部が持つ技術や知見を応用することで、研究範囲を多岐に広げることができます。そのために独自の技術を開発するための施設が必要でした。本センターには、微細加工するクリーンルームの横に細胞を培養する施設があり、その向かいに精密な物理量を測る恒温恒湿室が設置されています。様々な専門分野の研究者が1カ所で研究する分野横断的な施設となっております。昨今「異分野融合」と声高に叫ばれていますが、実際に具現化しているケースは国内外でもなかなかありません。一方、本学ではそれが実現されていると自負しています。

 ――その点がセンターの特徴ということですか。

 木村准教授 センターはオープンスペースとなっており、研究者だけでなく多様な専攻の学生が集まることで様々な効果を生み出しております。日常から専門の垣根を越えてコミュニケーションを深めておりますし、月水金の週3回、午後3時から開く「コアタイムコーヒー」の時間には、学内外を問わず、さまざまな人が集まり、いろいろな話題で盛り上がります。例えば、工学部の機械工学科の学生が困っていることに対して、理学部の物理学科や化学科の学生が「うちの研究室でできるんじゃないか」などと提案します。具体的に話し合う中で新しい発見があるのです。

 ――ところで「マイクロ・ナノ」とは、どういうものでしょうか。

 槌谷教授 マイクロやナノは10の何乗かを表す接頭語です。マイクロは10のマイナス6乗、ナノは10のマイナス9乗で、メートルとかグラムとか秒などの単位の前に付けることができます。マイクロ・ナノは「極めて小さなもの」ということになりますが、なぜ小さいことに価値があるかというと、小さくて既存のものと同じ機能を持っていれば、さらに可能性が広がるからです。これまで小さ過ぎて測定できない所を測ることができたり、コストが安くできたりと、マイクロ・ナノにすることで得られるものは、学術的にも社会的にも貴重です。

 例えば2種類の化学薬品を一つのビーカーに入れると反応が起きます。しかし、そこで液体と液体が混ざり合って微視的にどうなっているのかは誰にも分かりません。これまでは混ざった後の平均値しか知ることができませんでした。しかし、微小な領域でどういう反応が起きているのか、より細かい部分が分かることで、そこから新たなアプリケーションが生まれるかもしれない。特に医療技術への応用が可能になるかもしれません。

 ――研究に伴う困難とは何ですか。

 槌谷教授 我々のチームは「作るチーム」「試すチーム」「知るチーム」の三つのチームに分かれています。まず、ごく微小な領域で何か知るためには道具を作らなければなりません。さらにそれを使う技術も、原理を知ることも、どれもこれも必要です。既に世の中にある技術というわけではありませんから、教えてもらうわけにはいきません。

 木村准教授 具体的に挙げたらきりがありませんが、やはり、目で見えないものを扱うということが難しい。人間の手の大きさでは、1マイクロメートルとか1ナノメートルの単位のものは簡単には扱えません。僕らが住んでいる空間とのギャップがありすぎます。研究では電子顕微鏡も使いますが、目で見るだけが「見る」ではなく、測ることで「見る」ということもできます。レーザーを使ったり、化学的な反応を見たり、さまざまな手法でマイクロ・ナノにアプローチしています。

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