海のインディー・ジョーンズになれ
沈没船遺跡から人間の歴史を探ろう!

海洋学部海洋文明学科
木村淳講師

 --大学を卒業し、オーストラリアの大学院に進学しました。

 アメリカやイギリスという選択肢もありましたが、アジアの船の研究ができるオーストラリアを選びました。まずは大学付属の英語学校に入り、大学院の教育に対応できるアカデミックイングリッシュを学び、その後大学院へ進学いたしました。最初に履修した科目は、タスマニアでの2週間のフィールドスクール。オーストラリアは流刑地で、その中でも特に重い罪を犯した人たちがタスマニアに送り込まれていました。囚人達が暮らしていた刑務所に造船所があり、その造船所を調査することになりました。当時は日本人はもちろん、アジア人は私一人だけでしたが、学部生の時に鷹島の調査に携わっていたおかげで、どの学生よりも現場経験がありました。ただ、語学力という大きなハンデはありました。習ったはずなのに、英語で課題レポートが書けない。なんとか書いて、なんとか終えました。

 --海外と比較して、日本の状況は。

 私がオーストラリアの大学院に進んだ段階では、日本では水中考古学を学べる環境はありませんでした。今、その状況を改善しようと、多くの関係者が努力しています。私も西オーストラリア・マードック大学アジア研究所やシカゴ・フィールド自然史博物館での勤務中にアジアの沈没船遺跡研究を進め、国連ユニスコの会議に出席しアジアにおける水中文化遺産の保護・管理問題を議論しながら、日本の状況を変えたいという思いが常にありました。日本に水中考古学を根付かせたい、またそれを日本で唯一海洋学部がある東海大学で水中考古学をやることに意味がある。そう考え、日本に帰ってきました。

 ようやく国にも有識者委員会が立ち上がったところです。2012年、鷹島の水中遺跡が、「鷹島神崎遺跡」として国史跡に指定されました。国がある程度関与していくことになりましたが、調査を進めるに当たって、指針がない。この状況を改善しようと、13年に水中遺跡調査検討委員会が発足して、私も委員に加わりました。

鷹島海底遺跡沖出土火薬兵器の復元模型:九州国立博物館・松浦市作成

 --それから3年。状況は変わりましたか。

 だいぶ変わりました。今まで、水中遺跡の調査は自治体・非営利法人、大学によって行われてはいましたが、仕組み作りに国が乗り出したのは大きいです。水中遺跡の保護の在り方について会議を重ねて、報告書を刊行するところまできています。今後は、ガイドラインなども作成される予定です。

 --志望する学生も増えたのでは。

 着任して1年半ではありますが、はっきりと「水中考古学をやりたい」と志望してくる学生は増えました。オープンキャンパスでの体験授業でも、興味を持ってくれる受験生が多くなってきました。東海大学海洋学部は、オンリーワンの存在。水中考古学だけでなく、学部全体で志望者が増えてきているように感じます。学部全体のレベルが高くなっているので、私なりにその良い流れを学生に還元していきたいと思います。

 --昨年は、オスマン帝国の軍艦エルトゥールル号が和歌山県沖で座礁して125年。映画にもなりました。エルトゥールル号の調査にも、ゼミの学生が参加しました。

 私も客員研究員を務めるトルコの研究所が主体となって行っている調査研究に参加しました。(遺物の入った袋を取り出して)これは、エルトゥールル号から引き上げられた大砲の弾です。これは、さびていますが、電気分解をして原形に近い砲弾にします。学生は、海揚がりの遺物の保存処理を専門にしているトルコ研究者から指導を受けました。海外の研究者と交流することによって、一歩成長できたのではないでしょうか。ほかにも、沖縄に沈んでいるオランダの船の調査にも学生を参加させています。

 --ゼミには、実践を望む積極的な学生が多いのでは?

 私のゼミの4年次生は意欲的ですね。エルトゥールル号の調査に参加した学生が、さらに同時代の北海道近海の沈没船についても調べています。パラオの戦争遺跡の調査をする学生もいます。積極的に外に出ていますね。

 --「海のインディ・ジョーンズになれ」と学生に呼びかけていますね。

 考古学の現場は地味で、インディ・ジョーンズのように派手に鉄砲を振り回すことはありませんけどね(笑)。でも、なぜ多くの人がインディ・ジョーンズに惹かれるかといったら、発見するということに魅力があるからだと思います。考古学者である限りは、発見ということに真摯でいたい。遺跡の中から何かを見つけるというのがすべての原点です。水中には、まだまだ何かが残っています。

 --海洋学部に進みたい、水中考古学を学びたいと考えている若者へメッセージを。

 学ぶ機会を大切にしてほしいです。自分が学んでいることに対して、真摯に取り組んでほしいです。私自身、今の自分は積み重ねでできたもの。今を大切に積み重ねることを大事にしてください。

東海大学 海洋学部海洋文明学科
木村 淳(きむら じゅん)
フリンダース大学院海事考古学プログラム博士修了。西オーストラリア・マードック大学アジア研究所、シカゴ・フィールド自然史博物館勤務を経て現職。専門は水中・海事考古学、沈没船遺跡研究。著書に『Archaeology of East AsianShipbuilding』(University Press of Florida出版)など。

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