急増する若い女性の子宮がん、卵巣がん
予防と早期発見で患者を救いたい

医学部医学科専門診療学系(産婦人科学)
信田政子 講師

 世界の人に影響を与えた「今年の女性100人」に、乳がんと闘いながら妻として母としての思いを日々ブログにつづっている、フリーアナウンサーの小林麻央さんが選ばれた。麻央さんに限らず、女性特有のがんに侵される人は近年増加傾向にある。日々、そうした患者さんに向き合っている東海大学医学部医学科専門診療学系(産婦人科学)の信田政子講師(医学部付属病院病棟医長)に、婦人科がんと産婦人科医の現状について聞いた。【聞き手・小松やしほ】

 ——産婦人科の診療内容と体制について教えてください。

 東海大学医学部付属病院産婦人科は、「産科」「生殖・内分泌」「婦人科腫瘍」の三つの部門に分かれており、総勢23人ほどのスタッフで診療にあたっています。具体的な業務といたしましては、産科は一般のお産からハイリスク妊娠までお産全般を取り扱い、生殖・内分泌は不妊治療や更年期障害などの相談も行っています。婦人科腫瘍は主に悪性腫瘍の手術、治療を担当しています。

 ——先生のご専門の婦人科腫瘍部門は、悪性腫瘍の手術、治療を担当されるとのことですが、悪性腫瘍とはどのようなものでしょうか。

 体にできる、正常と異なる組織のかたまりを「腫瘍」といいます。腫瘍は、異常な細胞が過剰に増えることにより発生し、その性質の違いにより「良性腫瘍」と「悪性腫瘍」の2種類に分かれます。このうち、私たちが「がん」と呼んでいるのは「悪性腫瘍」の方です。悪性腫瘍の場合、細胞が広がるときには周囲の組織に食い込んでいき、細胞の増殖スピードは比較的速く、転移することもあります。また、一度取り除いても再発するケースもみられ、生命に関わるものです。婦人科が扱っている悪性腫瘍は、子宮がん、卵巣がんなどが主なものとなります。その他非常にまれですが、腟がん、卵管がん、腹膜がんなどがあげられます。

 ——やはり子宮がん、卵巣がんが多いのですね。

 婦人科がんと言いますと、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんが主なものとなっています。子宮は赤ちゃんが育つ「体部」と、入り口部分の「頸部」とに分けられます。体部にできるのが子宮体がん、赤ちゃんが通ってくる産道の部分にできるのが子宮頸がんです。

 ——最近の婦人科がんの傾向について教えていただけますか。

 婦人科悪性腫瘍のなかで多いのは子宮頸がんですが、日本ではここ10~20年ほどは子宮体がんが増加傾向にあります。先進国の中でも日本では子宮頸がんも減少傾向にはありません。特に、若年層に子宮頸がんが増えていることが、産婦人科医の間で問題視されています。

 ——なぜ頸がんが若い人に増えているのでしょう。

 明言はできませんが、恐らく性交渉開始年齢が早くなってきたということと、特に若い女性が婦人科検診になかなか行かないことが原因と考えられます。また、ワクチン接種が進んでいないことも影響しているかもしれません。より多くの人に検診に来ていただけるよう産婦人科医は検診の重要性を伝えていく必要があると思っています。

 ——頸がんワクチンをめぐっては、接種により健康被害が生じたとして、国とメーカーを相手取った集団訴訟が起こされています。

 頸がんはヒトパピローマウイルスが関係していると分かっています。ヒトパピローマウイルスにほとんどの女性が一度は感染すると言われています。検診に来ていただいて早期に発見することができれば、子宮摘出以外の治療法も考えられます。若い人で進行してしまうと、これから結婚、出産というライフステージが待っていますが、子宮を取らざるを得ない場合があります。

 副反応などの問題もあるようですが、若くして進行子宮頸がんが見つかり治療のかいなく亡くなっていく人が増えているという実感があります。小児期にワクチンを打っていれば、頸がんにならなかったのではないか、少なくとも子宮や命を失わず、救うことができたのではないかと歯痒さを感じます。年を取っているからいいというわけではもちろんありませんが、やはりまだ結婚もしておらず、子どももいない年代の方が亡くなるのは本当につらいです。私たち産婦人科医としては、原因が分かっているので、きちんと対応していただければ、本当に多くの頸がん患者さんが救えると思うのです。

 ——小林麻央さんはじめ著名人女性が乳がんや子宮がんなど婦人科系がんであることを公表する例が増えています。女性のがんに対する社会の意識も変わってきているのでしょうか。

 著名人ががんを公表されるのは大変に勇気が必要だと思います。実際には、著名人が公表されると、検診にいらっしゃる方が増えます。

 私が医師になった当時は、がんと告知せずに抗がん剤の治療をしている患者さんが結構いらっしゃいましたが、今は必ず告知します。告知することで、患者さんもご家族ももちろん動揺されますが、お互いグレーゾーンがあると信頼関係は築けませんし、治療を理解し、前向きに取り組んでいただけると思っています。告知をして患者さんやご家族にとって不利益だったという経験はほとんどありません。

 残念ながら再発したり、かなり進行している場合でも、現状(命に限りのあること)のお話をします。完治は難しいと説明をした場合、積極的な治療はせずに、病院に縛られることなく、自分の生活を楽しみたいという方もなかにはいらっしゃいます。患者さん自身で選択できることも増えたと思います。

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