外国人に人気「地域の祭り」に見る観光立国
ブームで終わらさないために必要なものとは

観光学部観光学科
服部泰 講師

 日本を訪れる外国人が増え、今、地方の観光が注目されている。過疎化に悩む地方にとって観光は地域活性化の大きな起爆剤となるが、一過性のブームに終わる可能性もあり、さまざまな問題を含んでいるという。東海大学観光学部観光学科の服部泰講師に話を聞いた。【聞き手・兵頭和行】

 ——今、取り組んでいる研究について教えてください。

 観光によって都市と文化がどう変わっていくのかをメインの研究にしています。ボルネオ島や台湾の奥地では、原住民の生活を都会の人たちが体験するような観光が1980年代に始まり、2000年代に人気になり、それが今、廃れつつあります。原住民が観光産業で生活していく時に本来ある文化を観光用にアレンジし、少しずつ文化を変えていってしまう。「文化変容」といいますが、そうして自分たちの文化を失っていくようなことが起きています。

 ——文化変容とは具体的にどんなことですか。

 ボルネオ島のイバン族の村では、電気もガスもないところで暮らすという観光によるスローライフ体験を提供しています。最初は実際に電気やガスのない生活をしていたのですが、近代化で電気が通り、テレビアンテナが立ち、生活が西洋的なものへと一変します。ですが、観光で見せるべき文化は電気もガスもない文化なので、そうした演出をするわけです。自分たちは電気もガスもテレビも見たことがないという顔をしながら、実は裏にいくと冷蔵庫がある。そのようにして彼らは観光客が魅力を感じるような文化を演出しなければならなくなり、それがだんだんと自分たちの伝統に変わっていきます。

 昨年は台湾のタイヤル族が多く住む地域にも行きました。自分たち原住民の生活を文化にして切り売りし、商品化をしていますが、実際の文化は失われつつあり、観光資源として演出してやっていくということに苦しみがあるようです。

 ——日本ではどうですか。

 観光に暮らしをシフトしていこうという動きが日本の地方にもありますが、まさに長続きさせることが難しいのですね。一時的に火がついて、お客さんが来ましたという事例はよくありますが、長く続けるのが難しい。観光産業にシフトしていくが、長続きせず、次はどうするのか、という課題を抱えることが多いのです。

 例えば、石川県能登町に「にわか祭」というお祭りがあります。キリコといわれる大きな灯籠(とうろう)を各地区から出して担ぐのですが、少子高齢化が進み、キリコの担ぎ手が減少してきたので、学生たちが関わるようになりました。学生たちが祭りを盛り上げて話題になり、地元紙にも載りました。そうすると逆に難しいのは、地元が大学に期待し、東海大学の学生が来るならキリコを出しましょうという形になる。そのような状況になると学生が祭りの主役になるような状況が起きてしまう可能性があります。

 ——学生は何人くらい連れていくのですか。

 最初は地域活性化のためのアイデアを出してくれませんかということで、2012年にゼミ生8人を連れて行きました。町内に若者を呼び込むためにどうしたらいいかを報告書にまとめ、魅力アップのためのプロジェクトをスタートさせ、マップづくりをするなど観光活性化に取り組みました。祭りを手伝うようになったのは2014年からで、2015年からは実習授業として取り組み、学生63人が集まりました。

 学生は3泊4日で現地に行き、その日の夜からキリコ作りを始め、骨組みを作り、のりをつけて紙を貼り、ひもを通してという作業すべてにかかわっています。絵だけは専門の絵師が描きますが、それ以外の工程には全て学生がかかわっています。一晩二晩で作るので、朝6時に跳び起きて、地元の人と一緒に手伝いながらまるまる一日作る。お祭り当日になると、おはらいにもかかわって、町中を練り歩いたり、夜はキリコを担いで回り、まさに地元の人と一体となります。

 学生がお手伝いしている地区では、元々キリコ9基を出していたところを、昨年は人手が足りなくなったため7基に減っていたのですが、学生たちが来るならもう一つ出しましょうということで、8基に増えました。ある意味で学生がそういうエネルギーになってくれています。

 ——学生に依存するという課題について解決策はありますか。

 学生たちは見事に地域に入りこんでいきます。若いのでおじいちゃん、おばあちゃんと話をするのがすごく楽しくて、どっぷりとつかっていくという部分があります。どんどんお互いの依存度が高まってしまうので、私としては冷たいかもしれませんが、どう距離感を保ちつつやっていくのがいいのかを考えているところです。

 お祭りは元々、漁業に関係していて、豊漁や安全の祈願のためでしたが、能登半島の漁業は衰退し、お祭りが本来もっていた意味とずれてきているところがあります。ただ伝統は大事なので守る必要がありますが、守るだけでは維持できなくなってきていることも事実です。文化が変化してしまうというのと同時に変えなければいけない部分もあるかもしれません。そういうことの検討を少しずつ学生たちとも一緒に考えようというところに来ています。

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