防災にICT活用
「自助共助」の仕組み構築へ

情報理工学部 情報科学科
内田理 教授

 東日本大震災を経験し、各分野で防災・減災への取り組みが広がっている。しかし、大きな災害がまた起きた時、状況判断と的確な行動に不可欠な情報は迅速に得られるのだろうか。ツイッターを活用した災害情報システム「DITS」を研究する情報理工学部の内田理教授に、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用した防災研究の取り組みを聞いた。【デジタル編集部・江刺弘子】

 ——情報科学を専門とする先生が災害情報システムに取り組むようになったきっかけは?

 東日本大震災が発生した時に、ツイッターを始めとするソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の活用事例が多数報道されました。私の研究室でも学生から災害時のSNS活用の研究をやってみたいと声があがったのがきっかけです。

 研究室は「安全・安心・快適な社会を情報科学の力で実現する」をモットーとしており、災害情報システムの研究も進めるべきだと思いました。

 災害情報システムといっても様々ありますが、私が主に取り組んでいるのは、災害が発生した時に、ツイッターを使って被災者自身が災害の状況を発信したり、行政などがその情報を収集し、必要な人に届けるといった「自助・共助」を促すシステムです。

◇位置情報埋め込み、状況把握を迅速化

 ——その一つが災害情報システム「DITS」ですね。

 私の研究室が開発したDITS(Disaster Information Tweeting System)は、ツイッターを活用した災害情報投稿システムです。

 災害時のツイート活用といっても、いざやろうとすると難しいのが現状です。東日本大震災が起きた2011年3月11日は、日本全国で約3300万のツイートがありました。この膨大なビッグデータから有効な情報を引き出し、さらにその情報がツイートされた場所を特定することは困難です。

 私自身、当初は3月11日のデータを分析し、地図上にツイートを表示する研究をしていましたが、行き詰まってしまいました。ツイートの文言だけでは、災害現場の位置が特定できません。たとえば広域災害が起きた時、「第一小学校に避難所開設」とツイートがあっても、「第一小」は全国どこでもあります。また、外出先など不慣れな場所にいた場合、投稿者自身が現在地を認識できず、ツイート内に正確な住所を書き込むことは難しいと思います。

 ——「DITS」の特徴は?

 このアプリでツイートすると、位置情報が自動で埋め込まれることです。

 DITSでユーザーがスマートフォンから入力するのは、ツイートの文言だけですが、スマホのGPS機能をオンにしていれば自動的に「神奈川県平塚市北金目4-1」といった現在地の位置情報と「#平塚市災害」というハッシュタグ(目印)がつきます。

 さらに位置を表すUTMポイントと呼ばれる座標も埋め込まれます。UTMポイントは世界で利用されており、自衛隊もこの座標を活用しています。栃木県那須町のスキー場で起きた雪崩事故のように、一つの住所が広範囲を示す場合、UTMポイントによって救助に向かうためのより正確な位置が特定できるのです。(画像1)

 DITSからの投稿は地図上にアイコンで表示されるため、「この道は陥没している」「停電している」といった情報を直観的に得ることができます。より多くの人がDITSを通して情報を発信するようになれば、住民自ら判断し行動することが可能になります。(画像2)

 一方、行政は迅速に状況を把握でき、的確な指示を出すことにつながります。また、ツイートはDITS内にクローズされているのではなく、ごく一般的なツイッターのクライアントで見ることができるオープンなデータです。これも大きな特徴の一つでしょう。

 ——簡単にツイートすることへの不安や懸念もあるのでは?

 投稿者の位置情報が自動的につくことで、個人情報保護の観点から否定的にとらえる方もいます。しかし私は、災害時は積極的に自分の位置情報を出したほうがいいと考えます。電話で連絡がとれなくても、ツイッターの投稿で生存を確認できた事例もあります。安否確認の意味を含めてツイッターに投稿することには意味があると思います。

 またデマへの懸念もあるでしょう。しかしそれ以上にツイートを活用することで、従来なら取ることができなかった災害対応が可能になると思います。マスコミの報道はとても多くの人に伝わりますが、きめ細やかなリアルタイムの情報は漏れが生じる懸念があります。一方SNSは一人ひとりのニーズにあった情報提供を行うことができ、マスコミでは伝えきれない情報を補完するメディアになり得ると考えます。

 ——DITSの活用が、神奈川県の政策提案制度に選定されました。

 神奈川県が大学からの政策提言を募集し、共同で取り組む事業を決める「大学発・政策提案制度」で、DITSをはじめとするICTを活用した若年層への防災教育が最優秀提案に選ばれました。

 内閣府が「防災教育へ参加したり見学した」経験の有無を調査したところ、参加したと答え人が全体で39.2%なのに対して、20代は27.6%と大きく減っています。また20代の39%が「訓練の実施を知らなかった」と回答しています。若い人への防災の意識付けが急務で、その一つの方法としてICTの活用があるのです。若者にとってスマホは日常的に使うもので、それを利用して防災教育を進め、意識付けするようにしていきたいと考えました。

 さらにデマ情報を流すとどれだけ危険なのかといったような、情報リテラシー教育も展開できます。

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