安心安全な食を目指して効能追究
学生とともに熊本の食素材の機能性研究に取り組む日々

農学部バイオサイエンス学科
安田伸 准教授

 超高齢社会へと到達した日本。人々の健康食品への関心が高まり、「高血圧に効く」「やせる」といった情報があふれています。しかし、中には効果の根拠があいまいなものも少なくありません。農学部の安田伸准教授は、熊本の食素材の未知なる可能性に着目し、その効能をデータで示す基礎研究を展開しています。学生も積極的に研究やデータに基づく食品加工、開発に取り組む安田研究室。熊本地震で被災した阿蘇キャンパスから熊本キャンパスに拠点を移し、再び実験に取り組む研究室をのぞいてみました。【聞き手・中嶋真希】

 ――「安心・安全な食を追究する」が東海大学農学部の大きなテーマです。そのテーマに向かって、農学部ではどう取り組んでいますか。

 農学部は、応用植物科学科、応用動物科学科、バイオサイエンス学科の3学科からなり、「『食』『環境』『生命』の未来をつなぐ」がキャッチフレーズ。「食の重要性」と「生命の尊さ」をよく理解した上で、最先端の科学技術を取り込みながら、食料生産について理論と実学を身につけます。白衣を着た屋内での研究から、品種改良や栽培、家畜動物の飼育方法を科学的に学び、畜産物の効率的な生産に取り組むフィールド系まで、各学科が連携し、食料生産や限りある資源利用について幅広く研究できるのが農学部の強みです。

 ――バイオサイエンス学科の学生さんたちはどのようなことを学んでいるのですか。

 バイオサイエンス学科では、特に食品科学と生命科学における専門知識と新技術を習得します。例えば、チーズやヨーグルトなどの発酵食品やハーブが持つ有効物質を研究やバイオテクノロジーを用いた機能性食品の開発、また食材や薬草の成分分析や菌類を培養、酵素タンパク質や遺伝子の制御メカニズムの解明を行なっています。細かい作業が得意な学生が多く、食品加工実習などを通じて食品衛生の実践的なノウハウを学び、食品メーカーの研究開発、品質管理や製造に多く就職をしています。

 ――安田先生の研究室では、機能性食品や食材などの有益性を調べていますね。

 食の安全・安心に対する関心は年々高まり、さまざまな健康食品や食に関する情報があふれていますが、特定保健用食品(トクホ)のように国が効果を認めたものもあれば、科学的な根拠に乏しいものもあります。食品の成分や機能を詳しく調べて、データとして表すことでその効能を科学的に示しています。最近では「機能性食品」という言葉を広く耳にすることも多くなってきたように思います。

 ――研究には学生が積極的に参加しているそうですね。

 学部生それぞれが興味を抱く卒業研究テーマとともに1年半、大学院修士課程に進学してプラス2年間、大学院博士課程に進学するとさらにプラス3年間、より専門的な研究を進めることになります。国内外を問わず、一緒に学会への出席や発表、学術論文を書くなど積極的に取り組んでいます。研究は、私一人で行っているものではなく、多くの学部生や大学院生との実験やディスカッションで成り立っています。

 ――実戦的な研究に参加するために、どのようなトレーニングを積むのですか。

 バイオサイエンス学科では1・2年次に実験の基礎を身につけ、3年次の春学期に研究室に配属されます。私たちの研究室では、3年次の当初は、まずは、4年次生や大学院生から指導を受けながら、基本的な実験を繰り返します。

 機能性食品や食の機能を研究する上で、「たまたま結果が出た」ということは絶対にあってはなりません。まずは身近な市販のお茶を使って、ポリフェノールの含量測定や、麦茶と緑茶で抗酸化作用がどれだけ違うかなどを調べています。再現できるデータが取れるまで、何度も実験を繰り返します。それは自分たちが出したデータが、「間違いでした」とはならないようにするためです。実験を重ねて、さらにデータをどう整理し解析するかというトレーニングを積みます。そして、4年次には本格的に自分自身の卒業研究を進めながら、今度は後輩に指導もします。大学院生たちもまた、実践的な研究面で大きな指導力を発揮し、後輩たちの相談相手になってくれています。

 ――安田先生の研究室にはどのような日常風景がありますか。いつもにぎやかなようですね。

 思うようにできない時は、「どうしてだろう」と、みんなで話し合いを行います。時には、研究室ではバーベキューなどの楽しい思い出も作りながら、一生懸命に実験に取り組み、卒業研究に臨みます。私がうれしいのは、卒業式の日に、「研究室では先輩たちから多くのことを学ぶことができ、無事に卒業できた」と振り返る学生が多いことです。先生のほか仲間や先輩・後輩らとともに過ごす時間が家族よりも長く、責任感と感謝の気持ちを持って卒業できれば、教師冥利に尽きます。「楽しい思い出作りも大切に、悔いのない学生生活を送ろう」というスタンスでやってきました。

 ――みんなで楽しむための仕掛けは、何がありますか。

 研究発表会後のイベントなどや、学園祭で模擬店、年末は大掃除をして忘年会をやっています。私たち研究室ではそれぞれに役職を設けています。研究室のリーダーである学生の室長と副室長や試薬の管理係のほかに、イベント・会計係、機材・備品係もいます。これらの役職は、誰がどの役に適しているかを先輩らが考えて毎年引き継いで行きます。研究活動においても、メンバー全員がそれぞれの役割を持って取り組んでいます。

 研究室の説明会で、「求める学生は、組織の一員として約束を守れる人」と必ず話します。楽しむだけでなく、仕事をする場所として認識してほしいからです。

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