目標は明確でなくてもいい
大学で「自分のやりたいことを見つける力」を養って欲しい

文化社会学部設置準備委員会委員長
飯塚浩一 教授

 2018年4月、東海大学湘南キャンパスに「文化社会学部」が誕生する。アジア学科、ヨーロッパ・アメリカ学科、北欧学科、文芸創作学科、広報メディア学科、心理・社会学科の6学科で編成され、「多文化理解」「言語表現」「メディア」「自立と共生」をキーワードに、多様化する社会で新しい世界を切り拓くアプローチを提案する。学部創設にかかわっている文学部広報メディア学科の飯塚浩一教授に、学部の開設理由やその特色を聞いた。【毎日新聞社デジタルメディア局 西田佐保子】

 ―「文化社会学部」を開設する理由をお聞かせください。

 大きく分けて2つの理由があります。一つは、18歳以下の人口が急激に減少する「2018年問題」です。日本で今後も少子化が進む中、受験生から選ばれる大学へ向けて対応が迫られており、他の多くの大学でも新学部の開設や学部の再編が行われています。

 もう一つはより積極的な理由です。01年に、文学部はそれまでの6学科を11学科に改編しました。当初は新たな学科が増えたことで活気が出ましたが、徐々に「文学部」という大きな枠組みの中で、それぞれの学科の特色の違いが外部から見えにくくなってきました。

 例えば「文芸創作学科」「広報メディア学科」など社会の具体的な課題に対応する実践力の養成を前面に出す学科と、「文明学科」「歴史学科」などの伝統的な人文科学系の学科では、カリキュラムの組み方や授業のスタイルが違ってきますが、組織が大い分、外部からその違いが見えにくくなる傾向がありました。

 そこで、文学部を母体として、異なる文化の地域から共生の精神を学ぶ「アジア学科」「ヨーロッパ・アメリカ学科」「北欧学科」の文化系3学科と、表現・メディア・コミュニケーションを学ぶ「文芸創作学科」「広報メディア学科」「心理・社会学科」の現代社会系3学科で編成される文化社会学部を開設することになりました。

 文化社会学部は、「文化」の観点から「社会」を考えます。今回の改組により、学部としてのコンセプトが明確になり、「何を学べるか」がよりクリアになったと思います。また、学部を新たに編成したことで、グローバルな視点を身につける「多文化理解」、発信力のある言葉のスキルを磨く「言語表現」、デジタル時代のコミュニケーションを考える「メディア」、社会の中の自分に向き合う「自立と共生」という特色を打ち出すことができました。

アジア学科 ヨーロッパ・アメリカ学科 北欧学科

 ――日本の大学では「文化社会学部」の開設は初めてとなりますが、海外ではいかがでしょうか。

 イギリスやオーストラリアをはじめとした英語圏では非常に人気のある学部です。文化社会学部は英語で「School of Cultural and Social Studies」ですが、海外では社会と文化の順が逆の「School of Social and Cultural Studies」(社会文化学部)という名称の方が一般的かもしれません。日本でも今後、文化社会学部が注目されてくると思います。

 ――文学部を母体としたということですが、新たに「アジア学科」「ヨーロッパ・アメリカ学科」が設置されました。

 「アジア学科」は、「歴史学科東洋史専攻」と「アジア文明学科」を統合した学科です。日本における東洋史研究は中国史研究が中核となっていますが、アジア文明学科との統合により、韓国、中国から東南アジア、インド、中東、エジプトまで研究範囲が広がります。語学にも力を入れていて、アラビア語、トルコ語、ペルシア語、ヒンディー語などの授業を設けています。「アジアの歴史と文明」「アジアの文化と社会」「アジアの言語」の観点から、現代のアジアと日本を読み解くと同時に、現代社会の問題の解決法を考え、行動する力を身につけます。

 「ヨーロッパ・アメリカ学科」は、「ヨーロッパ文明学科」と「アメリカ文明学科」を統合した学科です。常に世界に大きな影響を与え続けているヨーロッパとアメリカは、歴史的にも地域的にも広く深く、多様で複雑です。人々の営みと文化を、文学・芸術、宗教・思想、歴史・社会などさまざまな観点から学んでいきます。イタリア語、ギリシア語、ラテン語の授業も履修可能です。

 ――北欧学科はとても珍しい学科ですね。

 日本には一つだけです。ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、アイスランドの5カ国の言語と文化を学ぶことができます。グローバル化と競争社会がもたらす「格差」が先進国では問題になっていますが、北欧諸国では社会全体で格差の解消に向けた取り組みを行っています。福祉や教育、女性の社会進出などに関する北欧諸国の施策から豊かな社会のあり方を学びます。東海大学では、全ての学部でQOL (生活の質)の向上に取り組んでいますが、その目標の核となる学科だとも言えるでしょう。

 アジア学科、ヨーロッパ・アメリカ学科、北欧学科では、海外実地研修がカリキュラムに組み込まれています。海外で語学研修などを受けられるので学生に人気です。他の学科の学生も履修可能です。

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