建学75周年に思う
世界に存在感を示せる大学に

    東海大学
山田清志 学長

 今年、建学75周年を迎えた東海大学。2018年には新たに「文化社会学部」と「健康学部」を設置するなど、グローバル化の中で日々、その姿を新たにしている。創立者である松前重義博士の精神を継承しつつ、次の100周年に向けて新たなステップを歩み始めた大学の今と将来像を山田清志学長に聞いた。【毎日新聞デジタルメディア局 浜名晋一】

 ◇75周年は「転」

 ――東海大学の建学75周年を振り返ってください。

1965年

 東海大学は2017年に建学75周年を迎えましたが、これまでも25年ごとの節目でその歴史を振り返ってまいりました。75周年は1942年に清水(現・静岡市清水区三保)に東海大学の前身である航空科学専門学校を設置した時から起算しておりますが、25周年の時は1963年に湘南キャンパスを設置して数年が経過し、大学としての一つの拠点を確立した出発点であったと思います。

 そして、50周年を迎えた1992年には、東海大学としての理念を堅持し、時代に沿った新しい学部・学科を開設し、全国にキャンパスを展開した拡充期といえると思います。

 50周年で大学として今日の形が確立された時期とすると、その後の25年はそれを成熟させた時期であり、起承転結で例えると75周年は「転」に当たると思います。75周年は4分の3世紀ですので、ここからの25年は100周年に向けて新たな展開を始めていこうと考えております。

 ――目に見えない東海大学の学風はどのようなものですか。

 多くの方が思い浮かべる東海大学のイメージは、理工系を中心とした総合大学であること、スポーツ活動や国際交流活動が盛んであることなどが挙げられると思います。これは、創立者の松前重義博士が確固たる信念によってつくりあげた大学の精神的な支柱であり、今でも、東海大学の学風として力強く息づくものと思います。

 ――東海大学の教育理念とはどのようなものですか。

松前重義博士

 創立者の松前重義博士は、東海大学創立にあたって大きく次の三つの理念を掲げました。一つ目は文科系と理科系の垣根を取り除いた文理融合教育の実践、二つ目は科学技術立国を支える人材の育成、三つ目は世界平和に貢献する人材の育成です。これらは松前重義博士自身の経験則から導かれている理念であり、一つひとつが独立しているものではなく、それぞれが密接に関連づけられ、教育に活かされています。

 そのための教育の核となるものは、全学生必修科目の「現代文明論」です。これは創立者の松前重義博士が掲げた建学の精神に基づき、文明に対して深い思慮と洞察を身につけ、自らの思想を培うことを期して開講された文理融合の科目です。人文科学・社会科学・自然科学の各分野の専門家である研究者がリレー形式で講義を受け持ち、文系・理系の枠にとらわれず、全学生が必ず履修しなければならない、東海大学の核となる科目です。

 そして、科学技術立国を支える人材の育成面においても、松前重義博士は、単に科学技術という理系の科目を修めるだけではなく、文系のことにも理解を持つような文理融合の人材を育成することが科学技術立国を支えることに繋がると主張しております。そのベースとなるのは人間、社会、自然、歴史、世界といった幅広い視野を持ち、人生の基盤となる思想を培うことであり、文理融合教育の基盤である現代文明論に組み込まれています。

 この現代文明論の科目を、建学75周年を機に改訂しようと考えております。今までの現代文明論は、大きく「自校史」の部分と、生命倫理の問題、環境問題、冷戦の問題などの「現代社会の諸問題」が、縦糸と横糸のように織り交ぜられて開講されていました。改訂する新しい現代文明論の趣旨は、東海大学の建学の精神や自校史の部分を独立させて入学時に学び、次に基礎教養科目を学んだ上で、現代文明論へと継げます。即ち、現代文明論は、新入生が自分の大学がどんな大学かを知ることにも主眼を置いて、1年次の授業として開講していたのですが、今後は、生命倫理や環境の問題を考えるには基礎教養科目を修得した上で、ということから2年次開講へと変更する予定です。

 松前重義博士が亡くなった1991年は、ソ連共産党が解党した年であり、冷戦構造が崩壊して20世紀の社会主義の実験が終わった年です。松前重義博士は、冷戦構造の後に真の世界平和ができてくると考えていました。ところが、時代が逆行し再び戦争の脅威が世界を、特に東アジアを覆う今日、正しい歴史観や世界観に基づき、東海大学は真の世界平和に貢献できる人材を育成すべきと、改めて肝に銘じなければいけないと思います。

 ◇学生との距離感と教員の役割

 ――教育システムの特徴や強みは何でしょう。

 大きな特徴は三つ挙げられます。一つ目は幼稚園から大学院までの一貫教育体制、二つ目は文理融合の教養教育の充実、三つ目は少人数教育の実施です。

 一貫教育体制につきましては、付属高校から大学への入学生という視点で見ると全体の3分の1近くを一貫教育で支えています。付属高校からこれだけの数の学生が進学しているのは、少子化の時代にあって一定の学生数を確保できるという面では、経営的な強みだと思います。しかし、一貫教育が全て強みになっているのかというと、検証・改善しなければならない面も含んでいます。

 大学が育成する人材に求められる能力には、コンピテンシーとリテラシーがあります。コンピテンシーは言い換えて「人間力」と解釈すると、特に東海大学付属高校出身者はこの能力は高いと思います。しかし、一方では大学受験を省略しているために、基礎学力とでもいうべきリテラシーの面では、受験を経験している学生と比較すると若干劣ることは否めません。コンピテンシーを伸ばしつつ、リテラシーをどう担保していくのかを、75周年という節目の中で改善することが、特色を強みに変えられるかどうかのポイントだと考えています。

 文理融合の教養教育の充実につきましては、前述した全学生必修の現代文明論をコア科目に設定していることが基本となります。その上で、東海大学は北海道から九州までキャンパスを展開し、あらゆる学問分野の学部・学科を設置しているという大きな強みがあります。他学部他学科開講科目の履修はもちろん、副専攻科目で将来の可能性を広げる自由な履修システムの導入やキャンパス間留学制度など、東海大学ならではの独自の教育システムを採用しております。また、正課活動だけでなく課外活動面に目を向けましても、サークルやクラブ活動、プロジェクト活動などの大学生活を通じて、文系と理系との出会いの中で、真の意味の文理融合教育ができるのではないかと思います。

 少人数教育の実施につきましては、東海大学は約3万人の学生を抱えるマンモス大学でありながら、教員と学生の比率やクラスの大きさを考えると、リベラルアーツ型の大学と同じような組成になっております。同規模の大学ですと、教員1人に対して学生数は50〜60人くらいの比率が普通ですが、東海大学は教員1人に対しての学生数は30人以下であることは間違いありません。大規模大学でもきめ細かい教育を提供しており、いかに学生と教員の緊密度が高い大学であるかということは特色として挙げられると思います。

 また、学生と教員の比率だけでなく、教員の役割についても特色を出していこうと考えています。今までの大学の教員は、1人で教育、研究、学生指導の全ての面で能力を発揮することが期待されていました。しかし、現実的には全ての面で能力を発揮するということは、極めて難しいことです。

 そこで、東海大学では現在約1,650人の教員を抱えておりますが、各教員の役割を3つに分けることにしました。研究に専念する教員、教育と研究をバランスを取って行う教員、教育に専念する教員です。学生と教員の距離が近い大学という特色を持っておりますので、それを学生に実感してもらうことで、さらに満足度を高めたいと思っています。

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