悲願の大学選手権初優勝へ
ラグビー部が目指すプレーの“表現力”とは

体育学部競技スポーツ学科
木村季由 教授

 昨年、2年連続で全国大学ラグビーフットボール選手権大会決勝まで駒を進めるなど、大学ラグビーをけん引するチームとなった東海大学ラグビーフットボール部。1998年に就任した木村季由監督のもと、関東大学ラグビーリーグ戦で7度の優勝を誇るチームは今季、悲願の大学選手権初優勝を狙う。木村監督に今シーズンへの意気込みや全国優勝を狙うチーム作りについて、語ってもらった。【毎日新聞デジタルメディア局 永井大介】

 ◇負けるときには必ず理由がある

 ――リーグ戦(11月6日現在5戦全勝)も佳境を迎えています。現在はどのようなチーム状況でしょうか。

 来年1月の大学選手権の決勝を目指して1年間を通したチーム作りをしています。リーグ戦1戦1戦ごとのそれぞれの段階でのチームの到達度を意識していて、課題もありますが、成果は着実に出ています。

 ――昨年の帝京大との選手権決勝でチームに足りない部分を感じられたとか。

 ここ数年、個人の力を最大限に引き上げていき、その上でフォワード、バックスといったポジジョンごとの力を上げ、最終的に両者を連動させるチーム作りをしてきました。これは相手の戦術などは関係なく、自分たちの強みを作り上げその強みで相手を凌駕するというやり方でした。

 こうして築き上げてきた強みは昨シーズンも手応えがあり、フォワードのスクラムなどは帝京大学戦でも優位性を示せたと思います。それでも、我々が帝京大学に勝てなかったのは、必ず理由があると思います。極端な言い方をすれば、勝つ時は運で勝てることもありますが、負ける時には必ず明確な理由があります。その理由を曖昧にせずに突き詰めていかないと勝利はないと思います。

 帝京大学戦でいえば、全体的なゲームの進行や勝負どころでのプレーの選択といった部分で、やはり帝京大学が我々を上回っていましたし、我々にも細かな部分で判断エラーがたくさんありました。こうしたエラーをなくさない限り、勝てないということがはっきりと分かりました。

 ――決勝での敗戦を受け、今シーズンは具体的にどういった取り組みをされてきましたか。

 ラグビーはゲームの状況が次々と変わるため、選手にはその都度、状況判断が求められます。試合ごとにゲームプランを立てますが、高いレベルになればなるほどプラン通りにいくことは困難で、それがどんどん崩れていくのがラグビーです。その時、ある選手がキックだと判断し、別の選手はパスだと判断すれば、そこには小さな意識のズレが生じます。判断の連続の中で生じた意識のズレは次第に大きくなり、最終的には試合結果に直結する大きな判断ミスにつながりかねません。そのため、全員が同じ判断をしているかが重要になります。

 状況判断能力を磨くため、毎日のトレーニングは常にゲームを意識したプレッシャーの中で行ってきました。特にスクラムやラインアウトといったセットプレーではなく、アンストラクチャー(崩れた)な状態でも偶然を排除し、いかに組織化できるかに時間を割きました。

 ――目指しているような試合運びには近づいてきましたか。

 80分のゲームを10分刻み、8回に分けて試合運びを考えさせています。4勝4敗ならば五分五分、5勝3敗にすれば勝てるんです。試合全体で負ける時間帯もあります。その場合に次の10分をどう取り返すかを考えられるかが求められます。

 何かのミスをきっかけに10分、10分と次々と相手に試合の流れがいってしまえば、取り戻すのは大変です。誰かが早いタイミングで悪い流れを断ち切らないといけません。流れの悪さを生み出す小さなほころびに気が付いて、キャプテンを中心に誰かが声をかけたり、プレーで盛り返したりすればいいのですが、今年のチームはそこがまだ足りません。

 日常の練習でもそうした部分はあって、まだ気がついたコーチが声をかけている状況です。コーチはプレーしていませんので客観的に捉えることができます。しかし、試合ではコーチは手助けできません。選手自身が気づかなければ解決できないのです。私はプレーも言葉も表現力だと思っています。練習でも試合でもプレーのほころびをその場で見つけて、表現力で修正していかないと選手権決勝は勝てないと思っています。

 その表現力を身につけるためには、演じてしまうぐらいの覚悟が必要だと学生には言っています。表現とは自分たちのこだわりや徹底です。その上で状況判断があり、言われたことや決められたことをただ盲目的にやっているだけでは強くはなれません。スクラムであれば今より1センチ低くするとか、足の指が右向いているとか左向いているとか、すごく細かな部分までこだわり抜いて、こだわっている部分を試合の中で表現できなければ、自分たちと同じかそれ以上の実力のあるチームと戦うことはできないんです。

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