行政の課題を現場で考える
自分の頭で考える人材の育成を

政治経済学部政治学科
出雲明子 准教授

 住民自治意識の高まりとともに、かつてないほど公平、中立性が求められている行政。かつて“お役所仕事”と批判された行政の改革はどこまで進んでいるのか、労働環境改善の旗振り役となっている役所自身の働き方改革はどうなっているのか。公務員制度について研究している政治経済学部政治学科の出雲明子准教授に聞いた。【聞き手・兵頭和行】

 ――専門の公務員制度論について教えてください。

 基本的に公務員は労働者ですので、企業と同じように労働問題があります。公務員と民間で法制度が同じであれば、一緒でいいわけですが、日本の場合、公務員特有の法や制度があり、官民の垣根が高いということを前提として公務員のための労働問題を扱う分野があります。労働問題といえば、勤務条件、給与、人事評価。あとは、政官関係といわれる政治家との関係をどう捉えるかという問題があります。そういう公務員特有の問題について、それがどのように決められているのか、その決め方が正しいのかどうか、例えば給与の決め方は正しいのかどうか、そういう基準についておもに研究しています。

 ――公務員に関しては、お役所仕事に対する厳しい目が向けられて久しいのですが現状は。

 お役所仕事自体はたぶん50年ぐらい前の言葉だと思いますが、ここ10年ぐらいお役所仕事的なものは減ってきています。それは公務員制度改革がここ15年ぐらいかけて行われてきていますので、その改革の一つのテーマが、お役所仕事的なそういう文化だったり、制度だったり、慣行をなくしていこうというのが含まれていて、もうおそらく実態としてお役所仕事はかなりなくなってきています。また、市区町村の図書館など一見公務員に見えても、民間委託で実際には公務員ではなく、民間企業が担っているサービスもたくさんあります。

 ただお役所仕事っていうとき、作業が遅いっていうような側面と、あと融通が利かないっていう側面があると思うのですが、遅さはある程度解消されていると思うのですが、融通が利かないというときには、公平性の面でもうできない、そもそもできないものっていうことも結構あるのではないでしょうか。

 また、人事評価制度が導入されたというのも大きい変化です。企業では約20年ほど前から、公務員では約10年ほど前から人事評価制度が導入され、その目標の一つが自分の仕事の組織の中での意味合いを整理するとか、自分の業務に業績というものがあれば、それはどういうことかということを明確にすることです。与えられた仕事をあまり意味づけしないでやるのではなく、仕事になる意味を考えるとか、そういった目的を持っている制度なので、それによって、効率性とか、業務の生産性とか、そういったものが考えられるようになってきたというのも大きいと思います。

 ――働き方改革が国全体で求められていますが、公務員、行政ではどうなのでしょう。

 公務員は仕事が楽で残業がないというようなイメージがあるかと思うのですが、現状、結構公務員は残業が出る仕事になっています。増えているのは、災害の対応とか、北朝鮮のミサイル問題が影響するような危機管理上の対応もあります。国家公務員も、例えば国会待機や安全保障の問題などや、野党から国会でする質問が出てくる時間が非常に遅いというようなことが最近少し問題になっています。公務員であれば費用が発生しないというふうに政治家も市民も思っていて、そういったことで残業が増えているというのもあります。

 また、公務員自身に残業の意識が低かったということもあると思います。何時に仕事を終わらせて、というような効率性が少し欠けてるという意識の問題もあります。そういった中で、働き方改革を国が企業に対して求めるのであれば、国が雇い主となる労働者の働き方改革をなぜやらないのかという疑問は当然、企業の側からも出るでしょう。例えば残業削減を求めたときにじゃあ自分のところは残業削減できないのかと当然なるわけですから。

 そうした中で重要なポイントは、まずは公務員の方々が働き方を見直す。それは業務整理をちゃんと行う。丁寧であるともいえるのですが、不要な業務や手続きがあるのではないかと。それらは、簡略化して、効率化することが重要です。そして、役割分担を明確にし、個人の業務を明確にし、業績もつかむことが求められると思います。その上で、外部、住民であったり政治家の側も、無料の労働力だというふうなことではなく、勤務時間があってそれに対して労働の報酬を受けているという意識を持つことが重要だと思っています。

 ――女性の労働問題はどうですか。

 男女の問題ということでしたら、業務の固定化。例えば福祉とか、そういった業務に女性が集中しているという問題があります。将来、例えば女性管理職に目標数値を設けて実現しようとしたとき、福祉分野に女性が偏っているということであれば、なかなかほかの分野の管理職を出すことが難しいという問題があるので、業務の固定化っていうのは、今後見直していく必要があると思います。

 地方自治体を中心に非正規労働の公務員が非常に多いのですが、今、政府が働き方改革の中で、待遇を見直そうとしています。非正規労働の公務員の方の多くが女性であるという問題があり、そこもやはり固定化されてしまっている。それをどういうふうに待遇改善していくのか。民間企業のように正規に切り替えていくべきかについては、反対も多いですが。非正規、正規労働問題は、今後、民間企業以上に大きな問題になると思います。

 ――毎年、ゼミ合宿でさまざまな行政の現場に行かれています。

 今年は神戸、昨年は盛岡、2015年は名古屋、14年は北海道・夕張です。盛岡は東日本大震災の被災地を訪問しました。その後の復興の取り組み、とりわけ高台移転と海岸沿いの地域をどう整備するのかという問題を見てきました。また、堤防を何メートルにするのかという問題が町ごとに違っており、それを当事者の方からうかがったりしました。高台移転はスムーズにいったところもあれば、断念したところもあります。移転して新しい家を建てるというのは金銭的にも非常に難しい。仮設住宅に住んでいる方もまだおられます。

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