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ベストティーチャー

ベストティーチャーの授業の秘密(11) 学芸員にとって重要な「集い力」〜コミュニケーションに重点を置いた双方向性の高い授業を〜 東海大学課程資格教育センター博物館学研究室 篠原聰准教授

2014年6月2日掲出

 東海大学では、教育力向上に向けた組織的な取組(FD)の一環として、学生による授業評価を実施しており、学生からの評価が高かった教員を「東海大学Teaching Award」として毎年表彰しています。

 今回は2012年度に受賞した課程資格教育センター博物館学研究室の篠原聰准教授に、授業構成にあたっての創意工夫や学生と接する際のポイントなどを聞きました。

授業を行う上で、工夫されている点は?

 課程資格教育センターでは、高校・中学の教員資格取得のための「教職課程」、図書館の司書や司書教諭資格取得のための「司書課程」、博物館の専門的職員である学芸員の資格を取得するための「学芸員課程」の3課程を設置しており、私は「学芸員課程」の科目を担当しています。湘南キャンパスでは現在、文学部全学科、教養学部芸術学科、工学部建築学科、理学部全学科を対象に学芸員課程を開講しています。
※2014年度から新たに教養学部人間環境学科自然環境課程でも開講

 学芸員は国家資格であるため、文部科学省が「博物館に関する科目」を定めており、それぞれの科目内容について指針を示しています。この指針を踏まえた上で、学芸員養成にとって欠かすことのできない重要な要素だと私が考えているのは、本学で育成すべき力として掲げている4つの力のうちの「集い力」です。博物館法改正に伴い、学芸員課程には12年度から新カリキュラムが導入されました。新カリキュラムでは、学芸員に求められる資質として「コレクション」「コミュニケーション」「マネジメント」の能力が欠かせないとされています。博物館は人文系・自然系を問わず、多様な世界観がせめぎ合うコミュニケーションの場です。さまざまな世代の来館者がいることから、世代間のコミュニケーションの場であるとも言えます。したがって、他者への理解や異文化理解が不可欠であり、そのためには特に「集い力」を身に付けることが必要だととらえています。そこで、授業では教員と学生、および学生同士のコミュニケーションに重点を置いた、双方向性の高い構成を心がけています。一つのテーマについて、学生同士が議論するだけでなく、私も学生の意見を聞いて、自分の意見を述べるなどして議論に参加するようにしています。

学生を授業にひきつけるポイントは?

 授業の中で議論をする場合のポイントは、学生たちがそれぞれの考えを深められるようなテーマを設定できるかどうかです。例えば、博物館で実際に持ち上がっている課題をテーマにすることで、学生たちは実情を知り、博物館を身近に感じられるようになります。そうすればおのずと議論も活発になってきます。また、卒業後に学芸員として博物館の職員になれば、すぐにさまざまな課題に直面するはずです。こうした議論が、現場で課題に直面した時の対応力を育成することにもつながるのではないかと期待しています。現実に即したテーマを常に学生に提示できるよう、情報収集にも努めています。

 学芸員には厳しいマナーが求められます。したがって、授業においてもマナー面では厳しく対応しています。ほかの学生の迷惑になるような私語はもちろん、机の上に飲み物を置くことも禁止しています。実習などに出た場合、飲み物などで資料を汚すようなことがあってはなりません。早い段階からこうしたマナーを身に付けられるよう配慮した指導を心がけています。

 また、授業中に限らず、学生には機会があるごとに積極的に話しかけるようにしています。学生たちはそれぞれ素晴らしい潜在能力を持っていますが、自分から思い切って何かをやり始める最初の一歩を踏み出せずにいる学生が増えているように感じています。日常会話の中でも学生たちに自信を持ってもらえるような言葉を選ぶよう気を付けています。なぜ資格取得を目指すのかを、履修段階に応じて学生に常に自覚させることで、学びへのモチベーションも高めています。

今後の課題と抱負について

 今回の法改正は、博物館の現場でスタートラインに立てるまでの養成教育を大学側でしっかりやって欲しいということの確認でもあったと受け止めています。つまり、実践力を高める教育が求められているということです。このような要請に応えるため、今年度から「東海大学×彫刻の森美術館 キュレーターの“たまご”プロジェクト」と題して、美術館と連携した実践的なインターンシップ制度を導入しました。また、学芸員だけでなく博物館とつながりの深い職種の方々を講師に招いて、講演会なども企画しています。2013年6月18日には国立民族学博物館の広瀬浩二郎(ひろせ こうじろう)准教授をお招きし「世界をさわる手法を求めて〜“手学問”が世界を変える」と題して、ユニバーサルミュージアムの試みに関する講演会を開催しましたが、300名近くの方々が来場してくれました。一般の方や学生のこのような関心の高さを受け止め、秋にはテレビ局や新聞社の方々を講師とした連続講座も予定しています。

 今回の法改正では実現されませんでしたが、国は上級学芸員資格の設置や大学院教育も検討していますので、そうした国の方向性も視野に入れたカリキュラムの整備も急がなければいけません。学芸員や関連職種に就いた卒業生に対してのサポートや研修制度についても今後検討していきたいと考えています。

(2013年6月取材)

関連リンク:課程資格教育センター博物館学研究室
http://www.u-tokai.ac.jp/facilities/research_office_for_museology/

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