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ベストティーチャー

最大の武器は“言葉”〜教員が心を開き、リアルに語りかければ、学生は応えてくれる〜東海大学文学部アジア文明学科 葉千栄教授

2014年11月4日掲出

 東海大学では、教育力向上に向けた組織的な取組(FD)の一環として、学生による授業評価を実施しており、学生からの評価が高かった教員を「東海大学Teaching Award」として毎年表彰しています。

 今回は2012年度に受賞した文学部アジア文明学科の葉千栄(よう せんえい)教授に、授業構成にあたっての創意工夫や学生と接する際のポイントなどを聞きました。

授業をとおして学生に伝えたいことは?

 一人の人間として現実の問題にきちんと関心を持つこと。それらを知った上で自ら判断すること。この2つです。
私は文学部と総合教育センターの両方で講義を持っていますが、文学部の「近現代東アジア論」という講義では東アジアの近代、特に中国のアヘン戦争から文化大革命までの出来事を一つずつ詳しく追っていきます。「すべての歴史は現代史である」と言われるように、歴史を学ぶ意味は過去と現在の連続を知ることです。

 また総合教育センターの「人間の安全保障」という科目では、一般市民がいかに国家や政府から自らを守るかということをテーマにしています。従来の安全保障は、国家が主導して外敵から国民を守る国防の概念でした。しかし、1994年以降、国連から新たな「人間の安全保障」の概念が提起されました。当時起きていたソマリアの国内動乱において、一般市民の命を脅かしたのは、外敵ではなくむしろ自国政府そのものでした。その現実から国家は加害者にもなり得るという認識に至り、新たに「人間の生命、生活、尊厳への侵害から市民を守る」と定義したのです。実は、先進各国でも同じ問題が山積しています。それは自国政府の間違った政策による国民への損害です。例えば経済格差、エネルギー政策、危機管理、自然災害への対策もそうです。地震や津波、台風などは自然現象で避けることはできませんが、対策の不備が大災害へと発展させてしまうケースもあります。今の日本は、まさにその脅威と向き合っているわけです。こうした実例をテーマとして取り上げ、課題レポートではその中から最も関心を持ったテーマを選び、それについて自分なりの解決法を提示してもらいます。

 昨今、アジアは日本企業にとっても極めて重要な地域であり、企業はアジアに詳しい人材を求めています。そのため、「構造と変化」の授業では、日本企業の中国や東南アジアにおける事業展開の実例をとおし、新興国の成長、また少子高齢化で国内市場が縮小する日本がそれらの国といかに win-win の関係を作り上げていくかといったようなことを、金融、交通、自動車産業などの分野に分けて話しています。こういった知識は就職活動においても生かされるはずです。

授業を進める上で大事にしているポイントは?

 教員の最大の武器は“言葉”です。いかにシンプルかつ明確な言葉で、伝えたいことを学生の心に届けるか、これに尽きます。インターネット、タブレットなどさまざまなツールがいくら進化しても、授業は教員と学生との「 face to face 」、二者間の関係です。私の授業では私語も居眠りも携帯電話を操作することも厳しく禁じています。しかし、それだけでは授業は成立しません。教員として、90分間、学生をいかにひきつけられるかが勝負だと思っています。今の若者は、現実の問題に無関心で、自分の人生にも無欲な傾向があると感じます。また受験勉強の影響でしょうか、これまで世界で起きた重要な出来事を、単なる数字や固有名詞の羅列としかとらえない傾向があります。しかし教員が、第一人称で心を開き、リアルに語りかければ、学生はしっかり話を聞き、それに応えてくれます。良い授業のためには、受ける学生のレベルはもちろんですが、送り手である教員の一人の人間としてのパワーが大切です。それがないと学生に変化は起きません。大学は学生に変化を起こす場だと考えています。よい授業の後では、学生がまるで1本の良い映画を観た後のように、教室に入ってくる時と出ていく時で全く違った顔をしています。

今後の課題と抱負について

 私は中国で生まれ育ちましたが、来日してすでに30年近く経ちました。その間、中国をはじめとするアジア各国と日本、両方の変化を見てきました。日本人の中には、逆境に立った時こそ、輝く精神があると感じています。それによって、明治維新、敗戦と2つの峠を乗り越え、大きな発展へと変えてきました。今は三度目の峠です。それは少子高齢化による国力の衰えです。しかし、この問題ともきちんと向き合えば、崖っぷちでも踏ん張り、追い越すという日本のお家芸が発揮できるはずです。しかし、内向きなメディア報道の影響もあり、問題自体に気付いていない人が多い。中国で育ったからこそ見える日本の現状もあります。私の授業を取ってくれた学生には、そういった日本の諸問題に気付き、奮闘の精神をもって一回限りの人生を自分のためにも社会のためにも輝かせて欲しい。授業の中で、私は「私たちは」「私たちの国は」と学生に語りかけます。この言葉を聞いた学生が将来、かつてのような活気ある日本を取り戻す人材となってくれれば、こんなにうれしいことはありません。

(2013年8月取材)

関連リンク:文学部アジア文明学科
http://www.u-tokai.ac.jp/undergraduate/letters/asian_civilization/index.html

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