1. トップ
  2. 東海イズムトップ
  3. ベストティーチャー

ベストティーチャー

授業の秘密(24)
科目によって授業構成を工夫し、学生の理解度を高める
東海大学札幌教養教育センター 和泉光則准教授

2016年9月15日掲出

授業構成での工夫をお聞かせください。

 私の専門は化学で、授業は基礎科目の「化学」と「化学実験」を担当しています。また、本格的にカウンセリングに携わっていることから、教養教育の「知識とコミュニケーション」という科目も担当しています。授業構成は、それぞれの科目で大きく異なります。例えば、「化学」ではオーソドックスな黒板とチョークの授業に徹しています。これは、覚えなければいけないことがたくさんあるからです。こうした授業で、プレゼンテーションソフトで作ったスライドを映したり、あらかじめ準備したプリントを配付したりすると、どうしても学生がぼんやりする時間ができてしまいます。学生には、私が黒板に書いたことを全部ノートに書き取らせることで知識の定着を図っています。

 実習科目の「化学実験」では、3人ずつのグループに分かれて実験を行います。この授業構成で注意しているのは、学生のやる気を維持するということ。昨今の学生は失敗すると、すぐにモチベーションが下がってしまいますので、なるべく失敗をさせないように気を配っています。しかし、最初から失敗しないよう道を全て整えてしまっては、学生は成長しません。実験中、非常勤の先生とともに学生の間を頻繁に回り、失敗しそうなグループがあれば、失敗する直前に声をかけるようにし、「このまま続けるとどうなると思う?」と一旦学生に考えさせてから、正しい方向に軌道修正しています。

 一方、「知識とコミュニケーション」の授業ではプレゼンテーションソフトによるスライドのほか、映画やアニメーションなどの動画をよく使っています。この科目は対人関係について学ぶものです。対人関係のスキルを学ぶだけではなく、人と人との関係においての心の動き、つまり、人は他人とコミュニケーションをとる場合、どういう時に楽しさや嬉しさ、不安、腹立たしさを感じるのか、それはなぜなのか、といったことを学ぶ科目です。そのため、アニメーションや映画で具体的な事例を示すことで、学生の理解がより深まると考えています。

学生を授業に惹きつけるポイント、学生と接する際に気を付けている点についてお聞かせください。

 「化学」の授業では、学力差のあるクラスの中で、学力の高くない学生が不安にならないよう、また、学力の高い学生が退屈しないよう、そのバランスに注意を払っています。高校までの化学は、結果だけを知っていれば大学入試に対応できるという側面もありますが、大学の授業では単に覚えればいいのではなく、なぜそうなるのかという理由を知ることも重要です。そのためには、難しい数式を使って説明せざるを得ないこともあります。そうした時には「付いてこられる人は付いてきて。付いてこられなくなったら、とにかく難しいということを感じてもらえればそれでいい。この授業では、とにかく最低限ここだけを覚えれば大丈夫」と伝えるようにし、学力差によってその日に覚えてもらうことに変化を付けています。

 今年度の「知識とコミュニケーション」の授業は、春学期140名、秋学期160名と、非常に多くの学生が受講しています。大きな階段教室を使った授業であるため、どうしても後方の学生がざわついてしまうことがあります。私の授業を楽しみにしてくれている学生もたくさんいますので、授業の妨げになる場合には授業を中断し、黙って静かになるのを待つようにしています。中断した時間だけ授業の終了時刻が遅くなりますので、学生は静かになります。

 学生に対応する時には、できるだけありのままの自分であることを心がけています。授業中、私自身も腹が立ったり、不安になったりする場合があります。私はそれを素直に学生たちに伝えるようにしています。今の発言は失敗だったと思ったら、すぐにそれを訂正し、本来はどう言うべきだったのかを伝えます。そうした対応をとることで、学生もこちらに心を開いてくれます。

今後の課題と抱負をお聞かせください。

 「化学」では、「他人の言葉を鵜呑みにせず、自分の目で見て考えて欲しい」と思っています。理論は絶対ではなく、証明できないものもたくさんあります。常識だと言われている理論でもそれを鵜呑みにするのではなく、まずは疑ってかかり、自分で調べ、考えてもらえるよう、授業でもあえて古い理論を展開し、これを新しい理論で否定するなどの手法を用いています。

 「化学実験」では、ハッカの草からハッカオイルやメントールの結晶を作り出す実験を進めつつ、併せて日本におけるハッカ産業の歴史も紹介する文理融合の授業に取組んでいます。この授業には実験の技術を学ぶだけでなく、キャリア教育の側面もあります。新しいタイプの授業だと思いますので、カリキュラムの中で基礎教育から専門教育につなげる授業として位置付けられるよう、内容を充実させていきたいと考えています。

 心理学系の授業には、グループワークで相手の話を聞き、自分の考えを主張するスタイルが多く、大きな成果も挙げていますが、私が行う「知識とコミュニケーション」の授業ではグループワークを一切行わず、個人ワークに徹しています。これは学生の中に、人と接することが苦手で、グループワークを苦痛に感じている学生が少なからずいるためです。受講している学生からは「この授業はグループワークがないから安心して受けられる」という声を聞くこともあります。そうした学生には、私の授業で対人関係や人の心の動きについて学ぶことで自分に自信を持ってもらい、ほかの授業や学生生活にそれを生かしてもらうことができれば、その学生にとっても大きな意義があるのではないかと考えています。

ベストティーチャーの一覧