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大野、逆境バネに 体罰問題乗り越え

男子73キロ級で優勝し金メダルを獲得した大野将平=リオデジャネイロのカリオカアリーナで2016年8月8日、和田大典撮影

 【リオデジャネイロ岸達也】リオデジャネイロ五輪の柔道男子73キロ級で8日、五輪初出場の大野将平(24)=旭化成=が日本男子柔道に2大会ぶりの五輪金メダルをもたらした。2013年、主将を務めていた天理大柔道部の体罰問題で処分を受けたが、それを乗り越えて心身とも一回り大きく成長し、五輪の畳で花を咲かせた。

 ロンドン五輪で金メダルゼロに終わった日本男子柔道。決勝で一本勝ちしても直後の大野に笑顔はなかった。「柔道は相手のある競技。礼も含め五輪は日本の心を見せる場」。一方で表彰式に向かう際、涙を拭った。

 柔道のエリートコースを歩いた。小学1年の時、兄哲也さん(26)=山口県警=の後を追い、山口市の「松美柔道スポーツ少年団」で柔道を始めた。居残り練習を欠かさず、小学4年から全国大会で活躍し、中学生になると兄に続いて、東京の柔道の私塾・講道学舎に入門した。

 柔道の名門・天理大に進み、1年時から国際大会で優勝するなど活躍して、4年時は主将を務めた。しかし、その夏から秋にかけ、部の体罰問題が発覚する。複数の4年生部員が1年生部員十数人の顔を平手打ちするなど暴力を振るい、うち1人が鼓膜を破るけがをした。大野は現場に居合わせたほか、自らも1年生1人に2回平手打ちをしたことがあるとされた。

 その夏にリオで開かれた世界選手権を制した直後。世界王者も体罰に関わったとするニュースは社会に衝撃を与えた。大学から30日間の停学処分を受け、全日本柔道連盟からは3カ月間の登録停止処分を受けた。

 殺到する取材を避けるため大野は天理大のある奈良を離れ、山口市の実家に2週間ほど身を寄せた。原点である松美柔道スポーツ少年団の練習場に通い、子どもの練習を眺め、時に稽古(けいこ)をつけた。心労で一気に白髪が増え周囲は心配したが、「他の部員を守らないといけない」と批判を甘んじて受けた。

 東日本大震災の被災地でのボランティアも経験し、程なくして一線に復帰するが、すぐに結果は出なかった。14年世界選手権は4回戦敗退。徐々に復調して15年世界選手権と今年春の選抜体重別選手権で、相次いでロンドン五輪代表の中矢力(27)=ALSOK=を決勝で降し、リオ五輪の出場権を得た。

 「しんどい時は俺らが背中を押すから」「俺らの誇り将平行けよー!!」。この日、スタンドで応援した哲也さんは、大野の天理大柔道部時代の同級生がメッセージを記した日の丸を掲げた。

 大野は日本男子柔道の金メダル候補筆頭格として、無難な試合運びで決勝に駒を進め、鮮やかな小内刈りで締めくくった。「もっと強くなれるし、金メダルにふさわしい人間に成長していかなければいけない」。東京五輪に向け最強で最高の柔道家を目指す。

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