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ともに・2020バリアーゼロ社会へ

毎日ユニバーサル委員会 第3回座談会 東京五輪・パラへ、平昌の教訓生かせ(その1)

河本宏子氏

 ◆ANA総合研究所副社長・河本宏子氏/元総務事務次官・桜井俊氏/日本パラリンピアンズ協会会長・河合純一氏/東洋大学教授・川内美彦氏/スポーツ庁次長・今里讓氏

     毎日新聞社のバリアーゼロ社会実現キャンペーン「ともに2020」などに提言してもらう「毎日ユニバーサル委員会」の第3回座談会が今月6日、東京都千代田区のパレスサイドビルであった。今回は2、3月に開かれた平昌(ピョンチャン)冬季五輪・パラリンピックを現地で取材した毎日新聞記者らの報告を基に、2020年東京五輪・パラリンピックで求められるバリアフリー対応などについて意見交換した。【司会は小松浩・毎日新聞主筆、写真は宮本明登】

     ◆平昌五輪・パラ視察報告

    バリアフリー、配慮あるが不十分

     座談会に先立ち、平昌五輪・パラリンピックを視察した毎日新聞オリンピック・パラリンピック室の鈴木大介主任と山口一朗委員、パラリンピックを取材した運動部の谷口拓未記者の3人が報告した。

     鈴木主任 五輪を視察した。スピードスケートの会場となった江陵(カンヌン)オーバルは新設されたもので、バリアフリーの環境が整備されていた。スロープで移動でき、斜度も緩やかで利便性が確保されていた。ただ、一人で上るのは大変かなと感じた。

     多目的トイレは広さが十分で、手すりもあった。一方で、ベビーベッドやオストメイト(人工肛門・ぼうこう保有者)対応の設備はなかった。便座からトイレットペーパーの位置が遠い。開・閉会式の会場などがあった五輪プラザのトイレは倉庫を兼ねていて、清掃用具が散乱していた。気配りの点で残念だった。

     全体として、バリアフリーを想定はしているが、ある会場にはあるのに別の会場にはない設備があるなど、一定のルールで作られていない印象が強い。必ず何かが抜けているという感じを受けた。

     山口委員 パラリンピックを視察した。仁川(インチョン)の国際空港から高速鉄道KTXが出ているが、乗降口の段差が非常に大きく、ひざ下くらいあった。日本の新幹線だと10センチくらいだ。また、今回の視察で点字ブロックを見たのはKTX乗り場だけだった。

     競技会場の車いす席は、1カ所につき固定いす1席と車いすスペース1台分が交互にあった。2016年リオデジャネイロ大会の会場は、固定いす2席の横に車いすスペースが2台分。パラリンピック関係者によると、車いす利用者同士で観戦するケースもあるので、2台分あった方がいい。また、平昌の車いす席は、前の人が立ち上がってしまうと人の背中しか見えない。リオの場合は席の前に柵があった。どちらも競技が見えない可能性が高い。

     平昌の街中はあちこちがでこぼこ。タイルがはがれていて普通に歩くのも難しい。バス乗り場に路上駐車もされていた。役に立ったのは、バスのルート検索用や翻訳用のスマートフォンのアプリだ。大会ボランティアの対応も心地よかった。

     谷口記者 選手に「何か不満なことがあったら小さなことでもいいので教えてほしい」とお願いしていた。メディアツアーという形で選手村内を取材する機会もあったが、意見をくれたパラアイスホッケーの上原大祐選手の「『惜しい』部分が多い」という言葉に凝縮されていると思う。配慮したようで十分に行き届いていない点が多々あった。例えば、選手村にはスロープがあったが、木製なのでぬれると滑る。義足の選手が転んだこともあった。食堂では配線の上にカバーをつけていて、そこの床面に段差ができている。車いすの選手が膝の上にお盆を載せていて、汁物がこぼれたこともあった。

     ボランティアは会場によって質に差があった。東京大会では教育をしっかり施さなければいけないと思った。

     ◆報告を聞いて

    河本氏 施設造りは人の流れ考えて/今里氏 選手の要望吸い上げ大切

     小松主筆 平昌冬季五輪・パラリンピックに取材と視察で派遣した3人から報告をしてもらいました。あと2年余りに迫った20年東京五輪・パラリンピックで競技会場のバリアフリー、街のバリアフリーに向けて学ぶべきところ、課題として東京が取り組まなければならないことなど多くの得るものがありました。報告を受けて、皆さんからご意見、ご提言をいただきたいと思います。

     川内美彦委員 韓国はソウルや釜山などに何度か行きましたが、歩道のメンテナンスが十分に行われていないようです。歩道に乗り上げての駐車もよくあります。そういうことが会場にも表れているのかなと思いました。

     報告資料で動線(人が動く経路)の写真を見ましたが、私から見ると全部ダメです。トイレへの誘導ブロックがあるのはトイレの前だけで、その先は切れてしまっている。視覚障害者はそこまでどうやって行くのでしょうか。あまり使った経験がないものを形だけ取り入れている感じがしました。東京大会に向けて、国際パラリンピック委員会のバリアフリーのガイドラインが紹介され、大会組織委員会は独自に「Tokyo2020アクセシビリティ(利用しやすさ)・ガイドライン」を作成しました。それに合わせて施設も造っています。東京では、このガイドラインに沿う形でしっかり取り組んでいただきたいと思います。

     河本宏子委員 バリアフリーはポイント、ポイントの中で整備するのではなく、一連の動線の中で整備すべきなのだと改めて思いました。例えば空港は空港、電車は電車、街中は街中ではなくて、人が動く流れの中で考えていかなければなりません。空港の中では動きやすくても、そこからバスで移動する際にはバスの乗降口が高くて困ってしまうというようなことも現実に起きている。トータルで整備することが必要です。ただ、それには財源も必要です。各企業に頼るだけでなく、整備を進めていく仕組みを考えなければならないと思います。

     河合純一委員 谷口記者の報告に選手の声を集めたとありましたが、意見を東京大会組織委員会とも共有し、より良いものにしてほしいと思います。仮設施設は撤去されてレガシー(遺産)になりませんが、新設するものや改築するものについては、バリアフリーにどこまで手を掛け達成していくのか。その作業を続けていかなければなりません。ボランティアの研修には私も関わっています。相当大変ですが、できることをやっていきたいです。また、ボランティアには障害のある当事者も一定数入ってもらい、その後の職場や社会で必ず生きるものにしたいと思っています。

    桜井俊氏

     桜井俊委員 私もパラリンピックの終盤戦を見に行きました。いろんな意味でのバリアフリーの設備はほぼあると思いましたが、もう少し気配りがあっていいと感じたのは私も同じでした。私が大切だと思ったのは、五輪とパラリンピックの間の期間ですね。12年ロンドン大会は非常に成功したと言われていますが、「チャンネル4」というテレビ局が「ウオーミングアップをしてくれてありがとう」というキャンペーンを打ったことが大きいとされています。つまり五輪がウオーミングアップで、これからのパラリンピックが本番という趣旨です。また、情報通信の分野などの活用でも、パラリンピックを盛り上げていくことは十分に可能です。

     今里讓・スポーツ庁次長 公務で欠席した鈴木大地委員の代わりに参加させていただきます。選手団から聞いた話ですが、「これをこうしてほしい」とその場で要望を出すと、結構改善されたとのことでした。例えばバリアフリー対応のバスがあり、決まって30分おきに出る。しかし選手は試合終了後そんなに早く帰れないので、どうしても遅い時刻のバスに集中してしまう。そういうことが事前に情報として入っていなかったということです。選手や関係者がどういう動き方をするのか事前によく聞き取り調査をするなどして、意見を吸い上げることが大切です。組織委員会が中心になると思いますが、国として取り組むこともたくさんあるので、我々も当事者の意見を聞くことをさらに進めなければいけないと思いました。

    有識者が活発に提言

     2020年東京五輪・パラリンピックを控え、毎日新聞は「共生」をキーワードに、バリアーゼロ社会実現キャンペーン「ともに2020」を16年12月に始めるとともに、この活動を社会のニーズに沿ってより有効に進めていくため、「毎日ユニバーサル委員会」を設置した。5人の有識者に参加してもらい、本社の小松浩主筆を加えた計6人で構成。その時々の事象に沿って開く座談会で、自由に意見を述べ、それぞれの立場から提言もしてもらう。議論については、特集紙面で公表する。


     ■人物略歴

    かわもと・ひろこ

     同志社大卒。1979年全日本空輸入社。取締役専務執行役員などを歴任。2017年4月から現職。61歳。


     ■人物略歴

    さくらい・しゅん

     東大卒。1977年郵政省(現総務省)入省、2016年退官。三井住友信託銀行顧問を経て18年1月から電通執行役員。64歳。

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