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月刊東京五輪

Promises・2020への約束 複合対談 競泳・大橋悠依×スキー複合・渡部暁斗

スキージャンプの飛び出しと水泳の飛び込みのポーズを取る渡部暁(右)と大橋=佐々木順一撮影

 <東京五輪まであと794日・パラリンピックまであと826日>

    「金メダル」目標明確に

     競技の枠を超えて思いを語り合う「Promises 2020への約束」。今回のテーマは多彩な能力を求められる「マルチアスリート」で、ノルディックスキー複合で五輪2大会連続銀メダルの渡部暁斗(29)=北野建設、競泳の2017年世界選手権女子200メートル個人メドレー銀メダルの大橋悠依(22)=イトマン東進=が対談した。冬季五輪4大会連続出場のベテランと東京五輪を目指すホープが複数種目に取り組む難しさ、メンタル面の工夫などを語り合った。【構成・村上正】

    練習やオフの過ごし方などを語る渡部暁斗=佐々木順一撮影

    あえて強気な発言を 渡部暁斗/良い時の映像を見る 大橋悠依

     --なぜ複数の種目を行う複合(ジャンプ、クロスカントリー)や個人メドレー(バタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、自由形)が専門になったのですか。

     渡部 初めはジャンプの選手になりたかったんです。長野を含む本州では、ジャンプの選手がクロスカントリーも行う複合の試合にも出なければいけないという暗黙のルールがあります。初めは嫌々でした。

    水泳競技などについて語る大橋悠依=佐々木順一撮影

     大橋 私は小学2年から本格的に競泳をしています。その頃は背泳ぎが得意でした。スクールでは個人メドレーの練習をするため、試合に出場する機会もありました。それでバタフライや平泳ぎを始め、結果が出て個人メドレーでやっていくしかないと思いました。決めたのは中学2、3年生くらいです。

     渡部 僕も同じで、高校になる時に選びました。中学3年で複合の方が結果が出ていて、この道しかないなと。スペシャリストになれない。でも、バランスはいいから、そっち(複合)に進むしかない。

     --トレーニングは得意種目を伸ばしますか。それとも弱点強化に取り組みますか。

     渡部 ジャンプは体重が軽ければ軽いほどいい。ただ、スキー板の長さは身長と体重で決まり、長い板を使うには身長によって体重の下限が決まってきます。なるべく軽い方が浮くことができる。クロスカントリーは上半身のパワーも必要で体重は気にしなくていい。軽いけど力強いという状態を作らなければいけない。

     大橋 私たちは練習の中で自由形をベースに置くことが多いです。指導を受けている平井伯昌先生は他の3種目の練習もたくさんしますが、技術を身につければ自由形のベースの体力で泳げるという考えです。水泳は難しく、一般的には「1日休むと3日遅れる」と言われます。オフ明けの日は感覚が違う。今日は水をかけていないなとか。基本的にオフは週に1回でそれ以外は泳いでいます。社会人になって1人暮らしを始めたので、最近は栄養の勉強もしています。

     --体を動かす以外にメンタルトレーニングで取り組んでいることはありますか。

     渡部 僕らも走らない日を作ると、取り返すのに3日かかると言われています。でも、意外と持久力は落ちませんでした。そこでちょっと変えてみると、成績が出ました。完全に休みの日を作ったり、さまざまなパターンで体と頭のリフレッシュをしています。座禅、ヨガ……なんでもいいんですよね。

     大橋 自分の良かった時のレース映像は毎日見るようにしています。自分で言うのもなんですが、「いいレースをしたな」というような気持ちになります。「これ、結構直せるな」と気づくことも多い。気持ちを高めることもできます。

     --集中するために取り組んでいることはありますか。

     大橋 試合の日は寝っ転がって目をつむって音楽を聴いています。こういう動きをして、こういうターンをしてとか、このぐらいのタイムでいきたいとずっと考えて、という感じです。

     渡部 イメージする割合が多いですね。

     --試合で想定と違う場合は楽しめますか。

     大橋 私は心配性です。タイム的には勝てるだろうなというレースでも負けることを含め、いろいろなパターンを想定しています。背泳ぎのところで前に出られていたら、平泳ぎは落ち着いてなどと、準備します。

     渡部 僕はレースの準備はできないです。スタートしないと分からないので。インタビューは勝ち、負けの両方を考えています。それを(レース前の)夜に考えます。レースが終わった後に、こう振る舞おうとか。

     大橋 平昌五輪前のワールドカップ(W杯)での言葉を聞いて、「この人、強いんだろうな」と思いました。

     渡部 金メダルと連呼していたからかな。

     大橋 そうではないです。五輪前に負けた時がありましたね。そこで、「勝ってかぶとの緒を締めよということですね」と言われていて、すごいと思いました。この人、強いんだなと。

     渡部 たぶん、準備していたんだと思います。ある程度準備しているので。

     --4大会連続で五輪を経験した渡部選手から、初の五輪を目指す大橋選手へ何を伝えたいですか。

     渡部 自分が明確になりたい姿、出したい記録、結果を口に出した方がいいと思います。最初(の五輪)は17歳で勝負をできる実力もないし、世界では全くの無名でした。楽しかったけど目標もなく、戦えなかった。何大会も経験する中で、自分が目指しているものがあるなら口に出して伝えていかないと分かってもらえないと感じました。「言霊(ことだま)」と言いますが、発しているうちに段々と現実になるんだと思います。「金メダル」と言わないと、銀メダルすら取れない。「メダル取りたい」だと4位にしかならない。金に絞った方がいいですよ。銀しか取れない僕が送れるアドバイスです。

     大橋 フィギュアスケートの宇野昌磨選手は「五輪は一つの試合で、他とは変わらない」と言ってましたが、特別ですか。

     渡部 W杯は年間で競い、実力が一番出ます。だから、そこが世界一だと思って反発してきました。「別に五輪なんてたいしたことない」「W杯の方がすごい」と言ってきましたが、周りの選手はソワソワしだすし、メディアの数も増えてくる。大きな流れに逆らって泳ごうと思っても泳ぎ切れず、流されるしかない。特別は特別。五輪のインタビューで負けた時になんて言おうかなって考えている時点でダメですよね。心配性の自分を忘れ、みこしの上で踊っちゃおうと。良いことばかりを考えて、調子に乗った方がいいのではと思います。

     大橋 強気の発言の裏にも、そういう思いがあるのですね。

     渡部 あえて強気に発言したこともありました。本心ではない部分もあり、言いたくないけど五輪、五輪って言わないといけないと思いました。心の底から調子に乗らないと。「絶対金メダル取れる」と思わないと、銀止まりだと思います。頑張ってください。応援しています。


     ■人物略歴

    わたべ・あきと

     長野県白馬村出身。小学4年からジャンプ、中学から本格的に複合に取り組んだ。高校2年生だった2006年トリノから4大会連続で五輪に出場。14年ソチ、18年平昌と2大会連続で複合個人ノーマルヒル銀メダル。17~18年シーズンに初のW杯個人総合優勝を果たした。


     ■人物略歴

    おおはし・ゆい

     滋賀県彦根市出身。2人の姉の影響で、6歳から水泳を始める。昨年の日本選手権で個人メドレー2冠を達成し、初めて日本代表入り。世界選手権は女子200メートル個人メドレー銀メダル、女子400メートル個人メドレー4位。両種目の日本記録保持者。


     原則、第3火曜日に掲載します。

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