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Good Coach 2020への歩み:スタイル貫き バドミントン代表 朴柱奉監督

砂浜を走る選手たちを鼓舞する朴柱奉監督(左から2人目)=沖縄で2016年1月12日、小林悠太撮影

月刊東京五輪

スタイル貫き バドミントン代表 朴柱奉監督

 指導者が大切にしている理念や強化方法などを紹介する「Good Coach 2020への歩み」の3回目は、バドミントン日本代表の朴柱奉(パク・ジュボン)監督(54)。韓国代表の選手時代は「ダブルスの神様」と呼ばれ、五輪や世界選手権で金メダルにも輝いた朴監督は指導者としても経験豊富。04年に監督に就任し、日本を世界トップレベルへと押し上げた指導法を聞いた。【構成・小林悠太】

    「目標を持つことが必要だ」と訴える朴監督=東京・駒沢体育館で2018年11月29日、宮間俊樹撮影

    文化を理解し「マイウエー」貫く

     日本で指導する以前に英国とマレーシアでも代表コーチを務めました。大事なのは、それぞれの国の文化を理解した上で、マイウエー(我が道)でやることです。30%は譲りますが、70%は自分のスタイルを貫きます。英国とマレーシアでの経験が生きています。

     英国は所属クラブがなく、チームで強くなろうという発想がありませんでした。また、マレーシアはコーチと選手の距離が近すぎて、友人のようでした。

     日本では最初、選手が所属する実業団チームと衝突しました。私が監督に就任する前は、日本代表の合宿は年に1回、1週間だけでした。国・地域別対抗の団体戦前だけです。練習はそれぞれの実業団で行い、海外遠征に向かう空港で集合していましたが、代表チームで練習しなければ強くはなりません。

     監督になった後は、代表の合宿と遠征を年間200日ほど行いました。初めの頃は団体戦である選手を起用したところ、所属する実業団の監督から「なぜ、うちの選手を使うのか」と文句を言われ、驚いたこともあります。それでも、代表選手の選考や練習内容、出場する大会について、私は自分の考えを貫きました。以前はレベルの低い小さな大会を中心に出場し、世界ランキングのポイントを稼いでいましたが、それでは世界トップレベルとの差が分かりません。最初は負けても、レベルの高い大会に出るようにしました。

     一方で、実業団側にも配慮しました。海外遠征を終えた選手はすぐにチームへ戻しましたし、ダブルスのペアは同じ実業団同士にしました。韓国ではペアの組み合わせを代表監督が決められますが、日本の文化を尊重しました。現在は過去に教えた選手たちが引退し、実業団の指導者になり、より一層コミュニケーションを取りやすくなりました。

     練習では、基本を一番大事にしてきました。小柄な日本選手が勝つためには、フィジカルとコート内のスピードが必要です。そのため、私は選手にハードな練習を課しました。地道な練習を最大の集中、スピードで行う。同じ2時間の練習でも意識によって、厳しさは変わります。練習から試合の気持ちで取り組めれば、プレッシャーを克服できます。コート外でもプロ意識を持ち、栄養を取り、マッサージなどを受けて休養することも必要です。ケアを嫌うと故障につながります。試合だけを頑張っても、結果を出せません。

     私はメダルを二つ獲得した2016年リオデジャネイロ五輪を最後に監督をやめようかとも思いましたが、次の五輪の舞台は東京。私にとって日本は「セカンドホーム」。東京五輪で良い結果を出したいと思い、続けることにしました。日本は今、世界トップになりましたが、中国などとの差はほとんどありません。安心してしまえば、いつでも逆転されます。五輪選考レースがスタートする今春から、本当の勝負も始まります。

    バドミントン日本代表の強化方針などを説明する朴監督=東京・駒沢体育館で2018年11月29日、宮間俊樹撮影

    目標掲げ、己に厳しく

     私は現役時代、「この練習を乗り越えられなければ世界選手権で優勝できない」などと自らに言い聞かせて練習していました。練習で自分に負ければ、試合で相手に勝つことはできません。己に厳しくするためには、目標が必要です。目標があれば、つらくても「もう1回、もう1回」と思い、厳しい練習もできます。

     日本の選手たちは当初、目標を持っておらず、負けても落ち込む雰囲気がありませんでした。「世界で勝つ」と言い続け、負けた後にワイワイと話す選手たちに、「何が楽しいのか」と指摘したり、早々に敗退した男子選手たちを集めて「女子の応援で来たのか」と言ったりしたこともあります。

     以前は私が選手の背中を押していましたが、今は選手も私と同じ意識で世界一を目指しています。リオデジャネイロ五輪の金メダルが大きかったです。日本代表チーム全体が良いモチベーションを保てています。


     パク・ジュボン 韓国出身。1980~90年代に韓国代表として活躍した。世界選手権では男子ダブルスと混合ダブルスで計5回優勝。バドミントンが正式競技となった92年バルセロナ五輪では男子ダブルスで金メダル、96年アトランタ五輪は混合ダブルス銀メダルを獲得した。指導者としては97年から英国代表コーチを2年半、マレーシア代表コーチを約3年間務めた。04年アテネ五輪後から日本代表監督に就任。

    練習の合間に桃田賢斗(右)に声を掛ける朴監督=沖縄で2016年1月12日、小林悠太撮影