科学・テクノロジー
-
「黒い雨」定説覆した100歳気象学者 戦争の不条理、原動力に
2023/9/30 18:08 5408文字柔らかい日差しの中で、好々爺(こうこうや)が住民の証言を記したノートをめくっていく。ゆっくりとした話し方で、滑舌は明瞭だ。柔和な表情を崩さないが、話が核心に触れたのだろう。そんな時、まなざしが鋭くなる。肺炎をこじらせて5年前に入院した。左目の視力が落ち、小さい字はほとんど見えないが、記憶力は健在だ
-
ノーベル賞、今年の受賞者は誰? 注目の研究者をどう探すのか
2023/9/29 11:30 2033文字今年も10月2日の生理学・医学賞を皮切りに、ノーベル賞の発表が始まる。自然科学3賞では、メディアなどに有力視されている科学者の名前が挙がる。その中で、日本科学未来館(東京都江東区)と英国の情報会社が、どのように注目の科学者を探しているのかに迫った。 ◇科学コミュニケーターが解説 9月下旬、日本科学
-
日本はこの先もノーベル賞を取れますか?研究力浮上の鍵、候補の直言
2023/9/29 08:00 2103文字2023年のノーベル賞受賞者の発表が10月2日から始まる。日本はこれまで28人が受賞したが、この先も続くだろうか。多くの課題を抱える日本の研究環境の現状や進むべき道は。ノーベル化学賞候補にも名前が挙がる日本化学会常務理事の沢本光男・中部大特任教授(71)に聞いた。【聞き手・鳥井真平、写真・和田大典
-
気候革命
温暖化で広がる「デング熱」リスク 新たな媒介生物侵入の恐れも
2023/9/29 07:01 1783文字世界で感染者が年4億人に上るとされるデングウイルス。媒介する昆虫「ヒトスジシマカ」は、地球温暖化とともに分布域が北上し、日本国内では青森県内まで広がっていることが確認されている。今後、デングウイルスによる感染症「デング熱」の国内流行の恐れもあるとして、専門家は危機感を募らせる。 気候変動に伴い、蚊
-
気候革命
「最も人を殺す生物」が分布拡大 北の大地に迫る脅威
2023/9/29 07:00 2903文字北海道の南端部に位置する港町、函館市。8月22日、木や雑草が生い茂る公園の小道で、国立感染症研究所の研究者3人が流れる汗もそのままにじっと立っていた。8月下旬とはいえ、道内は猛烈な暑さが続いていた。記者が運転する車の外気温計を見ると34度となっていた。 気候変動に伴い、蚊が媒介する感染症のリスクが
-
-
サカナ新時代
カニ・イカ食べて個室生活 かなうか養殖 マダコとの知恵比べ
2023/9/28 08:00 2057文字7月中旬、記者が瀬戸内に浮かぶ百島(広島県尾道市)にある水産研究・教育機構の庁舎を訪れると、円柱状の容量500リットルの水槽の底には、6月上旬にふ化して指先ほどの大きさにまで育った多数のマダコがへばりついていた。マダコはふ化してしばらく水面を浮遊し、約25日後から底で暮らすようになる。「ふ化したマ
-
ノーベル賞級成果の施設でも 悪化する国内の研究環境に活路は?
2023/9/28 07:00 2215文字10月上旬に決まる今年のノーベル賞。2001年以降、自然科学3賞で日本からの受賞者は19人もいて、世界では2番目の多さだ。だが、喜んでばかりもいられない。国内では研究環境が悪化し、世界的な成果を出した機関でさえその例外ではなくなっている。日本が科学分野で存在感を保っていくには、何が必要なのか。 ◇
-
ネコにマタタビ、安全です 「依存性なし」と岩手大など研究発表
2023/9/28 04:15動画あり 1127文字猫の大好物と言えばマタタビ。でもマタタビに酔ったようになる猫の姿に「依存性はないの?」と心配する人もいるのではないだろうか。猫がマタタビに特異な反応を示す生物学的意義を研究してきた岩手大などのグループがこの疑問に答え、オンライン科学誌に論文掲載した。その成果とは……。 岩手大農学部の宮崎雅雄教授(
-
炭素繊維強化プラスチック 伝統地場産業の技で、リサイクルできた
2023/9/27 17:25 1438文字鉄よりも軽く、強い高機能素材の「炭素繊維強化プラスチック(CFRP)」。世界で注目される素材だが、現在は世界的に使用量が増え、利用後の廃棄物はほとんどが埋め立て処理されている。そこで愛媛県はある伝統産品の製造技術を活用してCFRPの廃材から炭素繊維を回収する技術を開発し、特許を出願している。その利
-
サカナ新時代
「話が違う」60年来の悲願マダコ養殖 餌を巡る研究者の葛藤
2023/9/27 08:00 1665文字日本の海での養殖は、戦前にアコヤガイやカキなど貝類でまず発展した。魚類養殖は1927年、香川県引田(ひけた)町(現・東かがわ市)で、ハマチやタイなどを養殖したのが最初といわれている。養殖技術の発展によって60年ごろから全国で活発になり、ブリ、マダイ、フグなどに加えて、研究開発によってクロマグロなど
-
-
南極でノーベル賞級成果 国際チーム参加の研究者が語る、物理の魅力
2023/9/26 06:00 2277文字地球からはるかかなた、銀河系の外にある巨大なブラックホールなどで発生し、その後地球に飛んでくる粒子を南極で観測しようとする国際共同プロジェクトが進められている。その名も「アイスキューブ」。研究チームは2021年3月、銀河系の外から届いた「高エネルギー反ニュートリノ」という素粒子を初めて観測したと発
-
福井大査読偽装 「国ガイドラインの改定を」学術会議が報告書
2023/9/25 19:02 698文字福井大教授が千葉大教授など複数の研究者と協力し、投稿した学術論文の査読に自身が関与する「査読偽装」をした問題で、日本学術会議は25日、「研究不正に関する国のガイドラインの改定や内容の追加を検討すべきだ」などとする報告書を公表した。 査読とは、学術誌に投稿された論文をその分野の別の専門家が読んで内容
-
森と海からの手紙
自然の恵みと「鉄都」 釜石が伝える栄枯盛衰
2023/9/25 11:43 1849文字「鉄は国家なり」。19世紀にドイツを武力統一した宰相、ビスマルクの言葉である。軍事増強に欠かせない鉄の生産は、国力の源とされた。 三陸の海に面する岩手県釜石市。山峡の地にあった寒村が、「鉄都」と呼ばれるに至る背景には、1853年の黒船来航で開国を迫られる中、大砲づくりのための洋式溶鉱炉の建設を急務
-
針が振り切れた激震から100年 次世代観測はスマホも一役?
2023/9/21 10:00 1879文字その瞬間、すすをまとった真っ黒な紙に、激しい波形が刻まれた。1923年9月1日、10万人以上の犠牲者を出した関東大震災だ。 それから1世紀、地震計は進化を重ねた。近い将来、今この記事をスマートフォンで読んでいるあなたの手元から、新たな地震観測の世界が開かれるかもしれない。 スマホや民間インフラを活
-
北大、論文データ捏造・改ざん認定 大学院理学研究院教授らチーム
2023/9/20 19:11 207文字北海道大は20日、札幌市内で記者会見し、大学院理学研究院の沢村正也教授らの研究チームが米科学誌に発表した論文にデータの捏造(ねつぞう)や改ざんがあったと認定したと明らかにした。 論文は触媒開発に関する内容で、2020年8月に米誌サイエンスで発表。その後、使用したデータに不自然な部分があることが判明
-
-
日本の2人に論文引用栄誉賞 英情報会社「ノーベル賞級」と評価
2023/9/19 19:48 430文字英情報会社クラリベイトは19日、論文の引用回数が非常に多く「ノーベル賞級」と評価できる成果を出した研究者23人を発表した。日本からは、睡眠と覚醒に関わる物質を発見した筑波大国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢正史機構長(63)と、体内で薬を運ぶ新技術を開発した川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセ
-
本州初の「クラカケエビス」 中学生が発見、論文も執筆 和歌山
2023/9/19 14:00 886文字和歌山県串本町で昨年12月、和歌山市の中学生がイットウダイ科の夜行性の魚「クラカケエビス」を発見した。見つけた経緯や個体の特徴などを専門家のチェックを経た査読付きの論文にまとめて報告。標本が海南市船尾の県立自然博物館で展示されている。同館によると、国内では土佐湾以南で分布が確認されているが、本州で
-
柿食えば コレステロール 減らすなり 「たねなし柿」で実証
2023/9/16 12:30 791文字和歌山県農業協同組合連合会(JA県農)などは、県産柿の主力である「和歌山のたねなし柿」に含まれる柿タンニンに悪玉(LDL)コレステロール値の低減作用があることを臨床試験で実証したと発表した。機能性表示食品としての消費者庁への届け出が8月に完了し、柿消費拡大対策事業協議会の沢井壮平会長らは「新たな付
-
電流流れる箸などで味覚変化 日本人に17年連続イグ・ノーベル賞
2023/9/15 12:35 280文字ユニークな科学研究などに贈られる「イグ・ノーベル賞」の受賞者が日本時間の15日に発表され、明治大の宮下芳明教授と東大大学院の中村裕美特任准教授が「栄養学賞」を受賞した。 日本人のイグ・ノーベル賞受賞は17年連続。2人は、微弱な電流を流した箸やストローを開発し、舌に電気の刺激を与えると味覚がどのよう
-
日本の研究、米国など「後追い」1年半遅れ 論文7100万本分析
2023/9/15 07:00 817文字日本の研究者がある研究テーマに取りかかる時期は、世界の最先端から平均1年~1年半程度遅れているとの分析結果を、東京大などの研究チームが英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表した。日本全体で研究力の低下が指摘されているが、研究テーマ選びでも米国などの「後追い」になっている現状が明らかになっ
-