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地球温暖化に伴う海面上昇で河口域や低地が浸水した場合の被害額は、今世紀末に世界全体で約4820億ドル(約52兆5000億円)になるとの試算を、茨城大などの研究チームがまとめた。被害軽減の適応策として高さ1メートルの堤防を整備すると、費用は最大2030億ドル(約22兆1000億円)かかるが、被害額は6~7割に抑えられる。気候変動の国際専門誌電子版に掲載された。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書によると、効果的な温室効果ガス削減策を取らずに温暖化が進むと、今世紀末に海面水位は1986~2005年比で26~82センチ上昇すると予測される。
チームによると、2100年に海面が約50センチ上昇した場合、大潮の満潮時の浸水面積は世界全体で最大約42万平方キロに及ぶと予測された。中国・上海を含む長江デルタやベトナム・メコンデルタなどで浸水域が拡大する可能性が高く、最大約1億600万人が影響を受け、インフラや農業などへの被害は1690億~4820億ドルに上る。
適応策として堤防の建設・管理費や効果を試算。浸水が予測される場所に現在の海面から高さ1メートルの堤防を新設する場合、被害額は1100億~3290億ドルに抑えられた。既に整備されている地域もあり、実際の総費用は下回るとみられる。チームの田村誠・茨城大准教授(環境政策論)は「堤防などインフラの耐用年数は長いため、更新、新設時のコストだけではなく、数十年先の温暖化の影響も考慮して計画すべきだ」と話す。【大場あい】