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4月5日 施設慣れ

 英語で「institutionalized(インスティチューショナライズド」。1994年のスティーブン・キング原作のアメリカ映画「ショーシャンクの空に」で「施設慣れ」と吹き替えられていた言葉です。

     ショーシャンク刑務所に50年間服役していたブルックス老人は、出所が許されて自由を手にしたはずなのに、塀の外の社会に適応できずに自ら命を絶ってしまう。納得できない若い囚人たちに「ブルックスは刑務所の中なら知識や経験が豊富でみんなに尊敬されるが、外ではただの前科者でしかない」と古株のレッドが説明します。

     31年前、僕が毎日新聞に入社して、点字毎日部のあった大阪本社に配属されたときのことです。今はなき堂島社屋は夜になると正面玄関が閉まってしまうため、朝刊の締め切りで戦争のような編集局の中を突っ切って通用門から外に出なければなりませんでした。おそるおそる白杖(はくじょう)で出口を探りながらもたもた歩いていると、修正原稿を持って走り回っていた記者たちから「邪魔だ! どけどけ」と怒鳴られました。

     日本で唯一、目の不自由な人たちのための週刊点字新聞を発行する部署のある新聞社の建物と思っていた僕にとっては、意外な光景でした。ところが実は怒りや悲しみ、失望感などとは真反対に自分がかわいそうな障害者としてではなく、対等な人間として扱われたような喜びを感じました。

     障害のある人もない人も同じように参加できる共生社会を実現するためには、障害者専用の施設を早く無くすべきだと僕は考えています。そうすれば障害者を狙った不幸な犯罪も防げるのではないでしょうか。そのためには当事者が慣れきった生ぬるい施設から飛び出す勇気が必要だと思います。【岩下恭士】