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<ユニバーサルツーリズム>全盲記者がハワイで軽飛行機を操縦--ワシン・エアが夢を実現

 軽飛行機の操縦免許を持たない視覚障害者も機長席で操縦かんを握ってハワイ上空の飛行体験を楽しめる、ユニバーサルデザインの旅行企画が静かな人気を呼んでいる。軽飛行機の操縦体験と遊覧飛行を旅行者向けに実施しているワシン・エア(本社・米ホノルル)の体験型プログラムだ。

     1997年の創業以来、5万7000回以上のフライト実績を持つ同社はパイロットをはじめ、スタッフ全員が日本人。オフィスは昨年ダニエル・K・イノウエ空港に改名した旧ホノルル国際空港に隣接しており、エアバスA300やボーイング767など大型機が離着陸する合間をぬって、単発機の操縦かんを操る体験はスリリングそのもの。所ジョージさんや田中美保さんら芸能人の利用も多い体験操縦。1日3回、ワイキキ、アラモアナ周辺の宿泊ホテルまでの無料送迎も受けられる。

     航空法の厳しい日本国内では考えられないことだが、アメリカでは操縦免許を持つ教官が同乗していれば、誰でも機長席で操縦かんを握って、本物の飛行機操縦が楽しめる。6月に記者が体験したのは4人乗りの単発プロペラ軽飛行機パイパー社製のアーチャーPA-28。操縦席の天井に主翼があるセスナ機と違ってパイパーの軽飛行機はすべてゼロ戦のように主翼が操縦席の下側にある。

     操縦席に乗り込む前にまず、外側から機体を触らせていただいた。タイヤはゼロ戦のような尾輪式ではなく前輪式で、セスナ機と同じ固定脚であることが分かった。主翼の両端には旋回時に使うエルロンと呼ばれる補助翼、内側には上昇下降時に使うフラップがあった。実物の飛行機の機体に触れる機会はなかなかないので、飛行機が飛ぶ仕組みが分かってこれだけでも大変興味深かった。見えない者なりの旅を満喫するには事前準備も必要だ。今回の旅行では、ハワイ・オアフ島上空を飛ぶためにアメリカの点字出版社から地形が触って分かる点字の立体触地図を取り寄せた。上空を通過するダイヤモンドヘッド周辺の海岸線や狭い水域が深く入り組んだ真珠湾の地形が想像できるからだ。

     初日の単発機体験操縦30分コースと2日目の同60分コースでワイキキビーチからダイヤモンドヘッド、高級住宅街のカハラ、オアフ島北端のノースショアからサーフィンで有名なサンセットビーチ、そして真珠湾上空を飛行する。

     「右にダイヤモンドヘッドが見えてきました。地上からだと分かりませんがこれ、クレーターなんですよ」

     隣の副機長席から説明してくれたのは、FAA(米連邦航空局)が発給する操縦免許を取得するために渡米、ハワイ在住25年の小倉正裕・同社代表(52)だ。

     タクシングと呼ばれる地上走行のあと、ヘッドホンのマイクに向かって小倉さんが「パイパー18ズル、テイクオフ・ランウェイ・ストレートアウト・ディパーチュア」と呼びかけると、管制官から離陸許可が伝えられた。

     「スロットルいっぱいに押し込んでください」と言われたので、操縦かんから右手を離して、スロットルを前方に倒した。エンジン音のピッチが上がり、機体が大きく上昇していることが分かった。

     「いいですよ。そのまま60ノット(約111キロ)を維持しましょう」

     2日間、計90分の飛行で最高時速110ノット(約203キロ)、最高高度2000フィート(約600メートル)を体験することができた。【岩下恭士】

    動画:飛行前に機体を触って確認する記者(提供映像)