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10月11日 惑星

 8日に東京芸術劇場で開かれたアマチュアオーケストラ新交響楽団第239回演奏会(湯浅卓雄・指揮)で、イギリスの作曲家、ホルストの組曲「惑星」を聴いた。40年以上前、12歳のときに自分の小遣いで初めて買ったレコードがレナード・バーンスタイン指揮、ニューヨーク・フィルハーモニックが演奏するこの曲だった。火星、金星、水星、木星、土星、天王星、そして海王星の太陽系の7惑星をタイトルにした7曲からなるこの曲、中でも「木星(ジュピター)」は平原綾香さんがボーカルでカバーして大ヒットしたのでご存じの方も多いと思う。

     だがこの曲、オーケストラの生演奏で聴けるチャンスはなかなかない。ホルン6本、オルガンにハープ2台、チューブラーベル、グロッケンシュピール、チェレスタなどが入る大編成のオーケストラに加えて、最後の海王星1曲のために女性コーラスまでそろえなければならないからだ。土星と海王星ではバスオーボエやアルトフルートといった珍しい楽器も登場する。フルートとアルトフルート、それにピッコロなど木管楽器歴40年のアマチュア笛吹きとしてはフルートのハーモニーが美しい金星と土星、海王星の3曲がお気に入りだ。

     当日、土星の冒頭部分ではガチョウの鳴き声のようなやや滑稽(こっけい)な音色が特徴的なバスオーボエを確認できておもしろかった。海王星ではアルトフルートのくぐもった低音が広大な宇宙の暗黒や神秘を効果的に表現していると感じた。トランペットなどに比べると全然目立たない楽器だが、海王星のフィナーレでは女性合唱と一緒に下降音階を奏でるソロが光っていた。

     昨年創立60周年を迎えた新交響楽団、通称「新響」。「アマチュアオーケストラ」と自称しているが、演奏を聴く限り素人という意味ではない。メンバーの中には音楽を本業とする人もおり、会社員や教員、学生などさまざまだが演奏レベルは決してプロの楽団に劣らないと感じる。「誰にでも音楽を楽しむ機会を」というのが創立以来のモットーという。

     もう一つうれしいのは、バリアフリーの研究者だったOBのビオラ奏者、岡本明さん(筑波技術大学名誉教授)の提案で2006年から始まった点字のプログラムだ。年4回の定期演奏会では毎回ホール入り口の受付で訪れた視覚障害者に点字のプログラムを配ってくれる。演奏者の視点で団員が執筆する曲目解説はホームページでも読めるけれど、演奏を聴きながら楽器編成を指で確認できるのはうれしい。点訳はトランペットの小出さんとクラリネットの末村さんが担当してきたが、今回からビオラ担当の20代の女性も加わった。演奏会の練習だけでも大変なのに、点訳にも熱心な皆さんに頭が下がる。

     最後に今後の演奏曲目でリクエストを一つ。今回も早坂文雄「左方の舞と右方の舞」や黛敏郎「曼荼羅交響曲」といった、ほとんど聴くことのない邦人作曲家の作品を取り上げていて大変興味深かった。そこでぜひ武満徹の管弦楽曲「ノベンバー・ステップス」を取り上げてほしい。【岩下恭士】