メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ユニバ・トーク

7月11日 ヒアリング

 6年前に変形性股関節症が進行して歩けなくなり、両足の全人工股関節置換術を受けた。ぼろぼろになった股関節の骨を取り除いて、代わりに金属(チタン合金)を埋め込む手術だ。全盲の視覚障害に加えて車いす使用かと正直、真っ青になった。ところがその後、和室に座るのはさすがに苦手だが、それまで痛みをこらえていた階段の上り下りなどは信じられないくらい楽になった。「ゴルフや登山を楽しんでいる人もいますよ」と整形外科の主治医に言われて、僕も昔得意だった水泳を始めた。

     というわけで現在僕は視覚障害1級に加えて肢体障害2級の重複障害者で、介護保険サービスでは要支援1級と認定されている。これを聞くとかなり日常生活に制約を受けているような印象を持つ人もいるかもしれないが、現実には一人暮らしをしながら毎日、白杖(はくじょう)を使って一人で電車に乗って会社に通勤している普通のサラリーマンだ。

     さて問題なのは、保険サービスを受けるための受給資格認定調査というものがあって毎年、この身体状態について居住地の地域包括支援センターのケアマネジャーに同じ説明を繰り返さなければならないことだ。

     ヒアリングではまず調査員から「身体動作をチェックさせてください」と言われて、両腕と両足の上げ下げ、起立と着席、室内歩行などを求められる。

     続いて日常生活についての調査ということで、入浴やトイレ、食事は介助なしでできるのか、着替えや就寝時の寝返り、果ては爪切りはやすりをかけるだけなのかなどについて詳しく説明を求められる。

     毎年別の人間が来るならまだ分からなくないものの、同じ人間が昨年と同じことを聞いてくるからたまらない。食事は自炊もするし、外食も楽しめるが、同行援護サービスを希望するのは、ガイドヘルパーにスーパーで魚や野菜など生鮮食品でその日においしそうな商品を見つけてもらいたいためであること、一番困っているのは、郵便物を自力でチェックできないことであることを、再度、訴えた。

     最後に「では確認します。今の季節は春、夏、秋、冬のいつですか?」と聞かれたので、思わずいたずら心が刺激されて「はい、冬です」ともっともらしく答えると、「エーッ? 本当ですか?」と真剣に驚くので、慌てて「ジョークですよ!」と言い返した。だいたい、初対面から新聞記者の仕事をしていることも説明しているのに、どうしてあたかも認知症の老人でも相手にしているかのような質問を繰り返すのか、全く理解に苦しむ。次回のヒアリングでは、今後のために動画を撮っておこうか?

     ちなみに、介護保険サービスの要支援1とは▽居室の掃除や身のまわりの世話の一部に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする▽立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えを必要とすることがある▽排せつや食事はほとんど自分ひとりでできる--など。

     要支援2は▽身だしなみや居室の掃除などの身のまわりの世話に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする▽立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えを必要とする▽歩行や両足での立位保持などの移動の動作に何らかの支えを必要とすることがある▽排せつや食事はほとんど自分ひとりでできる--となっている。【岩下恭士】