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ユニバ・リポート

オーストラリアの読字障害への取り組みを紹介--東京で出版アクセシビリティーセミナー

写真=オーストラリア出版者協会のサラ・ランシーさん

 アクセシビリティーに配慮したオーストラリアの出版政策や読みやすい日本語組み版を紹介するセミナーが1日、アドバンスト・パブリッシング・ラボラトリーの主催で東京都千代田区で開催された。同団体は読むことに障害のある人を含む、誰もが読みやすい出版の未来を考える団体として、慶応大SFC研究所と講談社など大手出版4社が設立した。

     冒頭、2016年9月に発効した一般の活字書籍を利用できない視覚障害者などの読字障害者に対して、点字・録音・大活字・電子版など利用可能なメディアへの複製を保証したマラケシュ条約をいち早く批准したオーストラリアの取り組みを、オーストラリア出版者協会のサラ・ランシーさんが紹介した。マラケシュ条約は読字障害者のアクセスを可能にするために例外的に著作権を制限するものとして、アクセシビリティーに配慮した出版物が商業出版されている場合は適用されないことなどを説明した。

     オーストラリアでは同条約の成立以前から一部アクセシブルな出版物はあったものの、重複制作されていることやフォーマットの不統一など課題が多かったことを説明、マラケシュ条約の成立で障害者団体と出版社、教育機関などが一堂に会して協力し合える環境が整ったことを評価した。最後に日本の出版社に対しては「アクセシビリティーは戦略的投資。新たな読者を開拓すること」とアピールした。

     会場との質疑では、「全盲者からのリクエストでは音訳よりもプレーンテキストの電子版を望む声が強い」として、キーワード検索も可能な総ルビシステムの重要性が確認された。

     なお日本政府は欧州連合(EU)と並んで、10月1日に、マラケシュ条約の加入書を世界知的所有権機関(WIPO)事務局長に寄託しており、19年1月1日から日本国内において同条約が発効される。

     一方、学習障害の一つ、ディスレクシア(読字障害)当事者の立場から自身の学習体験を大学生の小沢さんが紹介した。08年に施行された教科書バリアフリー法で導入が始まったデイジー教科書のモニターに参加したことや、平仮名の読解が苦手で、ルビよりも音声の方が分かりやすい自身の特性に触れ、母親の読み聞かせに加え、自宅ではパソコンやiPadの読み上げ機能も使ったことなどを説明した。

     小沢さんは「(読み上げ部分をカラオケのようにハイライト表示する)デイジー教科書のおかげで読み上げ速度を2倍にし、自力で学習することできた」として、「ハリー・ポッターシリーズはデイジー音訳図書で楽しんだが、原本も購入した。決して出版社はデジタル化で不利益にはならない。入試でもデイジー版での出題を認めてほしい」と訴えた。【岩下恭士】