
ベテラン映画記者が一本の映画をさまざまな視点から論評を加えます。チャートの裏側も紹介。
-
シネマの週末・この1本
シング・ア・ソング!笑顔を咲かす歌声 銃後の思い託すポップ
2022/5/20 13:05 1320文字2009年、英国はアフガニスタンでの対テロ戦争に参加して、多くの兵士が戦地に送られた。基地で夫や恋人の帰りを待つ女性たちが、不安を紛らすために合唱団を結成する。実話を基にした物語を、「フル・モンティ」のピーター・カッタネオが監督して映画化。 合唱団のまとめ役のリサ(シャロン・ホーガン)と、お目付け
-
シネマの週末・トピックス
ワン・セカンド 永遠の24フレーム
2022/5/20 13:05 568文字中国の名匠チャン・イーモウが、文化大革命時代の1969年を背景に撮り上げたノスタルジックな味わいのドラマである。強制労働所を脱走した男(チャン・イー)が、砂漠地帯の小さな村にやってくる。彼の目的は、生き別れた娘の姿が映っているというニュース映画を見ること。そこで男はたくましい孤児の少女(リウ・ハオ
-
シネマの週末・トピックス
ハケンアニメ!
2022/5/20 13:05 570文字アニメの新人監督、瞳(吉岡里帆)は念願のデビューを果たすが気合が空回りし、制作現場は重い空気に包まれる。瞳を起用したプロデューサーの行城(柄本佑)はビジネス最優先だ。そんな時、天才監督と呼ばれる王子(中村倫也)が復帰。彼の復活にかけるプロデューサーの香屋子(尾野真千子)は王子のわがままに振り回され
-
シネマの週末・チャートの裏側
「シン」が与える高揚感
2022/5/20 13:05 550文字「シン・ゴジラ」は、定型化されたゴジラシリーズの物語、描写の枠組み双方で新たな展開を見せ大ヒットした。「シン・ウルトラマン」もまた、同様の試みへの期待感があり、大ヒットのスタートである。最初の3日間の興行収入9億9000万円は、「シン・ゴジラ」を超える。 なぜ人は「シン」というタイトルをもつ邦画大
-
シネマの週末・この1本
流浪の月 生身で示す静かな激情
2022/5/13 13:10 1341文字李相日監督の映画は、すべてが濃い。「悪人」「怒り」と人間の奥底に渦巻く激情を解剖してきたが、凪良ゆうの小説を映画化した6年ぶりの新作では、「禁断の関係」が成就されるまでを密度と粘度高く描く。剛腕に圧倒されること必至である。 大学生の文(松坂桃李)は、公園で行き場をなくしていた10歳の更紗(さらさ)
-
-
シネマの週末・トピックス
マイ・ニューヨーク・ダイアリー
2022/5/13 13:10 581文字1990年代のニューヨーク。作家志望のジョアンナ(マーガレット・クアリー)は老舗の出版エージェンシーに就職。マーガレット(シガニー・ウィーバー)のもとで、編集アシスタントとして働くことになる。彼女に任されたのはJ・D・サリンジャーへのファンレターを読み、定型文の返事を書くこと。さまざまな人生が透け
-
シネマの週末・トピックス
夜を走る
2022/5/13 13:10 595文字故大杉漣の最後の主演作「教誨(きょうかい)師」(2018年)の佐向大監督、4年ぶりの新作だ。主人公は郊外の鉄くず工場で働きながら、うだつの上がらない日々を送るアラフォー独身男の秋本(足立智充)。要領のいい妻子持ちの後輩、谷口(玉置玲央)は、なぜかそんな秋本のことを気にかけていた。ある夜、思いがけな
-
シネマの週末・チャートの裏側
無限の宇宙に果てなき夢
2022/5/13 13:10 548文字米国のマーベルコミックを原案とするマーベル映画は、「スパイダーマン」と「アベンジャーズ」の両シリーズが、興行のピークを作ってきた。新型コロナウイルスまん延以前の話だ。以後では、マーベル映画はこれまで6本。最大ヒットは、やはり「スパイダーマン」だった。 そのマーベル映画の新作が、「ドクター・ストレン
-
シネマの週末・この1本
マイスモールランド 隣に生きる難民の鼓動
2022/5/6 13:05 1341文字戦火を逃れたウクライナからの避難民を政府が受け入れ、「準難民」なる新制度も検討するという。困難にある人がいち早く救われたのは本当によかった。しかしそれなら、助けを求めて来日しながら長い間非人間的扱いを受けている、難民申請中の人たちの救済だってできるのではないか。「マイスモールランド」は、日本にいる
-
シネマの週末・トピックス
不都合な理想の夫婦
2022/5/6 13:05 584文字ニューヨーク在住の裕福な英国人貿易商ローリー(ジュード・ロウ)が、さらなる成功を求めてロンドンに移り住む。しかし野心が先走ったローリーのビジネスは破綻し、米国人の妻アリソン(キャリー・クーン)や多感な子供たちとの軋轢(あつれき)も表面化していく。 ブラックマンデー前年の1986年を背景に、資本主義
-
-
シネマの週末・トピックス
ツユクサ
2022/5/6 13:05 579文字50歳目前の芙美(小林聡美)は小さな港町で1人暮らし。同僚で友人の直子(平岩紙)や妙子(江口のりこ)の他、直子の息子航平(斎藤汰鷹)とは大の仲良しだ。ある日、芙美が運転する車に隕石(いんせき)のかけらが衝突。そして、草笛を上手に吹く篠田(松重豊)と出会い、親しくなっていく。 きちんと整えられた部屋
-
シネマの週末・チャートの裏側
客層を広げる道は
2022/5/6 13:05 553文字ゴールデンウイーク(GW)という言葉は映画界から生まれた。よく知られていることだ。これを踏まえるなら、大型連休時には、年代も階層も違う多くの人たちが映画館を訪れてほしい。映画界発の言葉には、そうした意味が込められていたと思うが、近年ではそうなっていない。 データを見る。2015年から21年まで(2
-
シネマの週末・この1本
パリ13区 求めて揺らぐ今の青春
2022/4/22 13:08 1349文字華やかなパリのイメージと異なり、再開発で高層マンションが並び多文化多人種の人が暮らす13区。時代のリアルな空気感が洗練されたモノクロ画面に映える。デジタルネーティブ世代の赤裸々で生々しい息づかいが聞こえてくる新たな感覚の青春映画だ。 コールセンターで働く台湾系仏人女性のエミリーは、アフリカ系仏人男
-
シネマの週末・トピックス
カモン カモン
2022/4/22 13:08 583文字ラジオジャーナリストの独身男ジョニー(ホアキン・フェニックス)が、ひょんなことからロサンゼルスに住む妹の息子ジェシー(ウディ・ノーマン)の面倒を見ることに。しかし9歳の甥(おい)っ子との共同生活は、予測不能のトラブルの連続。それでも少しずつジェシーと心を通わせたジョニーは、彼をニューヨークでの仕事
-
シネマの週末・トピックス
ベルイマン島にて
2022/4/22 13:08 578文字スウェーデンが生んだ巨匠、イングマール・ベルイマン監督が愛したフォーレ島。映画作家として認められて間もないクリス(ヴィッキー・クリープス)と、既に名のある監督のトニー(ティム・ロス)が、この島にやって来る。 停滞感を抱いている2人が、夫婦のすれ違いを描いた「ある結婚の風景」の撮影が行われた家でひと
-
-
シネマの週末・チャートの裏側
神髄染み渡り どよめき
2022/4/22 13:08 555文字映画が終わり、館内に照明が差し込むと、客席からちょっとしたどよめきが起こった。映画の神髄が観客の全身に染み渡り、その素直なリアクションがどよめきに至る。映画の醍醐味(だいごみ)がこれで、めったにあることではない。心地よくなった。いつもと同じ光景と言うべきか。 「名探偵コナンハロウィンの花嫁」である
-
シネマの週末・この1本
ハッチング 孵化 怪鳥を育む思春期の陰
2022/4/15 13:05 1333文字◆ハッチング 孵化(ふか) 大自然に囲まれたきれいなおうちで暮らす少女が、森の中で卵を発見。やがて少女がベッドでひそかに温めた卵からは醜い怪鳥のひなが生まれ、大事件を巻き起こす……。 そんなおとぎ話のような導入部からして引き込まれる本作は、珍しいフィンランド産のホラー映画。北欧らしい澄みきった空気
-
シネマの週末・トピックス
ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード
2022/4/15 13:05 562文字元一流ボディーガード、マイケル(ライアン・レイノルズ)は、過去の失敗のトラウマを癒やすために銃を使わないと誓っている。詐欺師のソニア(サルマ・ハエック)は切れると暴れ、何をするか分からない。ソニアの夫で殺し屋のダリウス(サミュエル・L・ジャクソン)は、マイケルの天敵だ。そんな3人が、EUにサイバー
-
シネマの週末・トピックス
ふたつの部屋、ふたりの暮らし
2022/4/15 13:05 577文字南仏モンペリエのアパルトマンの最上階で、向かい合う部屋に暮らすニナ(バルバラ・スコバ)とマドレーヌ(マルティーヌ・シュバリエ)。2人は長年ひそかに愛し合ってきた恋人同士で、部屋を売ってローマへ移住することを考えていた。しかし、マドレーヌは子どもたちに真実を伝えることができず、突然脳卒中で倒れてしま
-
シネマの週末・チャートの裏側
魔法が映す時代の深部
2022/4/15 13:05 560文字「ファンタスティック・ビースト」の新作が、最初の3日間で興行収入10億6000万円を記録した。大ヒットにして重要な点がある。新型コロナウイルス禍以降の洋画のスタートでは、2番目に数字が高かったことだ。洋画興行に少しずつ光が差してきた。意味ある作品である。 本作はハリポタシリーズの前日譚(たん)とい
-