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太宰治が訴えた「終わらない戦争」 「トカトントン」を読み解く/下
2022/7/5 15:00 2353文字ロシアによるウクライナ侵攻が続いている。多数の民間人が亡くなり、あるいは難民となっている様子が報道されている。第二次世界大戦の被害者を長年取材している私は、当然ながら少しでも早く平和が戻ってほしいと願う。同時に懸念するのは「戦後」のことだ。戦闘が終わっても戦争被害はなくならない。心と体の傷が、むし
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迎撃準備地に舞台移した太宰治 「トカトントン」を読み解く/中
2022/6/28 13:00 2322文字1970年に公開された名作映画「ひまわり」。半世紀以上が過ぎた今、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて再注目されている。作中で肝となる、鮮やかなヒマワリ畑のシーンがウクライナで撮影されたものだからだ。ビットリオ・デ・シーカ監督、ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニの共演。冷戦ど真ん中の時代
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太宰治が描いた終戦後の若者の苦悩 「トカトントン」を読み解く/上
2022/6/19 12:00 2706文字6月19日は作家、太宰治(1909~48年)の誕生日だ。そして、入水自殺した太宰の遺体が見つかった日でもある。戦争にまつわる傑作を取り上げる本連載、今回は太宰晩年の短編小説である「トカトントン」(新潮文庫「ヴィヨンの妻」などに収録)を取り上げる。戦闘は終わっても、戦争は続く。そんな「未完の戦争」の
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「人間機雷」に配置された城山三郎が見た、忘れられない光景
2022/5/23 16:30 3278文字ロシアによるウクライナ侵攻がそうであるように、戦争は抵抗するすべのない民間人に多大な被害を及ぼし、その傷痕は広く長く残る。第二次世界大戦は77年前の夏、大日本帝国の敗北で終わった。しかし戦争の産物は今も私たちの周りに多数ある。たとえば沖縄の米軍基地問題。ロシアが返さない北方領土。自民党が改正を悲願
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「戦争を書くために作家に」 城山三郎「一歩の距離」を読み解く
2022/5/22 16:00 2522文字第二次世界大戦は77年前の夏、大日本帝国の敗北で終わった。しかし戦争の産物は今も私たちの周りに多数ある。たとえば沖縄の米軍基地問題。ロシアが返さない北方領土。自民党が改正を悲願とする日本国憲法に、中国や韓国との歴史認識問題――。日本の現代史は戦争無しには語ることができない。ノンフィクションや小説な
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「朝鮮人虐殺6000人を否定」のむなしさ 森健さんが見た集会とは
2021/12/19 07:00 2978文字9月1日、東京都墨田区で行われた関東大震災の朝鮮人犠牲者追悼式。その隣では、「朝鮮人6000人虐殺はなかった」と主張するグループが別の集会を開いていた。「『つなみ』の子どもたち 作文に書かれなかった物語」などの著書があるジャーナリストの森健さん(53)が当日の様子を初めて取材した。森さんの目に映っ
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終戦の見通し甘かった為政者たちの「失敗」 後世に残した教訓とは
2021/12/9 07:01 4218文字3年8カ月に及ぶ太平洋戦争により、300万人以上の日本人が命を落とした。敗戦の結果、国は崩壊し歴史上初めて外国に占領された。戦争の後遺症に苦しむ人は今も多く、海外で倒れた人の遺体と遺骨100万体以上が行方不明のままだ。さらに周辺諸国との歴史認識や戦後補償問題など、外交面でも多大な負の遺産を残してい
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米国への通告前に真珠湾奇襲 国際法違反をあえて選んだか
2021/12/8 07:00 3110文字1941年12月8日、大日本帝国海軍の機動部隊が米ハワイの真珠湾を奇襲し、太平洋戦争が始まった。日本側は、攻撃直前に「最後通告」の文書を米側に渡すつもりだったが、実際は開始後となった。国際法に反する行動であり、今日に至るまで「だまし討ち」と批判されている。在ワシントン大使館の歴史的失態ということに
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常夏通信
その122 戦没者遺骨の戦後史(68)遺骨の帰還求める声に応えよ
2021/12/2 10:00 2943文字東京都心から1250キロ南の硫黄島では、米軍との戦闘で日本軍守備隊およそ2万1900人が戦死した。福岡県・昭代村(現柳川市)出身の近藤龍雄さんはその一人。遺族は昨年、遺骨の帰還を願い厚生労働省にDNA鑑定を申請していた。その返事が今夏、あった。遺族が提出した検体と、政府が保管していた遺骨との間に、
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常夏通信
その121 戦没者遺骨の戦後史(67)「軍人優先」の遺骨収容でいいのか
2021/11/25 10:00 2211文字厚生労働省のホームページには「地域別戦没者遺骨収容概見図」という資料が掲載されている。海外で亡くなった240万人(多くが軍関係者)について、地域別の戦没者と収容された遺骨の数が掲載されている。そのうち政府は国の事業としてこれまでに127万6000体を収め、今後も継続する方針だ。だが、これまで国が進
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常夏通信
その120 戦没者遺骨の戦後史(66)民間人戦没者の遺骨収容は?
2021/11/18 10:00 2121文字第二次世界大戦により海外で亡くなった日本人はおよそ240万人。厚生労働省によれば、そのうち「相手国側の事情で収容困難」な遺骨は23万体だ。その多くが主に中国の旧満州(現中国東北部)で、北朝鮮も2万体以上が今も現地で眠っている。旧満州と北朝鮮には共通点がある。いずれもかつては日本の植民地であり、多く
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常夏通信
その119 戦没者遺骨の戦後史(65) 中国で遺骨調査が進まぬ訳
2021/11/11 10:00 2304文字2016年に議員立法で成立した戦没者遺骨収集推進法は、遺骨収容を初めて「国の責務」と明記した。同法が目指すのは「集めて終わり」ではない。遺族に返すことだ。海外で亡くなった日本人240万人のうち、収容されたのは今年9月末現在で127万6000体。未収容が112万4000体ということになるが、厚生労働
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常夏通信
その118 戦没者遺骨の戦後史(64)「国の責務」でも収容されない
2021/11/4 10:00 2886文字敗戦から70年後の2015年9月11日、衆院本会議では「労働者派遣法」の改正を巡る論戦で、与野党議員の怒号が飛び交っていた。しかし別の法案が提案されると、雰囲気が一変した。多くの議員が「異議なし!」と応じ、全会一致で可決。大きな拍手が議場にこだました。「戦没者遺骨収集推進法」(推進法)だ。傍聴して
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常夏通信
その117 戦没者遺骨の戦後史(63) 「門前払い」された遺族の願い
2021/10/28 10:00 2922文字戦時中に海で亡くなった兵士たちの遺体や遺骨について、政府は「水葬という風習がある」という理屈で、原則として収容してこなかった。しかし昨年この方針を変え、原則として収容することとした。これを受けて9月、ある遺族が収容とDNA鑑定を希望した。潜水艦「伊361」に乗っていた近藤誠一さんの遺子、安間妙子さ
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常夏通信
戦没者遺骨の戦後史(62) 海に散った父が残した娘への手紙
2021/10/21 10:00 2622文字戦没者遺骨の収集は、法律によって「国の責務」と定められている。厚生労働省によると、これまで128万体分を収容した。しかしこれまでほとんど手つかずだったケースがある。それは、撃沈された艦船の乗組員など、海で眠っているものだ。終戦直前、沖縄南方の海で戦死した父の遺骨収容を願う女性の話を聞いた。【栗原俊
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常夏通信
戦没者遺骨の戦後史(61) 沖縄から入閣「西銘発言」の重大さとは
2021/10/14 10:00 2654文字4日に岸田文雄内閣が発足し、西銘恒三郎衆院議員(67)=自民党・沖縄4区選出=が復興相兼沖縄・北方担当相に就任した。5日に行われた就任後初の記者会見では、東日本大震災からの復興や北方領土問題などのほかに、沖縄県名護市辺野古で進む米軍基地建設についての質問があった。政府の土砂の採取候補地に沖縄戦犠牲
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常夏通信
その114 戦没者遺骨の戦後史(60)急がれる「遺族への声かけ」
2021/10/7 10:00 3060文字前回の「常夏通信その113」で紹介したように、戦没者遺骨を所管する厚生労働省は今年、遺骨のDNA鑑定の方針を大きく変えた。従来は遺骨だけでなく身元が推定できる遺品や埋葬記録がなければ鑑定を行わないという「遺品縛り」があった。だがこのたびその「遺品縛り」をやめたのだ。大きな一歩だが、もうひとつ、早急
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常夏通信
その113 戦没者遺骨の戦後史(59) 「遺品縛り」解除後の課題とは
2021/9/30 10:00 2922文字戦没者遺骨のDNA鑑定について、10月1日、大きな動きがある。厚生労働省は、収容の対象となっている一部地域で行っていた「遺品がない遺骨の鑑定」の範囲を拡大して全面的に実施するのだ。当初は印鑑や記名のある万年筆などで、身元がある程度推定できる遺骨だけを対象としていたが、遺品なしで判定する地域を徐々に
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常夏通信
その112 戦没者遺骨の戦後史(58) 国会内で見た頭蓋骨のかけら
2021/9/23 12:00 2693文字今月14日。国会内で、戦没者遺骨の収容やDNA鑑定などについての学習・意見交換の集会が開かれた。沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さん(67)や遺族らが集い、遺骨収容の所管である厚生労働省や外務省、防衛省の担当者に今後の方針などをただした。沖縄の言葉で「ガマ」とは、自然洞窟を
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常夏通信
その111 戦没者の戦後史(57) 沖縄戦遺骨問題 河野太郎氏の発言を読む
2021/9/16 10:00 2255文字自民党総裁選が近づいている。事実上、そこで選ばれた新総裁が次の首相になるだけに注目が高まっている。名乗りを上げた候補の記者会見を見る限り、メディアの関心は新型コロナ対策や経済政策、社会保障、安全保障、外交などのようだ。しかし私は、全く別のことに関心を持っていた。沖縄・辺野古への新基地建設にあたり、
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