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滝野隆浩の掃苔記
「痛み」語らぬ日本人
2022/8/7 02:02 950文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 国立がん研究センターが3月に公表した、がん患者の人生最終段階の実態調査の結果に衝撃を受けた。遺族約5万4000人に聞いたところ、3割(28・7%)が「死亡前の1週間に強い痛みを感じていた」という。 全般的には、遺族は8割以上が「医療者は患者のつらい症状にすみやか
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がん緩和ケア「大転換」
2022/7/31 02:00 938文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 「がん緩和ケアが今、大きな転換点に」。そんなタイトルにひかれ、厚生労働省「がんの緩和ケアに係る部会」座長の中川恵一先生(東京大学特任教授)らのメディア向けセミナーを聴きに行った。どこが、どう変わるのだろう。 まず強調されたのは「がんの診断時からの緩和ケア」という
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「ピリピリ」息子に母は
2022/7/24 02:00 934文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 九州で1人暮らしする母に久しぶりに会いに行った。春先に帰る予定が、念のために受けたPCR検査で「偽陽性」判定を受けて断念。今回、8カ月ぶりの帰省である。長く会っていないと、母の生活に異常がないか、調べたくなる。 冷蔵庫の中をのぞいて、生ものの消費期限を確認する。
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「待ってたよ」の幸せ
2022/7/17 02:06 916文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 「ひと」欄(7月14日)で、浜松市の猿田光里さん(77)を取り上げた。移住先の過疎地に住む「買い物弱者」のために、食品の移動販売を始めて17年。もうけはほとんどないのに続けている姿に感動した。 5月、「便利屋!猿ちゃん」と車体に書かれた軽貨物車を、市の中心部から
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墓の場所聞いて妄想
2022/7/10 02:01 928文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 前回、元陸上幕僚長の冨澤暉(ひかる)さん(84)と作家、胡桃沢耕史の墓参りをした話を書いた。実はあの日あのあと、冨澤さんが新しく持った墓を見せてもらった。墓ざんまいの一日だった。 墓の所在地を生前に確認しておくことは、その人に「あなたの没後、墓参りに行きます」と
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胡桃沢耕史の「執念」
2022/7/3 02:00 944文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 元陸上幕僚長の冨澤暉(ひかる)さん(84)と雑談をしていたら、直木賞作家、胡桃沢耕史の話で盛り上がった。それで墓参りをすることになった。 芥川賞作家の冨澤有爲男(ういお)を父に持つ冨澤さんは高校時代、縁あって直木賞作家の寺内大吉が住職をしていた東京・世田谷の大吉
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自分で考える葬送に
2022/6/26 02:01 925文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 「私がなぜこの分野にどっぷりつかったか。自分史みたいな話になります」。5月末の日本葬送文化学会で、八木澤壮一・東京電機大名誉教授(85)はそう断って講演を始めた。30年前に火葬場の研究で日本建築学会賞(論文)を受賞。以後、葬送が大きく変容する時代に「弔う文化」に
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40年ぶり再会の父は
2022/6/19 02:01 909文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 忘れもしない、2021年7月16日のこと。神奈川県横須賀市で介護関連会社を営む今澤明彦社長(49)は、行政書士からの茶封筒を受け取った。「ご尊父、今澤稔様」が市内の病院で「深刻な状況」なので、一度話をしたい、とあった。父とは40年、会っていなかった。 会うことで
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戦争を起こさぬための
2022/6/12 02:01 936文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> その写真を目にしたとき、はっと息をのんだ。渡邉英徳・東京大大学院教授がインターネット上で公開した<「二・二六事件」で決起した直後、半蔵門を占拠する反乱部隊>の写真である。 白黒写真を独自の手法でカラー化した。白黒だと陰鬱な歴史の「資料」でしかないが、色がついたと
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触ってあげてください
2022/6/5 02:01 923文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 新型コロナウイルス禍の中で「エンバーミング」が注目されているらしい。遺体を消毒、防腐、修復する技術。コロナで亡くなった人の遺族の「最後に会いたい」という思いに応えている。つてを頼って「フューネラルサポートサービス」の東京都内の事務所でロバート・ホーイ代表(56)
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転倒防止に「ぬかづけ」
2022/5/29 02:01 933文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 3月の当欄で歩道の坂道でこけてけがをした経験について書いたら、「日本転倒予防学会」の武藤芳照初代理事長(71)から手紙が届いた。近著「あの人も転んだ この人も転んだ」も一緒に。抜群におもしろかったので、東京・本郷の事務所に話を聞きに行った。 古今東西、ツタンカー
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この遺骨は本物なのか
2022/5/22 02:01 928文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 「どうして会えないんだ!」。葬儀社「ワンライフ」(東京都江東区)の土本大輔さん(41)には、新型コロナ感染症で亡くなった遺族から怒鳴られ続けた苦い経験がある。厚生労働省の遺体取り扱いに関するガイドラインは納体袋に入れて葬儀をすることを推奨している。これを読んで、
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法要文化がなくなる日
2022/5/15 02:01 911文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 警察から突然電話があり、「この人をご存じですか」と聞かれる。父の兄の名前のようだった。孤立死し、他に身寄りはないらしい。遺体を引き取り、葬儀まで出すことに。「顔も忘れた伯父の葬式を、なぜ私が費用を出してやらされるの!」。喪主がぽつんと1人で怒り続けている奇妙な葬
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死後手続きデジタル化
2022/5/8 02:01 951文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 埼玉県入間市とライフエンディングテクノロジーズ(東京都港区)が昨年末、「死後の行政手続のデジタル化推進に関する協定」を全国で初めて締結した。配偶者や親が亡くなった際の、あの煩雑な手続きがインターネット経由で簡素化されるという。朗報だろう。 死亡から納骨までに必要
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「身元保証」の行政評価
2022/5/1 02:01 940文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 総務省関東管区行政評価局が3月末、「高齢者の身元保証に関する調査」の結果を公表した。行政府の政策を評価する機関が、身寄りがないと病院や施設に入れないという問題について初めて切り込んだ。全国に共通するテーマである。 東京、神奈川、埼玉の3都県にある病院、介護施設な
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滝野隆浩の掃苔記
悲しい事件を防ぐには
2022/4/24 02:01 942文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 新潟市の角田山妙光寺で3月、「ピア まちをつなぐもの」という映画を見たあと、在宅医療・介護について考えるイベントがあった。「にいがた在宅ケアねっと」の主催。寺で人生最終盤のあれこれを語り合うのはいい。参加者の本音トークで大いに盛り上がった。 終了後、同ねっと代表
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滝野隆浩の掃苔記
「陽性判定」でヘロヘロ
2022/4/17 02:02 932文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 九州で1人暮らしする母に会いに行くことにした。もう半年近く、顔を見ていない。母も私もワクチン3回接種済みだが、念のためにPCR検査を受けておこうと思い立ち、検査機関に出向いた。それが大混乱の始まりだった。 結果待ちをしていると、15分ほどの間に2人が別室に呼ばれ
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豊島区でも「終活登録」
2022/4/10 02:02 946文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 池袋駅のあるまち東京都豊島区の区役所が4月1日、「終活情報の登録」事業を始めた。単身世帯の急増を背景にいくつかの自治体が緊急連絡先などの個人情報を保管する住民サービスを開始しているが、東京23区では初という。 豊島区では2021年2月に「終活あんしんセンター」を
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滝野隆浩の掃苔記
こちらが本質ですから
2022/4/3 02:01 921文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 先日、作業中の納棺師に出会った。映画「おくりびと」などでこの職業のことは知っていた。でも遺体に化粧を施す作業を実際に見るのは初めてだった。 まず驚いたのは身なりである。さまざまな化粧品や保存剤などを使うから「作業着でやっている」と勝手に思い込んでいたが違った。そ
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「死ねない老人」その後
2022/3/27 02:02 952文字<滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)> 本のタイトルを聞いて、ぎょっとした。5年前に出た新書判の「死ねない老人」。信頼する在宅医から薦められなかったら、手に取らなかったろう。でも読んでみたら、人生最終盤の医療に関する指南書のような本だった。書名にこめた意味が知りたくて、埼玉県川口市の医院に、杉浦敏之医
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