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日本選手権:社会人野球はジョニーの原点 黒木知宏さんが語る「全力プレー」の魅力

初めて社会人野球の実況を担当するプロ野球・ロッテの元エース・黒木知宏さん=東京都千代田区で2018年10月23日、小座野容斉撮影

日本選手権

社会人野球はジョニーの原点 黒木知宏さんが語る「全力プレー」の魅力

「選手の生き生きとした表情やプレーを伝えたい」と黒木さん。初めて社会人野球を解説する=小座野容斉撮影

 第44回社会人野球日本選手権大会(毎日新聞社、日本野球連盟主催)で史上初めて実施される公式サイトでの全試合無料ライブ中継。準決勝2試合と決勝で解説を担当するプロ野球・元ロッテの黒木知宏さん(44)は、社会人野球の新王子製紙春日井(現・王子)で闘志あふれる投球スタイルの基礎を築いた。「一つ一つのプレーが全力。リーグ戦では見られない一発勝負の戦い方が間違いなくみられる」と黒木さんは日本選手権の面白さを強調する。【構成・曽根田和久、寺田翼】

 黒木さんは宮崎・延岡学園から新王子製紙春日井に進んだ。闘志を前面に出す投球スタイルの基礎も社会人時代に培い、「ジョニー」という愛称も当時の後輩選手が名付け親だ。94年には本田技研鈴鹿(現・ホンダ鈴鹿)の補強選手として都市対抗野球大会で優勝を経験しているものの、日本選手権に出場する機会はなかった。「補強選手制度がない日本選手権はそのチームの総合力が問われる。日本一のチームがどこなのか。明確に分かる」と大会の位置づけを語る。

 黒木さんはまた、「一人の野球ファンとして『これからどう成長するだろう』と選手を追いかけて見るのが面白い」と観戦する際の楽しみ方を提案。プロ野球・日本ハムで投手コーチを務めた経験も踏まえて、「1年目、2年目の選手がこの大会を経て、来年の春から夏にどのくらい成長するのか。若い力がどうなっていくのかに注目したい」と話した。社会人野球の解説は初挑戦で、「各選手の良さや個性、チームの戦い方や監督の采配や思いを僕の視点で伝えたい。『どうしてこの投手の球は打てないのか』というような技術的なポイントも解説したい」と意気込んだ。

総合力で争う 日本一決める大会

新王子製紙春日井時代の黒木さん=愛知県岡崎市民球場で1994年6月撮影

 ◆(社会人野球時代の写真を見ながら)細いなあ。これから体を作っていくという感じですね。当時は1週間に4~5回はウエートトレーニングをしていました。それで体重も筋力も上がりました。高校では130キロそこそこの投手だったけれど、プロ入り前は147キロまで伸びた。コーチもずっと練習につきあってくれて、スピードも技術も上がっていった。

 ――当時のフォームはいかがですか?

 ◆見た目かっこいいですよね。でも、こんなに重心を下げていたら1年間は持たないなあ(笑い)。

 ――黒木さんの愛称「ジョニー」の由来は。

 ◆社会人野球当時からのニックネームです。元々は演歌歌手の山本譲二さんに似ているからという理由で先輩に「ジョージ」と呼ばれていたんですけれど、一つ下の後輩が「ジョージじゃなくてジョニーにしませんか?」と言い出して。それからはグラブにも刺しゅうで「ジョニー」と入れていました。このニックネームのおかげで、先輩からも後輩からもジョニーと呼んでもらえました。

 ──黒木さんにとって日本選手権とは?

 ◆日本選手権は補強選手がいない。各チームの総合力が分かる。1年の集大成という位置づけの大会だと思います。私は社会人最終年に予選で登板して負けてしまった。出場できず、悔しい思いがありますね。一度は出場したかったです。

 (補強選手として出場した)都市対抗で優勝し、それなりに活躍もできたので、自信もありました。ただ、下半身に不具合が出て万全ではなかった。ドラフト会議でプロに指名されるかどうかという時期でもあり、「今年で社会人野球は最後かも」という思いもあった。負けた時は悔しかったです。

 ──単独チームで争う点が都市対抗との大きな違いです。

 ◆日本選手権は自分たちのチームがどれぐらい強いのか、明確に分かる。日本一のチームを決める大会だと思っています。社会人野球の場合はまず、夏の都市対抗に向けて調整します。都市対抗が終わると、少し燃え尽きてしまったような気分になるものですが、それほど間を空けずに日本選手権の予選が始まり、本戦がやってくる。コンディション作りがとても難しい。

 だから、コンディションを整えられるマネジメント力であったり、選手個々の能力や基礎体力であったり。トータルで強いチームでなければ日本選手権は勝ち上がれない。自分が指導者になって、いろんな経験をしていくと、秋に日本一になるというのは相当厳しいし、苦しいだろうということは感じます。

社会人野球時代の写真を見ながら当時に思いをはせる黒木さん=小座野容斉撮影

魂込めた投球 社会人時代に培う

 ──社会人野球の経験から学んだことは。

 ◆「打たれたって命まで取られない。目いっぱい投げろ」と教わりました。年齢は関係なく、向かって行け、と。そこからですね。「打てるものなら打ってみろ」みたいな感じになったのは。周りからは、野太いやじも聞こえたけれど、もうそれは関係ない。こうして僕の投球スタイルが確立されたんです。

 ──今大会の注目チームはどこですか。

 ◆やはり王子ですね。(古巣は)気になります。毎年、夏と秋は勝敗などの情報は仕入れます。都市対抗に出れば東京ドームへ応援に行きます。日本選手権も状況によっては応援に行きます。王子の勝敗によって私の秋のスケジュールが決まるんです(笑い)。解説をする準決勝と決勝まで頑張ってほしい。

第43回大会1回戦で右前打を放つ王子・大八木=京セラドーム大阪で2017年11月2日、川平愛撮影

 ──王子は開幕試合です。

 ◆相当テンションが上がりますよね。投手は試合前夜はおそらく眠れないと思います。若い投手だったら「気づいたら朝」ということもあるでしょう。緊張の中で、目をギラつかせて投げている姿がみられるでしょう。

 ──他に気になるチームは?

 ◆(出身地の宮崎から出場する)宮崎梅田学園ですね。身近にある硬式野球チームが全国大会に出場する。宮崎の子どもたちはすごく希望が持てると思います。ホンダ鈴鹿も一緒に戦ったことのあるチームなので気になります。大阪ガスは毎年良い投手がそろっています。他は、NTT東日本やトヨタ自動車、ホンダ、JX―ENEOS、日本生命、NTT西日本も注目です。

 社会人野球は一発勝負なので、投手力が重要です。より良い投手をそろえているチームは間違いなくアドバンテージがあるでしょう。

日本選手権の初出場が決まり斉藤秀史監督(中央)を胴上げする宮崎梅田学園の選手たち=熊本市のリブワーク藤崎台球場で2018年9月11日、清水晃平撮影

 ──大会史上初の無料ライブ中継で、黒木さんは準決勝と決勝の解説を担当します。

 選手の生き生きとした表情やプレーを伝えたいです。期待の選手の良さも紹介したい。基本的には選手の個性。例えば、タイミングが取りづらいような投げ方なので、このスピードでも打てない、とか。そういうところも話せるといいと思います。各チームの戦い方やマネジメント、監督の采配の裏にある思いにも触れたいです。

 一野球ファンとしては、「この選手はどうなっていくんだろう」というような視点で見るのは面白い。都市対抗でみた選手が日本選手権でどれくらい成長しているか。1、2年目の選手がこの日本選手権で投げて、来年の春から夏にかけてどこまで成長するか。そういう見立てをしてみると面白いです。今の選手はスマートでかっこいい。けれども、「ボールは体で捕るんだ」というようなギラついた感じにもみえる。泥臭い野球が見たいですね。


 くろき・ともひろ 1973年、宮崎生まれ。92年、延岡学園から新王子製紙春日井に入社。94年には本田技研鈴鹿の補強選手として都市対抗優勝に貢献した。同年、ドラフト2位でロッテに入団し、98年は最多勝と最高勝率の2冠。2007年に現役引退した。プロ通算成績は76勝68敗1セーブ。防御率3.43。13~17年シーズンは日本ハムの1軍投手コーチを務め、大谷翔平(現・エンゼルス)らを指導した。


前回優勝し、喜びを爆発させるトヨタ自動車の選手。勝利の女神は今年どのチームにほほ笑むか=京セラドーム大阪で2017年11月12日、猪飼健史撮影