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ぼやきに目からうろこ 運動記者が見た「野球人・野村克也」 野球界からは惜しむ声

2017年12月、妻沙知代さんの死に際し、長男の団野村さんに支えられながら応対する野村さん=東京・世田谷区の自宅で

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 プロ野球で戦後初の3冠王など数々の打撃タイトルを獲得する一方で、名捕手として活躍し、ヤクルト監督としても3度の日本一に輝いた野村克也さんが11日、84歳で亡くなった。プロ野球だけでなく、社会人野球の最高峰、都市対抗大会でも監督として準優勝するなど野球界の発展に大きく貢献した「野球人」の死に、関係者からは惜しむ声が上がった。

 野村さんが、社会人野球・シダックス(東京都調布市、廃部)監督に就任したのは、阪神監督を辞任してから2年後の2003年シーズンから楽天監督に就任が決まる05年までの3期だった。ヤクルトをセ・リーグ優勝に4度導いた「ID野球」はすぐに効果を発揮し、1期目の03年都市対抗で決勝まで勝ち進んだ。「頂上対決」の相手は三菱ふそう川崎(川崎市、廃部)。当時このチームの捕手だった、文星芸大付高野球部監督の高根沢力さん(46)は、東京ドームの大舞台で対戦した野村さんの印象を「きめ細かい野球で何をしてくるか分からない怖さがあった。自チームの投手のクセをもう一度全て直すなど万全の状態で臨んだ」と語る。

高根沢力さん

 試合は高根沢さんの適時打もあり5―4で三菱ふそう川崎が逆転勝ちで優勝。05年に3回目の黒獅子旗を手にした時も捕手として引っ張った。「シダックスは『ID野球』だけではなく、当時世界最高レベルだったキューバの主力選手もいて強敵だったが、アマチュアの意地を示せた」と振り返り、「野村さんは捕手としても素晴らしい方。尊敬できる野球人」と惜しんだ。

 プロ野球では、1962年に作新学院高のエースとして甲子園春夏連覇を達成した八木沢荘六さん(75)が、78年にロッテ(現・千葉ロッテ)で野村さんとプレー。さらに野村さんが阪神で指揮を執った99年から3シーズン、投手コーチとして支えた。99年のキャンプでは人気外野手だった新庄剛志選手(48)の投手兼任プランを披露して話題になった。八木沢さんは「現役、コーチ時代と、とにかく勉強させていただいた。1月にお会いした時、健康ではなさそうだったが、わずか半月で亡くなられるとは思わなかった」と残念がった。【李舜】

教えられた「野球の奥深さ」

 1996年からスポーツ取材をして以来、節目で野村さんを取材した。その度に野球の奥深さを教えられた。

 3度目の日本一に輝いた97年。大学野球を担当していた私は、引き続き神宮球場で行われるヤクルト戦のナイターを取材した。試合前、決まって一塁側ベンチに人だかりができる。番記者が、どっかり座る野村さんを囲んで「ぼやき」を聞くのだ。「打者から最も遠い、外角低めの真っすぐでストライクを取れるのがいい投手」「フルカウントからストライクで勝負できる投手なんて、そうそういない。だから1球目からの組み立てが大事なんだ」「弱いチームだから足も目も使う。全員で戦うんだ」などなど。目からうろこが落ちた。

 大阪勤務だった2001年。妻沙知代さんの逮捕に伴う阪神監督辞任の会見は午前0時半だった。夜半に「ノムさんが東京から飛行機に乗った」と聞き、甲子園球場に駆けつけた。妻の不祥事でも夫は責任を取る。3期連続最下位の事情もあったが厳しい仕事と思った。

 2年後、東京に戻って社会人野球担当になり、シダックスの赤いユニホームを着た野村さんと再会した。プロ野球の試合もできない球場で記者も少ない中、野村さんは立ったまま丁寧に質問に答えた。「野球をできる喜びにプロもアマもない」「負けたら終わりのトーナメント。こんな恐怖感は今まで感じたことがない」と話したが、表情は晴れやか。任された3期すべてで都市対抗本大会に出場し、うち2回は準優勝とベスト8の好成績を残した。

 宇都宮に赴任する直前の17年12月。妻沙知代さんが亡くなった冷たい雨が降る日に、東京都世田谷区の自宅で長男団野村さんに抱えられ傘も差さずに応対。「良い奥さんでした」と話した。往年の鋭い眼光は感じられなかったが、動かない体でも毅然(きぜん)と応対することが、メディアの中で生きた「野球人」としての責任の形なのか、と思った。【上鵜瀬浄】

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