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憲法秘密会議事録公開

特集2/「9条案」論議の要旨

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 憲法九条をめぐる芦田小委員会での論議の要旨(注:委員名の後は当時の所属政党・会派。発言は要点部分を抜き出し、現代表記に直した。太字は1948年に英訳されてGHQに提出された際には削除された部分)

 第4回(1946年7月29日)

 芦田均委員長 第九条の修正案について試案が一つ出ているのですが、御協議願います。「日本国民は、正義と秩序とを基調とする国際平和を誠実に希求し、陸海空軍その他の戦力を保持せず、国の交戦権を否認することを声明する」「前掲の目的を達するため、国権の発動たる戦争と武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」というようにしたらどうか。

 吉田安委員(進歩党) ただ今の委員長の修正案には、進歩党に異議ありません。賛成です。

 高橋泰雄委員(自由党) 今の修正に賛成です。

 芦田委員長 修正した趣旨の一つの動機は、原案の「陸海空軍その他の戦力の保持は許されない」という書き方が、日本文としてはどうも面白くない。俺は嘘は言ってはならないというよりは俺は嘘は言わないのだという方が日本文としては自然です。それだけを唐突に直すということもどうかと思ったから初めに日本国民は正義と秩序を基調とする国際平和を熱烈に希望する、だから陸海空軍その他の戦力を持たないのだ。こういけば非常に自然に出てきます。

 鈴木義男委員(社会党) 交戦権と戦力の保持を先にして、戦争の放棄を後にするのも考える余地がありはせぬかと思うのですがね。

 芦田委員長 交戦権を否認するということは、まず戦争をやらないということの前提でしょう。それだから、初めの原文の書き方がおかしい。戦争はもうやりませんと言っておいて、一番最後に交戦権は行使しませんと言っている。交戦権を捨てるから戦争をやらなくなる。それだからむしろ交戦権を否認するといういうことの方が先に行く。それから陸海空軍というものがあるから戦争の手段になるのだが、だから軍備は持たない、交戦権は認めませんと言って、しかる後に、もう国際紛争の解決手段として戦争はしません。こういうことが思想的には順序だと思う。

第5回(7月30日)

鈴木委員 交戦権を先に持ってきて、戦争放棄を後に持ってくることは立法技術的にいかがですか。

金森徳次郎国務相(憲法担当) これは非常にデリケートな問題でありまして、そう軽々しく言えないことでありますけれども、第一項は「永久にこれを放棄する」という言葉を用いまして、かなり強く出ております。しかし、第二項の方は永久という言葉を使いませんで、これは私自身の肚(はら)勘定だけかも知れませんが、将来、国際連合等との関係におきまして、第二項の戦力保持などということにつきましては色々考えるべき点が残っておるのではないか。こういう気がいたしまして、そこで建前を第一項と第二項にして、非常に永久性のはっきりしておるところを第一項に持って行った。こういう考え方になっております。そういう考えで案を作ったのであります。

 第7回(8月1日)

 芦田委員長 最後の「宣言する」という文字を削って、それで一応の修正とすることに御異議がないでしょうか。

 鈴木委員 非常に私は心配するのです。どうも交戦権を先に持ってきて、陸海空軍の戦力を保持せずというのでは原案の方がよいように思うのです。その点について十分御考慮下さったでしょうか。

 芦田委員長 順序を変えるのはその人の趣味で、例えば演説をする時に、一番大事なことを一番初めに言う人もあれば、一番大事なことは最後に言う人もある。戦争をまず放棄すると言った後で、交戦権はこれを認めないと言うことは、どうも順序を得てない。それだから初めに交戦権は認めないと言って置いて、国際紛争を解決するための戦争はこれを放棄する。こういうことが原則から出てくる結果なんだから、それで後に書いた方がよい。こういう風に私は感じたのです。

 鈴木委員 ある国際法学者も、交戦権を先に持ってくる方が自衛権というものを捨てないということになるのでよいのだということを説明しておりました。十分御考慮下さった後で、それでよいということであれば私は強いて反対しません。

犬養健委員(進歩党) 第九条の第一項は永久不動、第二項は多少の変動があるという、何か含みがあるように、この間(金森)国務大臣の御発言があったのですが、そういう含みがありますか。

佐藤達夫政府委員(法制局次長) 正面からそういう含みがあるということを申し上げることはできないと思いますが、ただ気持ちをわかりやすく了解していただけるように、金森国務大臣はああいう言葉をお使いになったのだろうと思います。

犬養委員 この順序は無意味ではなくて、相当意味がある……

佐藤政府委員 意味があるということを申したいためにああいう表現を使われたと思います。

 江藤夏雄委員(自由党) 順序はどうも原文の方がよいような気がするのですがね。

 原夫次郎委員(進歩党) 委員長の修正案の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」まで取って、前文(原案)に続ける。それ位のところではどうでしょうか。

 鈴木委員 賛成です。

 芦田委員長 多数が原案でよいということなら、これでもよい。

 犬養委員 委員長のおっしゃった「前掲の目的を達するため」ということを入れて、一項、二項の仕組みはそのままにして、冒頭に「日本国民は正義……」という字を入れたらどうかと思うのですが、それで何か差し障りが起こりますか。

 芦田委員長 「前項の…」というのは、実は双方ともに国際平和を念願しておるということを書きたいけれども、重複するような嫌いがあるから、「前項の目的を達するため」と書いたので、つまり両方ともに日本国民の平和的希求の念慮から出ておるのだ。

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