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朱鷺色の空に 2008初放鳥

放鳥を前に/2 フィーバーと島民感情 中国産にドライな目 /新潟

 「小佐渡東部だけでやればいいではないか。おれたちには迷惑をかけてくれるな」

     04年3月、県の佐渡地域振興局が旧赤泊村で行った座談会。かつて、トキが生息していたという赤泊に「トキの舞い降りる田んぼ」を作ろうと開催したところ、当の赤泊村民から、こんなクレームが出た。

     座談会に出席した地域住民16人中、11人が野生復帰事業に賛成した。だが、県の担当者が出席者にトキのイメージを聞くと、村民の複雑な心境がほの見えてきた。口述筆記した県の資料には、こんな記述がある。

     (1)「佐渡にしかいない鳥」(2)「(島の外で)勝手に騒がれている鳥」(3)「貴重な鳥」(4)「最も(コストが)高い鳥」(5)「ニッポニア・ニッポン」(6)「ニイボニア・ニイボ(新穂にしか生息していない、の意)」−−。トキへの愛着や恋慕の情もあれば、ドライな受け止め方もある。

        ◇

     生息数が激減して以降、トキは常に世間の耳目を集める存在になった。絶滅させた、人間の「宿罪」の象徴としても。81年の全鳥捕獲の際には、「自然繁殖か、人工繁殖か」という論争に発展した。

     最近では99年1月、中国で繁殖された「友友(ヨウヨウ)」「洋洋(ヤンヤン)」のペアが来日。交尾に産卵、ふ化と、一挙手一投足を各マスコミが追いかけた。03年10月には国内産最後の「キン」が死んだ。その報道は人間顔負けの大きな扱いとなった。

     しかし、そうした「トキフィーバー」の陰で「国内での保護、繁殖に失敗した揚げ句、中国から持ち込むことに何の意味があるのか」という、冷めた意見が島内で飛び交うのも事実だ。座談会での「迷惑かけるな」発言も、こうした経緯と無縁ではない。

        ◇

     環境省所管の財団法人、自然環境研究センターが昨年3月、島内全域の300世帯(回収率27・9%)から回答を得たアンケート調査。野生復帰に「期待している」が27件あった一方、「必要性に疑問」「トキより生活が大事」が計18件。賛否は拮抗(きっこう)している。

     しかし、「トキの野生復帰連絡協議会」会長として、トキと共生できる島作りを模索している高野毅さん(64)=佐渡市新穂瓜生屋=は、こう訴える。「国の技術をもってしてもヒナ1羽、卵1個助けられなかったことは歴史上の事実。だが、過疎に疲弊した佐渡をどうするかは自分たちの問題。放鳥は、島の振興に向けた、千載一遇のチャンスです」(つづく)


    ことば「国のトキ保護行政」

     天然記念物に指定された経緯から、保護行政は長く文化庁が担当していたが、71年の環境庁(現環境省)の設置に合わせ同庁に移管。「佐渡トキ保護センター」は国の委託を受け、県が業務に当たる。昨年「環境省佐渡自然保護官事務所」が設置され、初めて担当官が佐渡に常駐するようになった。

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