メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

朱鷺色の空に 2008初放鳥

放鳥を前に/3 冬季湛水とビオトープ 田んぼを「暮らしの場」に /新潟

[PR]

 佐渡島の南東部、旧新穂村に広がる小佐渡丘陵。斜面に沿って、階段状に棚田が広がっている。ヘリで上空を飛んだ先月19日、所々の田んぼが鏡のように、冬の薄日を反射していた。今秋、佐渡の空に帰るトキもきっと、同じ光景を目にするはずだ。

 この時期、新穂の田んぼが水をたたえるのは理由がある。

 農閑期の田んぼは通常、農業機械を入れやすくするため、水を抜くことが多い。だが、ぬかるんだ田んぼには冬でも、虫などの水生生物が生き残る。試験放鳥後、こうした田んぼをトキの「暮らしの場」にしようと、県や市、ボランティアなどが「冬季湛水(たんすい)水田(冬水田んぼ)」づくりを進めているのだ。

 県によると、佐渡島でこうした冬季湛水を行う水田は約31ヘクタール。ほかに、休耕田などを活用し、人工的にドジョウなどを生息させるビオトープ(生物生息空間)が約21ヘクタール整備されている。人工のえさ場は佐渡島の耕地面積(05年、8512ヘクタール)の約0・6%。まだわずかなものだが、冬季湛水とビオトープを足した面積は、3年前の3倍に広がっている。

    ◇

 小佐渡丘陵の中腹部にある旧新穂村の生椿(はいつばき)地区。かつては5戸ほどの農家が暮らし、棚田での米作りを細々と続けてきた。佐渡トキ保護センターの元嘱託職員で、長く人工飼育に当たった故高野高治さん(97年死去)も、ここで暮らした。

 今では集落に郵便配達も来なくなり、住民はすべてふもとの人里に移り住んだ。地区に4・3ヘクタールある水田のおよそ半分が、国の減反政策による調整水田となっている。

 高野さんの水田を引き継いだ長男、毅さん(64)は、自前の田んぼ約50アールのうち、26アールをビオトープにした。県と市からの助成金もあるにはあるが、10アール当たり年4万円程度と微々たるものだ。

    ◇

 えさ場整備で行政に協力しているとはいえ、毅さんの生活が保証されているわけではない。ただでさえ、島は若年層の流出が止まらず、営農も年々厳しくなっている。減反に応じ、ビオトープ整備に協力するのは一体、なぜか。

 高治さんが集めた資料や写真に埋もれた自宅の部屋で、毅さんが声を大にして答えた。「農村が倒れれば、消費地の都会も共倒れ。鳥(トキ)も暮らせない環境が、人間にとっても良いはずがない」。土の上で生きてきた親子2代の信念に違いない。(つづく)


ことば「生椿地区」

 19年生まれの高野高治さんが子供のころから、数多くのトキが飛来。31年には水田に27羽が舞い降り、高治さんは「あたり一面に牡丹(ぼたん)の花が咲いたよう」と書き残した。59年、トキ保護に本腰を入れ始めた国の求めに応じ、山階芳麿・山階鳥類研究所初代所長らの調査団一行を、高治さんが案内している。

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 医療従事者153人の感染判明 院内感染も発生 医療崩壊の懸念 新型コロナ

  2. 愛知県警でクラスター発生 警察官や親族など計21人感染 

  3. 岐阜市のナイトクラブでクラスター 従業員と客の計10人感染確認 新型コロナ

  4. 東京都の感染者が新たに118人 初の3桁 新型コロナ

  5. 各国で計画進むBCGの臨床試験 感染予防へ高まる期待 「命の危険」懸念も

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです