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朱鷺色の空に 2008初放鳥

放鳥を前に/5止 地域振興 人・環境、新たな関係を /新潟

 「分散飼育されるトキは非公開のため、島の観光に対する影響はありません」

     先月、佐渡島で放映された地元のテレビ番組の一場面。佐渡トキ保護センターから、鳥インフルエンザなどへの感染を防ぐ緊急避難対策として、4羽が東京・多摩動物公園に移された。その様子を伝えるアナウンサーのコメントは、トキが佐渡から離れることによって「トキの島」という優位性が低下することへの懸念が、ほの見えた。

     佐渡への観光客入り込み数は、バブル崩壊以降長く低迷が続いている。試験放鳥を契機に「エコツーリズムなど、観光の起爆剤にしたい」ともくろむ関係者は多い。

     ただ、最優先されるべきは「種の保存」。県の関係者からは「今はまだ、佐渡という繁殖場所を(国に)貸しているだけのよう。地域の魅力作りに、もっと積極的に活用したいのはやまやまなのだが……」との声も聞こえる。

        ◇

     環境省は多摩動物公園以外にも、佐渡と同様の人工飼育を行う分散先を探している。04年の中越地震からの復興を念頭に「トキが空に舞えば、夢がある話だ」と前向きに検討する長岡市のほか、かつて生息地だった石川県、島根県出雲市も名乗りを上げる。

     しかし分散飼育にしても、「種の保存」という目的が最優先されるのは佐渡と同様で、「客寄せの道具にしてもらうわけにはいかない」(環境省野生生物課)。飼育費用も地元負担となるが、税金を投じてトキを受け入れる意義を住民にどう説明しているのか。

     出雲市の担当者は「トキをシンボルに、環境に配慮したまちづくりをアピールできる」と明かす。さまざまな制約があるのは覚悟の上で、トキを地域振興に活用したいという思惑が、島の外にも広がっている。

        ◇

     05年、人工飼育したコウノトリの放鳥に成功した兵庫県豊岡市。繁殖拠点の県立コウノトリの郷公園は、年間来場者数は48万人(06年)を数える観光施設でもある。園内の公開ケージで飼育中のコウノトリを間近で見学でき、条件が整えば、周囲の水田地帯を舞うコウノトリが姿を現すこともある。

     同公園の池田啓・研究部長(動物生態学)に聞いた。トキを「見せ物」にしてはいけないのか。

     「放鳥に向けての緊張感はあろうが、学者(や国)だけで判断すべきことではない。今まで使われた税金がどう還元されたのか、住民にきちんと説明できなければいけない」という。そのうえで、「トキのヒナを、ただ『かわいいね』とめでるような見せ方ではなく、トキが暮らす自然環境のあり方も含めて紹介するなど、皆でよく話し合った上で、集客に活用すればいいのではないか」。

     佐渡のトキを取りまくすべての人を、傍観者でなく当事者として巻き込んでいく。そうなれば、「試験放鳥」という一大イベントは、人と環境の新たなかかわり方を築き上げる転機ともなりうるはずだ。(終わり)=この企画は五十嵐和大、磯野保が担当しました


    ことば「佐渡観光」

     県によると、佐渡島への06年度の観光客入り込み数は65万2885人。ピークだった91年度(123万392人)に比べ、約53%にまで落ち込んだ。このうち26万6000人が佐渡金山を訪れ、佐渡トキ保護センターを含む「トキの森公園」は19万5900人。島内2位の集客を記録した。

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