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朱鷺色の空に 2008初放鳥

人類の未来占う実験だ−−「千の風になって」を作曲、作家・新井満さん

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 ヒット曲「千の風になって」を訳詩、作曲した芥川賞作家の新井満さん(61)=新潟市出身=は、トキに格別の思いを寄せる。03年に36歳(推定)で死んだ日本産最後のトキ「キン」(雌)を題材にした小説を著し、佐渡の自然環境にも詳しい。いまだあせないキンへの思いや、野生復帰事業への期待感を聞いた。【聞き手・五十嵐和大】

 <一世一代のトキ自然放鳥に注文がある>

 いま佐渡にいるトキは、そもそも(99年以降)天皇、皇后両陛下が中国から譲り受けたもの。それを放鳥するというのは大きなイベントであり、歴史的な年になると思う。無事、佐渡の大自然に戻るのか、もっと注目されていいぐらいだ。

 <自著「朱鷺のキンちゃん空を飛ぶ」(05年、理論社)は児童書だ。でも大人にも読んでほしいと願う>

 佐渡トキ保護センターに足を運ぶたび、ビデオを通してキンちゃんの元気な姿を見ていた。ところが、ある日突然、ケージ内で羽ばたいて、ドアに頭を打ちつけて死んだ。作家だから、死の意味についていろいろ考えた。キンちゃんは、覚悟の自殺だったのではないか?

 (68年、キンを旧真野町で捕獲した)宇治金太郎さんを親のように、あるいは恋人のように慕っていた。捕獲された後も、人と鳥と、種を超えた魂の交流があった。その宇治さんが先に亡くなり、キンちゃんはすべてを考えた上で死を覚悟したのでは?

 「朱鷺のキンちゃん空を飛ぶ」は児童文学だが、テーマは「命」。今の子どもたちに一番必要なものは命の教育でしょう。どんな命にも役割があって、生まれてきたことに感謝してほしい。そういう哲学がないから、親が子を殺し、子が親を殺す社会になってしまった。

 <日本産の死滅と、放鳥の意味するところを、どう考えたらいいのか>

 トキという種は、炭鉱内で危険を教える「カナリア」のような役割を果たしてくれた。その最後の1羽がキンちゃんだ。キンちゃんは日本のカナリア。今年放鳥されるトキは、地球のカナリアになるだろう。佐渡にいながら、危険信号を発してくれているはずだ。

 キンちゃんの死は、日本の自然環境の問題だった。しかし、放鳥以降は、地球環境との関係で考えなければならない。今のままでは、地球は温暖化などでめちゃめちゃになる。放鳥後、昔のように飛べる環境ができるかどうか。地球環境全体にとっての実験になる。

 トキがもう一度、佐渡を舞うことができたら、地球もまんざら捨てたものではない。失敗すれば、人類に未来はない−−。トキが生きられないような環境に、人間が生きられるはずはない。トキの未来は、人類の未来でもあると思う。

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