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どう動く集団的自衛権

「集団的自衛権」を巡る動きをお伝えします。

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2 首相と公明、すれ違い

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米有力議員(左)と会談する公明党の山口那津男代表。集団的自衛権問題を巡る米側の考えを探った=ワシントンで2013年9月10日、福岡静哉撮影 拡大
米有力議員(左)と会談する公明党の山口那津男代表。集団的自衛権問題を巡る米側の考えを探った=ワシントンで2013年9月10日、福岡静哉撮影

苦肉の「加憲」響かず

 「米側にいろんな意見があることを知ることができた。日本やアジアの状況に配慮した認識を持っている人もいた」。訪米の日程を終えた公明党の山口那津男代表は12日、ワシントンで集団的自衛権に関する米側の認識を問われ、記者団にそう答えた。集団的自衛権の行使容認を求める声が米側で必ずしも高まってはいないことを強調した。

 集団的自衛権の行使容認に意欲を示す安倍晋三首相にとって、最大のハードルが連立与党の公明党だ。同党は政府の憲法解釈を変更し集団的自衛権の行使を容認することに一貫して反対している。「平和」が党是で、支持母体・創価学会にとっても理解を示すのは困難だ。党幹部は「ここで折れたら公明党の存在意義がなくなる」と強調。創価学会関係者も「創価学会の活動に影響しかねない問題だ」と声を震わせる。

 公明党は自民党と連立を組み、インド洋での補給活動や、イラクでの復興支援のための立法措置で自衛隊の海外派遣に協力してきた。支持者への説得は難航したが、それでも切り抜けたのは、米同時多発テロやイラク戦争などがあり、日米同盟維持のため、自衛隊派遣の必要性に現実味があったからだ。

 今、安倍政権が進める集団的自衛権の解釈変更の要求は、必要性に迫られたものと説明しづらい。山口代表が「なぜ変えるのか、どのように変えるのか慎重に議論していく必要がある」と繰り返し指摘するのも、安倍政権が行使容認によって何をしようとしているかが見えず、戸惑いがあるためだ。

 慎重な議論を求めている公明党だが、首相との対立が深刻化し連立離脱という事態になるのは避けたいのが本音。そこで打った布石が「憲法9条3項」案だった。同党は参院選を控えた5月末、憲法に新たな理念を加える「加憲」の論議に着手。9条に3項を加え、自衛隊の存在と国際貢献を明記する案を作り出した。解釈変更には応じない代わりに、首相が目指す憲法改正に柔軟姿勢を示したつもりだった。

 だが、首相は7月の参院選で大勝すると、9条ではなく、まずは96条の改正で改憲要件の緩和を目指す意向を表明した。公明党は96条改正には反対の立場で、9条加憲で落としどころを図ろうとしていた公明党の思惑は通じなかった。この後も首相は公明党の加憲論にはまったく関心を示していない。

 公明党幹部は「歴史に名前を残すなら9条改正なのに」と首相の真意をいぶかった。=つづく

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