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 集団的自衛権の行使容認が閣議決定され、「平和国家」日本は、自衛隊の活動を際限なく拡大しかねない道に踏み出した。安倍晋三首相は1日の記者会見で「あらゆる事態を想定し、国民の命、平和な暮らしを守るため切れ目のない安全保障法制が必要だ」と主張。今後は日米や多国間の軍事訓練などで抑止力向上を図る考えだ。集団安全保障での武力行使も閣議決定に明記することは見送ったものの、政府は「自衛の措置」として可能だと位置づけている。

    防衛の隙間、意識−−集団的自衛権

     今回の憲法解釈変更の最大のポイントは、日本が攻撃を受けていなくても武力行使可能との考えを示したことだ。政府関係者は「これまでは『攻撃を受けた後』と『攻撃を受ける前』で自衛隊の対応に差があり過ぎた。今回の閣議決定で、その隙間(すきま)を埋めることができる」と指摘する。

     従来の憲法解釈は「日本への武力攻撃」が発生した場合に限り、自衛隊の武力行使を認めてきた。憲法9条が「戦力不保持」などを定めているためで、「武力攻撃が発生する明白な危険が切迫」した場合でも、自衛隊は出動しても武力行使はできないというのが政府の立場だった。被害を未然に防止する手段が限られるため、政府内には「日本の防衛には『隙間』がある」との不満があった。

     これに対し、新たな解釈では武力攻撃の有無ではなく、「国民の権利が根底から覆される明白な危険」の有無が判断基準となる。日本が武力攻撃を受けていなくても政府が「明白な危険」を認定すれば、ある国から攻撃を受けた米軍艦船を防護▽米国へ向かう弾道ミサイルを迎撃▽米国と敵対する国へ武器を運ぶ船を強制的に検査−−などを行うことが可能。いずれも「自衛の措置」と位置づけ、憲法上の問題は生じないとの考えだ。

     政府はこれらの事例を含む8事例を与党協議会の議論で集団的自衛権の行使に当たり得る事例として示していた。しかし閣議決定では8事例にも地理的な制約にも言及していない。政府高官は「地理的な制約や事例による限定は認められない。想定外のことが起きても継ぎ目なく対応できるようにしなければいけない」と語っており、「明白な危険」の意味も時の政権により拡大されかねない。【青木純】

    自公に「暗黙の了解」−−集団安保

     「集団安保はいつの日かやらざるを得ない」

     自民党の高村正彦副総裁は1日の与党協議会でこう述べ、閣議決定で明記を見送った「集団安保での武力行使」について引き続き検討を進める考えを示した。

     集団安保は平和を乱した国に対し、国際社会が団結して制裁をする行為。政府は6月27日に閣議決定した答弁書で、国連安全保障理事会が集団安保を開始した後も、国連加盟国は個別的または集団的自衛権を行使できるとしており、政府関係者は「集団安保が始まっても『自衛の措置』に当たれば日本による武力行使は可能だ」と説明する。

     政府が念頭に置いているのは、中東で戦争が起き、シーレーン(海上交通路)に機雷が仕掛けられるケースだ。1990年代の湾岸戦争では、日本は憲法を理由に戦争中は機雷掃海に参加せず、終結後に参加した。外務省内には「国際社会への貢献度を高めるため、戦争中から参加できるようにすべきだ」との声が根強くあり、同省が自民党議員らに強く働きかけていた。

     閣議決定に明記されなかったのは、憲法解釈の大幅変更に慎重な公明党への配慮から議論を棚上げしたためだ。

     高村氏は「公明党が『集団的自衛権で手いっぱいなのに言ってくれるな』ということだった」と振り返った。しかし公明党関係者は「『自衛の措置』の範囲内での集団安保での武力行使容認は、自民、公明両党の暗黙の了解」と指摘している。【宮島寛】

    「平和発展の道」疑義 中国政府、日本の変化批判

     【ソウル大貫智子、北京・石原聖】安倍政権の集団的自衛権の行使容認の閣議決定を受け、中国外務省の洪磊(こうらい)・副報道局長は1日の定例会見で「日本の政権は最近、歴史問題でもめ事を起こし、かつてない措置を取って軍事安全政策に重要な変化をもたらした。戦後堅持してきた平和発展の道を変えるのかと疑わざるを得ない」と批判した。

     洪副報道局長は「中国脅威論を作り出して(日本の)内政の課題を進めることに反対する。日本は中国の主権と国家安全、地域の平和と安定を損なわないよう求める」と指摘。中国の外交安全政策にも影響があるとの認識を示した。

     一方、韓国外務省は1日、「韓(朝鮮)半島の安保や我が国の国益に影響を与える場合、我が国の要請あるいは同意がない限り、決して認めない」との報道官声明を発表した。

     韓国は日本の集団的自衛権行使を支持する米国の同盟国でもあり、閣議決定自体については「防衛安保政策の重大な変更と見て、鋭意注視している」と述べるにとどめた。また、「過去の問題に起因する疑念や憂慮を払拭(ふっしょく)し、周辺国から信頼を得られるよう歴史修正主義を捨てなければならない」と述べた。

    関連法案、今秋にも 十数本を想定

     安倍政権は今回の閣議決定を踏まえ、今秋の臨時国会と来年の通常国会で法整備を進める方針だ。臨時国会では国連平和維持活動(PKO)協力法改正案などの処理で終わらせ、国会審議が紛糾する可能性が高い集団的自衛権の関連法案については、統一地方選後の通常国会に提出する案が有力視されている。

     閣議決定だけでは、実際には自衛隊が活動することはできず、根拠となる個別法の整備が必要となる。(1)平時の米艦防護のための自衛隊法改正案(2)PKO法改正案など国際協力関連法案(3)集団的自衛権の行使を可能とする関連法案−−の3分野で計十数本の法案提出が想定されている。

     12月には日米防衛協力の指針(ガイドライン)の改定が予定されており、これに間に合うように関連法案を一括して国会提出する案もあるが、実際には必ずしもガイドライン改定までにすべての法案がそろっている必要はない。今年11月には普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題が焦点となる沖縄県知事選があり、来春には公明党が重視する統一地方選が控える。今秋以降は消費税率を10%に引き上げるかの最終判断もある。どの法案をどの時期に国会提出するかは政権にとって難しい判断になる。

     安倍晋三首相は1日の記者会見で、関連法の整備について「法整備はスケジュールを含めて与党と緊密に連携していきたい。今の段階で『いつまでに』と申し上げる状況ではない」と述べ、日程を明言することを避けた。【飼手勇介】

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