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芥川・直木賞

ノミネートに「諾否」、単行本化前倒しも…受賞作決定までの舞台裏

担当編集者と打ち合わせをする小林エリカさん(左端)=東京都千代田区の集英社で15日午後6時25分ごろ、高橋昌紀撮影

 第151回芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の受賞作が17日夕、決定する。国内では屈指の知名度と権威がある文学賞。先月中旬に候補作が発表されて以来、ノミネートされた作家や関係者は準備に追われ、忙しい日々を送ってきた。受賞作決定までのそんな舞台裏を紹介する。【高橋昌紀/デジタル報道センター】

 「賞の候補者にノミネートされました。お受けくださいますか」。そんな一本の電話がある日、作家のもとにかかってくる。芥川・直木賞にノミネートされたことが初めて外部に明らかになった瞬間だ。日本文学振興会によると、編集者らで構成する予備選考委員による投票で候補作を選出。正式決定する前に、作家本人に「諾否」を確認しているという。

 故山本周五郎氏は直木賞に選ばれた後、受賞を断った。それでは候補者になる諾否の段階で、断った例は過去にあるのだろうか。振興会は「候補作の発表(今回は6月19日)が全て」とし、「候補作の選考過程に関しては、一切公表していません」と説明する。

 芥川賞の候補作に今回初めてノミネートされた作家、漫画家の小林エリカさん(36)=東京出身=には6月3日午後、諾否を問う電話があった。「喜んで」と即答した小林さんだが、「詐欺かいたずらだったらどうしようと、その後にちょっぴり不安になりましたが」と笑う。

 正式な発表までは2週間以上あった。振興会からは出版社などの関係者を除き、口外しないように求められた。「母はすごく、うれしかったようで。フェイスブックやツイッターでつぶやいてはだめよ、と伝えました」。だが、自身も友人らに「つい、うっかりとしゃべってしまいそう」になった時があったと打ち明ける。

 直木賞と異なり、芥川賞の候補作は文芸誌などで発表された純文学短編作品が対象。小林さんの候補作「マダム・キュリーと朝食を」は、集英社の文芸誌「すばる」4月号の書き下ろしだ。原稿用紙250枚分で、同社は掲載前から単行本化を決めていた。当初の刊行予定は7月26日。これでは芥川賞の選考に間に合わない。そこで、候補作になったと小林さんから連絡があった翌日の6月4日には、可能な限り前倒しすることを決めたという。

 「本来は理不尽なお願いです。でも『芥川賞候補作』の一言で、デザイナーや印刷所など関係者全員が協力してくださいました」。感謝していると集英社文芸編集部の担当編集者、谷口愛さん(31)は話す。谷口さんも、担当作品の芥川賞ノミネートは初めて。「経験したことのないタイトなスケジュールでしたが、おめでたい事情ですから」。結局、刊行は10日余りも早い7月14日になった。

 候補作の正式発表後、小林さんはマスコミの合同取材などで多忙な日々を送ってきた。「うれしいことですし、忙しさは感じません」。締め切りを守るタイプで、原稿を落としたことはないが、「むしろ各連載の担当者さんたちが『忙しかったら言ってね』と気を使ってくれて」とほほ笑む。親しい友人たちからはバラの鉢植えが贈られたりと、いつもと違う日常を楽しんできた。

 小林さんは谷口さんらと東京・神保町の集英社近くにあるカフェで、吉報を待つ。もし受賞が決まれば、単行本の重版に加え、本に巻く「受賞帯」の印刷も始める予定だ。この帯は派手な赤色を配色し、ロシア・東欧文学者の沼野充義・東大教授に献辞ももらった。「この帯を書店で見てみたい」。見本を手に谷口さんは力を込めた。小林さんは「候補作になることで、多くの人が興味を持ってくれたと思います。読んでもらうことが、喜びですから」と話していた。

 選考会は17日、東京・築地の老舗料亭「新喜楽」で開かれる。芥川賞の会場は1階で、選考委員は小川洋子、奥泉光、川上弘美、島田雅彦、高樹のぶ子、堀江敏幸、宮本輝、村上龍、山田詠美の各氏。直木賞は2階で、浅田次郎、伊集院静、北方謙三、桐野夏生、高村薫、林真理子、東野圭吾、宮城谷昌光、宮部みゆきの各氏が選考する。

   ◇             ◇

 芥川・直木賞の候補作品は以下の通り。

 <芥川賞>

戌井昭人(42)「どろにやいと」群像1月号

小林エリカ(36)「マダム・キュリーと朝食を」すばる4月号

柴崎友香(40)「春の庭」文学界6月号

羽田圭介(28)「メタモルフォシス」新潮3月号

横山悠太(32)「吾輩ハ猫ニナル」群像6月号

 <直木賞>

伊吹有喜(45)「ミッドナイト・バス」(文芸春秋)

黒川博行(65)「破門」(KADOKAWA)

千早茜(34)「男ともだち」(文芸春秋)

貫井徳郎(46)「私に似た人」(朝日新聞出版)

柚木麻子(32)「本屋さんのダイアナ」(新潮社)

米澤穂信(36)「満願」(同)

 ※50音順。敬称略。年齢は選考会当日現在

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