青、白、黄色と小さな野の花が咲き乱れる草むらに、その若い男性はあおむけに横たわっていた。万歳するように両手を上げ、目は閉じ、口は半開きに。ほとんど無傷で、どこか遠い場所で眠っているように見えた。
マレーシア航空機墜落現場で、私は機体の残骸だけでなく数々の乗客の遺体を目にした。記述するにはあまりにむごい光景だった。ただ、亡くなったこの男性の姿から「永遠に解けない謎」を受け取ったような気がした。
撃墜による死は一瞬だったのだろうか。それとも、地上へと落ちていく際に意識はあったのだろうか。穏やかに見える表情と、何かをつぶやくような口元。あなたは最後に何を伝えたかっただろう。あなたはどんな人生を送ってきたのだろう。
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1979年生まれ。2001年入社。北海道報道部、東京社会部などを経て、13~17年にモスクワ特派員。ウクライナ危機を現場取材した。20年4月からカイロ特派員として中東・北アフリカ諸国を担当。著書に「ルポ プーチンの戦争」(筑摩選書)がある。
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