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梯 久美子・評『昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか』大塚ひかり・著

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決して牧歌的ではない、老いの現実

◆『昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか』大塚ひかり・著(草思社/税抜き1500円)

 言われてみれば確かにそうだ。「むかしむかしあるところに……」で始まる昔話。続く言葉はほとんどが「お爺(じい)さんとお婆(ばあ)さんがいました」である。

 舌切り雀(すずめ)やこぶ取り爺さん、花咲か爺さん、笠地蔵はずばり老人が主役。かぐや姫でも桃太郎でも一寸法師でもカチカチ山でも、老人は主要な役を振られている。昔はいまよりずっと数の少なかったはずの老人が、昔話においては前面に躍り出るのはどうしてなのか。大塚ひかりさんの『昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか』は、そんな疑問を読者に示すところから始まる。

 これらの昔話に登場する老人は夫婦だけ、あるいは一人暮らしで、必ずといっていいほど働いている。子や孫に囲まれて楽隠居してはいないのだ。そこからかぐや姫や桃太郎など、老夫婦が突然子を授かる物語が生まれるのだが、著者は各種資料から、前近代には子供をもてなかった老人や、独身のまま年を重ねた老人が多かったことを読み解いていく。

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