メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

SUNDAY LIBRARY

高橋 敏夫・評『最後の忍び 忍者小説セレクション』戸部新十郎・著

◆『最後の忍び 忍者小説セレクション』戸部新十郎・著(光文社文庫/税抜き740円)

  全編、「最後」の意識にひたされている。最後の匂いが漂い、最後の色がみえかくれし、最後の旋律が静かに流れる。

 「忍びが忍びらしい仕事をするのも、これがたぶん、最後になるかもしれぬ」(「越(こし)ノ雪」)。加賀藩の豪商銭屋五兵衛の抜荷買いを探る幕府の隠密惣兵衛は、若い矢介にそう言う。「われらが代々、ひそかな修行を重ねてきたのは、いったいなんのためだ。城を探り、敵を斃(たお)す、そうではないのか。が、もはやこの世に探るべき城もなく、斃すべき敵もなさそうだ」。時はすっかり変わり、武闘派の忍びはもはや必要でなくなったのだ。

 時の推移と社会の変容−すなわち歴史は、なさけ容赦なく人を襲い退場をせまる。しかも、ここでは歴史の「陰」でうごめく忍びである。忍びの活動が陰で始まったように、最後もまた人知れぬ陰においてである。そんな最後にのぞみ、忍びの矜持(きようじ)はただ、わめかず、叫ばず、無念をのみこみ静かに消滅することにだけ保たれる。

この記事は有料記事です。

残り472文字(全文929文字)

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. デパート休業、知事選集会の中止…鹿児島のクラスター震源地「おだまLee男爵」はどんなところか

  2. 「百合子山は高かった」 落選の山本氏、完敗認めるも小池氏にチクリ

  3. 蒲島知事「『ダムなし治水』できず悔やまれる」 熊本豪雨・球磨川氾濫

  4. 新型コロナ 伊勢崎の男性が感染 県内で会食、7人濃厚接触 /群馬

  5. 埼玉県、倍増の600床確保へ 感染拡大傾向で病床数判断引き上げ

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです