毎日のクリニック

狭心症に超音波治療開発

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 重症の狭心症患者の胸部に超音波を当てて治療する画期的な治療法が開発され、東北大学病院などで臨床試験が始まっている。この治療法の対象となるのは、通常の手術や薬では効果が得られなかった重症の患者で、全国に約5万〜10万人いるといわれる。同病院などは超音波治療の臨床治験に参加する患者を募集している。

 ●重症患者に威力

 狭心症は、心臓に酸素や栄養を送る冠動脈の血流が不足して、酸素不足に陥り、胸に痛みが生じる病気。喫煙や脂肪の取り過ぎ、加齢などで心臓の動脈が硬くなったり、狭くなったりして、血液の流れが悪くなるのが主な原因だ。

 標準的な治療としては、薬剤のほか、金属の管を入れて血管を広げる治療法や、血管を切ってつなげるバイパス手術などがある。しかし、患者の中には、こうした治療を受けても、痛みがあったり、発作が起きたりする重症の患者がいる。

 そうした重い患者に威力を発揮すると期待されているのが超音波治療だ。

 東北大学病院循環器内科の下川宏明教授は、15年前から、音波を使った治療を研究してきた。音波の一種で低出力の衝撃波を心臓に当てると、血管が新たに生まれ、血流が改善され、痛みや発作など狭心症の症状が改善されることを確かめた。この衝撃波による治療は2010年、先進医療として国の承認を得た。

 ただ、同じ音波でも日本の医療機関では超音波を出す医療機器の方が扱いやすく、普及している。下川教授は、検査で用いるのと同程度の超音波にも血管を新たに生まれさせる作用があることを見つけ、豚を用いた狭心症モデルで超音波治療の実験をしたところ、血管が新生して心臓の血流が改善することを確認した。やけどや不整脈などの副作用は出なかった。

 ●麻酔不要、負担軽く

 超音波は衝撃波に比べ、肺を傷つける恐れもなく、麻酔も不要で、体への負担も軽い。超音波の強さは、人間ドックなどで行われる超音波検査と同程度のため、安全性も高い。1回の治療時間は約60分で1日おきに計3回行う。患者はベッドで横になって寝ているだけでよい。

 ●治験参加者を募集

 東北大学病院では昨年から治験を始め、すでに2例で超音波治療を行い、さらに5例で同意を得ている。下川教授は「低出力衝撃波の治療は、すでに50例以上で好成績を上げ、頻発していた胸痛発作が大幅に軽減している。治る原理は超音波も同じなので、国の承認が得られるよう、さらに症例を増やしていきたい」と参加者を募集している。

 治験に参加した場合の費用は、入院費用や検査費用は健康保険の適用で3割負担だが、超音波治療の費用は無料となる。

 治験は日大板橋病院▽順天堂大学病院▽東京女子医科大▽東京医科大▽国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)▽兵庫医科大学▽福岡大−−でも実施している。問い合わせは東北大学病院循環器内科(022・717・7153)。【小島正美】


 ■治験対象になるための条件(東北大学病院の場合)

(1)20歳以上

(2)十分な薬物治療を受けているのに胸痛や息切れがある人

(3)カテーテルの挿入やバイパス手術による治療が難しいか、またその手術などの効果に比べて、リスクが高いと判断される人

(4)心臓の画像診断で血のめぐりの悪い部分が確認されている人

(5)治験参加に本人が文書で同意する人

(6)治験のために、3カ月間隔で2回にわたり、少なくとも6日間の入院が可能な人

(7)胸の痛みの症状や薬の使用状況を日誌に記入できる人

 ■同治験の対象外となる条件

(1)心不全で心臓の働きが安定していない人

(2)糖尿病性網膜症で眼底出血のある人

(3)いまがんにかかっているか、がんの手術を受けてから5年以内の人

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