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制定過程をたどる

1(その1) 敗戦2カ月、政府で激論

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「軍ない国、考えられぬ」「平和国家、一本やりで」

 敗戦後間もない1945年10月27日午後、東京・永田町にある首相官邸(現在の首相公邸)の日本間を改造した会議室で、憲法問題調査委員会が始動した。委員長は法学者の松本烝治(じょうじ)国務相。大日本帝国憲法(明治憲法)の改正を検討する通称「松本委員会」は、冒頭から軍のあり方を巡って激しい議論の応酬になった。これが、今日まで続く「9条論争」の出発点となる。

     野村淳治顧問(東京帝大名誉教授)「軍備の撤廃に伴い、いかなる改正がなされるべきか。統帥権の規定は不要かどうかという問題もある」

     美濃部達吉顧問(元東京帝大教授)「野村君の意見には反対だ。永久に陸海軍はなくてもいいのか」

     野村「ポツダム宣言を度外視して、独善的改正案を考えることはできない」

     ポツダム宣言の受諾による日本軍の武装解除は、この時点でほぼ完了していた。その状態を将来にわたって継続するのか、それとも連合国軍総司令部(GHQ)による占領の終了後に再軍備できる余地を残すのか。それが松本委の大きな論点だった。

     政府の法制局幹部として松本委に関わった佐藤達夫の記録によると、顧問や委員ら11人が憲法改正私案を提出し、そのうち6人が軍規定の削除を主張した。何らかの規定を残すよう唱えたのは3人だったという。明けて46年2月2日の松本委総会は一層熱を帯びた。

     楢橋渡内閣書記官長(現在の官房長官)「『天皇ハ軍ヲ統帥ス』は削ってもらいたい。残しておくと天皇制もふっ飛んでしまう。平和国家という一本やりでいきたい」

     松本「独立国たる以上、軍がないということは考えられない」

     美濃部も松本に同調したが、宮沢俊義東京帝大教授は「平和国家という大方針を掲げる以外、日本には道がない」と削除論に立った。結論は出ず、同月8日にGHQに提出した憲法改正要綱には、松本の意向に沿って軍規定が残った。

     ただ、松本も明治憲法下と同様な軍備を考えたわけではなかった。GHQへの説明書では、将来想定する軍を「極めて小さい仕掛けで、内地の平和秩序の保持のために必要な範囲」と解説し、明確な規定があれば、むしろ軍国主義者が再び台頭するのを防ぐことにもなると訴えた。

     しかし、このときGHQは並行して憲法改正案の作成を進めていた。マッカーサー連合国軍最高司令官は2月3日、(1)天皇は国の元首(2)自衛権の発動も含む戦争の放棄(3)封建制度の廃止−−という3原則に基づき、草案を作るようGHQ内の民政局に指示した。毎日新聞が同月1日にスクープした松本委の試案の一つが、天皇大権の維持など保守的な内容だったためだ。

     果たして、GHQが2月13日に松本と吉田茂外相に示した草案には戦争放棄条項が盛り込まれた。ホイットニー民政局長はその場で、日本政府の憲法改正要綱は受け入れられないと明言した。しかし、佐藤は57年に始まった内閣憲法調査会で意外な証言をしている。「われわれは戦争放棄の条文についてはあまりショックを感じなかった」

        ◇

     日本国憲法は3日、施行から68年を迎えた。現行憲法はどのようにして誕生したのか。戦後70年の節目に制定過程をたどる。

    憲法第9条

     1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

     2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

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