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制定過程をたどる

4止 改憲機運、世論が封印 保守合同も流れ変わらず

1955年11月15日、中央大学講堂で開かれた自民党結党大会。憲法の自主的改正を目指す同党の歩みはここから始まった

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 「新憲法制定は占領中に行われた。現在、わが国の状態は国家の自由意思を確保している。憲法を全面的に再検討すべき時期に来ている」

     1954年3月12日、当時の首相官邸で開かれた自由党憲法調査会の発会式で、岸信介会長は日本国憲法の全面改正を訴えた。戦後、A級戦犯容疑者として東京・巣鴨拘置所で3年を過ごした岸は、連合国軍総司令部(GHQ)の占領政策に強い疑問を持っていた。

     トルーマン米大統領が47年3月、トルコとギリシャを軍事、経済両面で援助する「トルーマン・ドクトリン」を発表すると、ソ連との対立は決定的になり、東西冷戦が進行した。日本をアジアにおける共産主義の「防波堤」にしようとした米国は対日占領政策を転換。マッカーサー連合国軍最高司令官は50年1月の年頭声明で、憲法9条は自衛権までは否定していないとの見解を表明した。6月には朝鮮戦争が勃発し、警察予備隊(保安隊を経て54年7月に自衛隊)が発足した。

     サンフランシスコ講和条約によって日本が52年4月に独立を果たすと、9条と現実の間に生じた「ずれ」は国内の改憲論を後押しした。

     GHQは憲法制定過程で、大日本帝国憲法(明治憲法)の改正はあくまで日本側の自発的な取り組みだという建前をとっていた。民間有識者による憲法研究会案(45年末に発表)が「公布後遅くも十年以内に国民投票による新憲法の制定をなすべし」という補則を設けていたように、占領下の憲法改正を暫定的と考える向きは当初からあった。

     憲法公布直前の46年10月17日、極東委員会は「憲法施行から1〜2年の間に国会で再検討されねばならない」と政策決定した。米国主導の憲法制定に、ソ連などほかのメンバー国が不満を抱いていたためだ。この方針のもと48年8月、芦田均内閣の鈴木義男法務総裁(現在の法相)は衆参両院議長に研究会設置を申し入れたが、国会は消極的で実現しなかった。

     しかも、芦田の後を受けた吉田茂首相は「憲法改正の意思はまったくない」と明言し、軽武装、経済成長重視路線で長期政権を築いた。吉田に不満を持つ鳩山一郎や岸は自由党を飛び出して日本民主党を結成。吉田内閣退陣後の55年11月、両党の「保守合同」で自由民主党が誕生し、首相の鳩山が初代総裁に就任した。自民党は「党の政綱」に「現行憲法の自主的改正」を掲げ、今に至るまで党是にしている。

     しかし、こうした政治状況は改憲には結び付かなかった。56年参院選では、社会党など革新政党が改憲反対を正面から訴え、参院で改憲の発議を阻止できる「3分の1」以上の議席を占めることになった。57年に首相に就任した岸は60年の日米安保条約改定で政権の体力を使い果たし、改憲には着手できなかった。

     日本は50年代半ばから高度経済成長期に入り、60年代以降、改憲論議は下火に向かう。渡辺治一橋大名誉教授(政治学)は「戦争の惨禍を経験した国民には9条改正を含む改憲への反発が強かった。時の政権も改憲を掲げるのは得策でないと実感していた」と指摘する。

     岸は晩年のインタビューで、岸内閣の後、改憲を封印した池田勇人、佐藤栄作両首相を批判し、こう語っている。「私が戦後、政界に復帰したのは、日本を立て直すうえで憲法改正がいかに必要かを痛感していたためだ。もう一度首相になって改憲の方針を打ち出したいと思っていた」。その思いは、孫の安倍晋三首相に受け継がれている。=おわり

         ◇

     福岡静哉、横田愛、高橋克哉が担当しました。

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